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第8回(2014年)
未来エレベーター
コンテスト

テーマ

地域を活性化する、社会に優しい未来の建築と交通

趣旨

今から約20年後の2035年、日本人の3人に1人は65歳以上の高齢者となり、こうした人口構造の変化が地域社会に様々な影響を及ぼすと考えられています。今回は、皆さんの暮らす地域が今後直面する課題を見据え、その解決と地域の活性化に寄与する、社会にも優しい未来の建築と交通システムに関するアイデアを募集します。提案していただく交通システムでは、未来のエレベーター・エスカレーターをカタチにしたものを1つ以上含めてください。

受賞作品紹介

最優秀賞

Vertical Hydrogen City(ヴァーティカル・ハイドロジェン・シティ)

Vertical Hydrogen City(ヴァーティカル・ハイドロジェン・シティ)

加々美 理沙(東京大学大学院)

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優秀賞

擁壁(ようへき)を紡(つむ)いだまちバリアフリーな擁壁エレベーターによる斜面住宅地の未来

擁壁(ようへき)を紡(つむ)いだまちバリアフリーな擁壁エレベーターによる斜面住宅地の未来

原田 爽一朗(明治大学大学院)

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審査員賞

BuoyanCity(ボイヤンシティ)

BuoyanCity(ボイヤンシティ)

桑原 宏介(東京工業大学大学院)

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SNOW FLOWER(スノー・フラワー)

SNOW FLOWER(スノー・フラワー)
Snow Recovery Machine And Energy Conversion System

小俣 森生(多摩美術大学)
神戸 隆英(東京理科大学)
瀬戸 識(早稲田大学)

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THE MOVING SKIN(ザ・ムーヴィング・スキン)A BETTER LIFESTYLE, IN A BETTER WORLD

THE MOVING SKIN(ザ・ムーヴィング・スキン)
A BETTER LIFESTYLE, IN A BETTER WORLD

丸山 鉄朗(東京工芸大学)
高良 大樹(東京工芸大学)
LIVERT LIM TJUN IKE(東京工芸大学)
星野 良太(東京工芸大学)
東海林 健太(東京工芸大学)
加藤 舞(東京工芸大学)

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応募資格

大学および大学院、高等専門学校、短期大学、専門学校の在学生。
複数人でチームとして参加する場合、チーム全員が応募対象の条件を満たすものとします。また、各種連絡は電子メールを通して行うため、代表者の方(チームで応募される場合には代表者等最低1名以上の参加者)は、東芝エレベータのWebサイトに接続できるネットワーク環境と、連絡可能な電子メールアドレスが必要となります。

審査員の注目ポイント

今村 創平 氏

都市・建築の視点から

今村 創平 氏

建築家、千葉工業大学創造工学部建築学科准教授、アトリエ・イマム主宰

未来の社会の姿を描くというと、何だが発展志向であり、楽観的な技術の礼賛といったイメージを持つかもしれません。そうした提案にも一定の役割があることを、必ずしも否定しません。
一方で、それはダイナミックな変化なのか、それとも穏やかな移行なのか。いずれにせよ、今の社会ではいろいろな仕組みがうまく働いていなくて、これから何らかの形で変わっていく必要があることは、皆さんも感じていることと思います。
エネルギー問題、人口の変化、ICT(情報通信技術)の進歩など、変化という点から論じれば、今は大きな転換点にあることは確かです。社会のあり方の変化に伴い、街が変わり、地域の構成が変わる。それにふさわしい、次の時代の移動装置とはどのようなものでしょうか。大胆に提案してみて、それから議論をする。最初から無難な落としどころを探すのではない、積極的な提案を期待しています。

IMAMURA Souhei●建築家。千葉工業大学創造工学部建築学科准教授。1966年東京生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。AAスクール(ロンドン)、長谷川逸子・建築計画工房(株)を経て2002年(有)アトリエ・イマム一級建築士事務所設立。ブリティッシュ・コロンビア大学大学院兼任教授を経て現職。東京大学大学院、芝浦工業大学大学院などにて非常勤講師を務める。主な建築作品に「オーストラリア・ハウス」「神宮前の住宅」、「大井町の集合住宅」。著書は『現代都市理論講義』(オーム社、2013)、『日本インテリアデザイン史』(共著、オーム社、2013)など。訳書として『20世紀建築の発明』(鹿島出版会、2012)。

辛島 恵美子 氏

安全学の視点から

辛島 恵美子 氏

関西大学社会安全学部教授、NPO法人安全学研究所理事

今回は21年後の設定(2035年)、すなわち、皆さんが現役世代で活躍している最中の設定ですから、ぜひ社会的実現性も併せて考えてほしいと願っています。
創意工夫の翼はしばしば開発者の心理と重なるのですが、社会での実現を意識すれば、その他の配慮も相対的に重要になってこざるを得ません。例えば、その利点の限界を明確に認識すること、それを超えないための使用法の限定や教育訓練、技術の寿命の延長や効果の拡大をも考慮した日常的管理、さらにハプニングに対応するための緊急時対応計画などです。特に、緊急時対応は、当該地域の特性の範囲内で一定程度解決できることも重要です。
言い換えれば、地域社会の力を集める発想と、集めた社会的実力に見合う開発を行う発想が重要になるのです。そして、それを実現しうる責任ある世代であることを意識して、自らの将来の姿と重ねて想像と創造の翼を思い切り広げてほしいと願っています。

KANOSHIMA Emiko●1949年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科基礎法学専攻修士課程修了、東京大学大学院工学系研究科学際工学専攻博士課程満期退学。薬剤師。三菱化成工業株式会社、三井情報開発株式会社総合研究所を経て、NPO法人安全学研究所を設立し、現在、理事。2010年より現職。著書に『薬と食べ物と水』(安全学入門シリーズ(理工図書、2007)など。

田中 浩也 氏

新領域デザインの視点から

田中 浩也 氏

慶応義塾大学環境情報学部准教授

私は、「つくられるもの(プロダクト)」だけではなく、「つくりかた(プロセス)」に関心があります。
昨今の3Dプリンターをはじめとするデジタルファブリケーション(ほかに、レーザーカッター、CNCミリングマシン、デジタル刺繍マシン、3Dスキャナー、ロボットアーム等)の技術は、モノのつくりかたを大きく変えつつあります。ロボット技術、サイボーグ技術、空中浮遊のドローン(無線で遠隔操作される無人飛行体)など、様々な新技術が、「つくりかた」のイノベーションを起こしつつあります。ぜひ、そうした「つくりかた」までを考慮した提案をお待ちしています。

TANAKA Hiroya●1975年生まれ。東京大学工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。
2005年より慶応義塾大学環境情報学部講師、2008年より同准教授、現在に至る。

谷口 守 氏

まちづくりの視点から

谷口 守 氏

筑波大学システム情報系社会工学域教授

まちづくりのなかで「移動」という行為は、往々にして「後づけ」されてきました。建物やまちがまず先に考えられ、それに合わせて移動の道具を取り付けてきたというのがこれまでの実態です。
しかし、人口減少と高齢化が同時進行するこれからは、移動すること自体の意味とその価値を問い直すことが求められています。それは、移動のための装置や手段が、建物やその集合体であるまち空間をどう活かすのか、まちに住まい、集まる人々をより幸せにできるのか、というこれまでとまったく逆の視点(移動から考えるまちづくり)が求められることを意味します。
思わず出歩きたくなる、交流が自然と生まれる仕掛けと仕組みづくりを通じて、物理的・社会的・心理的に今まで当然バリアであると思われていた何かが取り払われることで、まったく新しい世界が広がることでしょう。そのまちづくりの中核を担うべく、社会のあり方をより望ましい方向へと大きく転換させる力を備えた提案が期待されます。

TANIGUCHI Mamoru●1961年生まれ。京都大学大学院工学研究科博士後期課程 単位修得退学。工学博士。京都大学工学部助手、カリフォルニア大学客員研究員、岡山大学環境理工学部教授などを経て、2009年より現職。
IFHP(International Federation for Housing and Planning)評議員、日本都市計画学会 理事、国土交通省 社会資本整備審議会 専門委員、環境省 中央環境審議会 専門委員、つくば市 公共空間活用検討委員会 委員長などを歴任。著書に『入門 都市計画』(森北出版)などがある。

吉次 達夫

メーカーの視点から

吉次 達夫

東芝エレベータ株式会社 取締役執行役員上席常務 統括技師長

今から約20年後の2035年、日本の総人口はピーク時の9割以下に減少し、65歳以上の人口が全体の3分の1を占めると推定されています。さらに、多くの地域では高齢者数も減少し始め、地方の衰退に留まらず、日本全体が縮小する危機を迎えようとしています。
そのような来たるべき現実に対して、都市と建築、エレベーターやエスカレーターをはじめとする交通・移動手段はどうあるべきか。また、各地域が抱える人口減少クライシスの問題は、地域の特性を活かしてどのように解決すればよいか。今回はこうした問題意識を踏まえ、現実に存在する都市や地域をひとつ選んでいただき、その活性化に寄与する未来の建築と交通システムに関するアイデアを募集します。
未来エレベーターコンテストではかつて、「地域」と「活性化」を含む類似テーマでアイデアを募集したことがあります。それから4、5年が経過し、この間に社会情勢が大きく変化しました。現在予測されている2035年の社会情勢や科学・技術の進展も踏まえ、今後の地域活性化につながるユニークなアイデアが多数寄せられることを期待しています。現実に存在する都市/地域の約20年後の姿を皆さんに考えていただくことで、地域のリアルな課題の解決につながることを願ってやみません。

YOSHITSUGU Tatsuo●1955年生まれ。武蔵工業大学(現東京都市大学)工学部卒。東芝エレベータ株式会社技術企画部長、技術部長、神奈川支社長、技術本部長を経て現在にいたる。