MENU

VR教育

VR活用レポート

会議室に据付前のエレベーター昇降路が出現!

VRゴーグルの中に浮かび上がったのは、エレベーターが据付られる前の昇降路。
まだメインレールもかごもなく、コンクリートの箱のようです。

ここは東芝エレベータ府中工場・人材開発センター。ごく普通の会議室にVRゴーグルを装着した社員が4人。全員が入社1年未満の新人です。今、東芝エレベータではVR(バーチャルリアリティ)を駆使した、エレベーター据付の研修が行われています。

臨場感あるプレイ空間はまさに「現場そのまま」

内藤 伸之
東京支社ニューセールス建設部工事技術第一グループ

現場そのままの臨場感です
前職でも建築現場の施工管理に携わってきた内藤 伸之さんは、資材や治具の細部まで再現されたVR空間のリアリティに驚きの声を上げました。
現場の搬入など過去の現場で経験したことのあるシチュエーションがリアルに再現されていたので、緊張感を持ちながら操作をすることができたそう。「ゲームでVRを体験したことはあったのですが、それに比べて本当に工事現場に入ったようで緊張感がとてもありましたね」。

そんな内藤さんが、VR体験を通じて気づいたことがあります。 据付作業に関しては問題を解きながら進むテストモードで行いましたが、正答率は7割程度。

「ゴンドラと躯体の正確な隙間寸法や、細かな手順などが、意外に頭に入っていませんでした。自分でも忘れているところ、勘違いしているところを再確認できたので、この経験はこのあと現場に戻っても活かせるなと思いました」。

普段は施工管理の立場である内藤さん。
作業者の立場に立ってみてVRの中で現場の狭さや暗さがリアルに体験できたので、それを理解していることで作業者の方に的確な指示ができる」と業務で活かせる点が多くあると語っていました。

同じく施工管理に携わる古川 亮雅さんも、寸法の重要性を感じていました。「隙間が50mmか100mmか。間違えてしまうと作業中に落っこちてしまうなど、怪我に繋がります。きちんと身に付けないといけないと実感しました
普段立ち入らない場所、そのシチュエーションに入ることができたのも新鮮でした。

「エレベーターの昇降路の中っていうのは、施工管理者である自分が入ることはなかなかないんですけど、そこに入って作業する体験ができて面白かったです。部品点数の多さ、小さいけれど微妙な違いのある部品を見分ける難しさが理解できました」

古川 亮雅
北関東支社建設部工事技術グループ

体験者のこうした反応に、システムの開発に携わる経営企画部・石山 直輝さんは大きく頷きました。

寸法、手順をしっかりと覚えているかどうか。チェックしながら進める設計にしています
経験のない方はもちろん、ある程度経験を重ねた方も、初心に返って、いつもの自分の作業は正しいか、もう一度考えてみましょうと、うながす作りになっています

VRというリアルな体験だからこそ、初心者も経験者も印象深く知識を再点検し、獲得していける。
石山さんは、効果に手応えを感じています。

石山 直樹
経営企画部 スペシャリスト

「危険」を体感して安全を知る。VRで高める「現場力」

据付の現場で選択肢を誤った時、何が起きるか。アバターを通して体験できるのが、教育VRの大きな特色です。現場では許されないような失敗を“敢えてやってみる”
そうすることで失敗から学びを得ることが出来ます。試しに失敗できるのも、VR空間だからこそ。

そびえ立つビルの谷間に広がる工事区画。エレベーターの資材が運び込まれていきます。巻上機の積み下ろしのため荷台に登ると、高さの実感に驚かされます。その時、アクシデントは起きました。

ああ…落ちました

思わず声を上げたのは、新設エレベーターの搬入作業に取り組む遠藤 瑛太さん
先を急ぐあまりトラックラダー(タラップ)を使わずによじ登ろうとして、転落したのです。

「トラックの荷台には普段登ることはないんですが(VRでは)思ったより高く感じて、これは落ちたら危ないな、と。
普段絶対やっちゃいけないことができるので、危険性がよくわかりました
遠藤さんは「失敗できる」VRならではの特性をポジティブに捉えています。「これが現場じゃなくてよかったです

遠藤 瑛太
東京支社ニューセールス建設部調整技術グループ

藤井 颯磨
東京支社リニューアル建設部調整技術グループ

二人の作業者が協力しあう場面も体験できます。同じく搬入作業に取り組む藤井 颯磨さんは共同作業の重要ポイントを学びました。

合図・復唱ですね。お互いの息が合わないとどちらかが倒れてしまって労災になってしまうので‥
VRでは一回ミスしてしまったんですけど、改めて大切だなと感じました



遠藤さん、藤井さんの実感は、開発した石山さんの設計ビジョンが的確だったことを物語っています。

プレイヤーから見える画面

現場で作業している中で怪我をする可能性というのはどうしてもゼロにならない。
しかし、自分が怪我をして痛みをともなわないと何が危険かわかりません。
バーチャルの世界であれば、実際に怪我を負わずに、”こうしたら危ない”というのが自分の中に刻まれるのかな、と考えました

高井 鉄平
神奈川支社リニューアル建設部工事技術第一グループ

以前VR教育を体験し、リニューアル工事の施工管理に活躍しているのは高井 鉄平さん。
日々の仕事の中で、VR教育の成果はどのように生きているでしょうか。

職人さんは私より年上の方や経験の多い方がほとんどです。知ったかぶりするような発言をしても受け入れてもらえません。
VRで体験した作業者の感覚を思い出して、的確で説得力のある指摘ができるようになったと思います


具体的に役立っているのが、大きく重い資材の扱いや、高所作業時の安全確保。

これは重いな、というものを扱う時は3人4人と作業者を配置することを心がけています。長尺物のサイズ感もVRでつかむことができたので、建物や利用者さまに接触のないよう、配慮できるようになりました

VR/メタバースで広がる、エレベーター教育の「これから」

2017年の開発開始以来、洗練と充実を重ねてきた、エレベーター据付教育VR。
これから、どんな進化を遂げていくのでしょうか。

石山さんは進化のビジョンをすでに描いていました。
バーチャル世界に複数人が同時に入ることができるようにしたいですね
現在は体験者一人だけがVR空間にいて、教育者は状況を聞き取りながら指導しているのが実情です。

メタバーステクノロジーを取り入れれば、両者が同じ空間を体感しながらコミュニケーションできます。
合図、受け渡しなどの共同作業も、それぞれがリアクションしながら体験できるはずです

拡張できるのは人数だけではありません。

たとえば一人はリアルでは東京にいて、もう一人は関西にいながら、メタバースで集合して、ノウハウを伝え合う、ということが可能になるでしょう

VRへの期待は、学ぶ側にも広がっています。

過去の事故、危険事例を再現して、VRで体験し、検証することができれば、心構え、対策の強化に役立つのではないでしょうか」そう話してくれたのは高井さん。

藤井さんは、より技術にフォーカスしたアイディアを持っていました。
基盤の中を電気が走っているのが見えるようになれば 、自分的にはすごいなあって思います」。

遠藤さんの要望はストレートです。
据付だけでなく、私が携わる調整工程のバージョンも作ってほしいです。ピット下の作業や検査準備などを、あらかじめVRで疑似体験した上で現場に入っていければ、万全を期することができます」。

こうした声も取り入れて、VRテクノロジーは据付教育にとどまらず、エレベーターの事業領域全体へ、さらに教育だけでなく作業検証や販売ツールとしても、さらに進化し活用されていくだろう。

インタビュー動画を見る

VR開発ヒストリー

エレベーター据付 VR開発ヒストリー

インタビューを詳しく見る

VR体験ストーリー

エレベーター据付 VR体験ストーリー

インタビューを詳しく見る

VR活用ストーリー

エレベーター据付 VR活用ストーリー

インタビューを詳しく見る