第4回(2010年)
未来エレベーター
コンテスト
テーマ
- テーマ
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「空港と未来交通地域を観光で活性化する未来の交通」
- キーワード
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「エンターテインメント」
「アメニティー」
応募資格
大学および大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校の在学生。
複数人でチームとして参加する場合、チーム全員が応募対象の条件を満たすものとします。また、各種連絡は電子メールを通して行われます。このため、代表者の方(チームで応募される場合には代表者等最低1名以上の参加者)は、東芝エレベータのWebサイトに接続できるネットワーク環境と、連絡可能な電子メールアドレスが必要となります。
審査員の注目ポイント

都市・建築の視点から
今村 創平 氏
建築家、千葉工業大学創造工学部建築学科准教授、アトリエ・イマム主宰
これまでに作られてきた自動車やエレベーターは、世界中どこでも同じような ものであったが、その街にしかない移動装置を考えることはできるだろうか。
それは「ご当地エレベーター」のようなものかもしれないが、その街に行かないと乗ることができないものであって、また自分たちのエレベーターをそこに住む人たちが好きであり誇りに思えたら素晴らしいと思う。
そもそも東京にあるエレベーターとモロッコにあるエレベーターとでは、異なって当たり前の気がする。その街をよく見つめることで、そこにしかないエレベーターのあり方が見えてくるのではないだろうか。
そして、そうした移動空間が、家族や仲間たちと楽しい時間を過ごす場となる様子を、描いて欲しい。
IMAMURA Souhei●1966年東京生まれ。1989年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1990年から1992年までAAスクール(ロンドン)、1993年から2001年まで長谷川逸子・建築計画工房(株)勤務。2002年(有)アトリエ・イマム一級建築士事務所設立。ブリティッシュ・コロンビア大学大学院兼任教授、芝浦工業大学大学院、工学院大学、東京理科大学、桑沢デザイン研究所で非常勤講師を務める。主な建築作品に「富士ふたば幼稚園」「神宮前の住宅」、「大井町の集合住宅」。著書は『Archi lab 2006 Japan』(共著)、『現代住居コンセプション』(共著)、『ヴィヴィッド・テクノロジー』(共著)など。
Webサイト[ATELIER IMAMU]: http://www.atelierimamu.com/

安全学の視点から
辛島 恵美子 氏
関西大学社会安全学部教授、NPO法人安全学研究所理事
「危険な場所には蓋」式の“迂回・回避対策”こそ、社会の進歩と考える傾向 があり、それと対になる“危険を冷徹に見つめて危機に賢く対応する実力養成対策”などあてにならず、フォローアップも厄介とばかりにこれまでは軽視さ れてきました。
しかし個人の危機対応能力の衰えばかりか社会の安全を図る力も大幅に低下しつつある昨今、両者のバランスに関心がでてきています。
もし、暮らしの中で適当な緊張感を維持することを、楽しみにできるような手法開発があれば、“災害は忘れたころにやってくる”対策になりうるのではないでしょうか。悪条件にみえることも、生活スタイルの中に組み込み、それを楽しみに変える知恵と仕掛けによっては、そんな地域社会に遊びに行きたいと願う人々がでてくる“地域観光の目玉”にできるのではないでしょうか。
個人と社会の安全力養成を兼ねながら地域の活性化、観光の目玉に転換するような一石二鳥の工夫を期待しています。
KANOSHIMA Emiko●1949年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科基礎法学専攻修士課程修了、東京大学大学院工学系研究科学際工学専攻博士課程満期退学。薬剤師。三菱化成工業株式会社、三井情報開発株式会社総合研究所を経て、NPO法人安全学研究所を設立し、現在、理事。2010年より現職。著書に『薬と食べ物と水』(安全学入門シリーズ(理工図書、2007)など。

新領域デザインの視点から
田中 浩也 氏
慶応義塾大学環境情報学部准教授
従来、建築分野固有の思考法であった「既存コンテクストの読解」(既存のものを理解したうえで、新しいものをそこに接ぎ木しようとすること)。
その手法を、他のデザイン分野(インタラクションデザインやインダストリアルデザイン)、エンジニアリングサイドも吸収・発展させる必要があるのではないかと思います。(同時に、建築分野に軸足を置く人々は、「コンテクストの読解」という思考法を核として、他のデザイン領域にも活動を広げることを考えてみて欲しいと思います)。
これからは、普遍的な解答を求めるのではなく、「地域」ならではの固有の問題に即した「地域」ならではの固有のソリューションが必要とされてくる時代です。交通やエレベーターはまさにその例題として最適です。「各地域の文化、歴史、技術、生活等」を統合した、「一品生産」としてのユニークな交通(=デザインソリューション)のアイデアを期待しています。
私が評価したいのは「オリジナリティ」と「創意工夫」です。
TANAKA Hiroya●1975年生まれ。東京大学工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。
2005年より慶応義塾大学環境情報学部講師、2008年より同准教授、現在に至る。
研究室Webサイト[HIROYA TANAKA LABORATORY]:http://fab.sfc.keio.ac.jp/
FabLab Japan Founder:http://www.fablabjapan.org/

地域振興の視点から
藻谷 浩介 氏
株式会社日本政策投資銀行 地域振興グループ 地域支援班 参事役
とぼしい平地に人がひしめきあい、世界トップクラスの可住地人口密度を持つ日本。
人々は、段差に満ち満ちた生活空間の中で生きています。しかしこれまでは、人口構造が若者や中年中心だったこともあり、段差の解消は常に後手後手に回ってきました。 とはいえ戦争前後に生まれた年齢人口が多い世代の加齢により、高齢者の絶対数は年々急増しています。
団塊世代が75歳を超える2020年には6人に1人が75歳以上になります。
垂直方向に伸びてきた大都市のやり方も、郊外や地方で車利用を前提に増えてきた、水平方向に際限なく拡散した段差のない都市構造も、いずれも今のままでは維持できそうにありません。
そのような近未来に人々のモビリティを今以上に確保できるような、新たな都市システムはあるのか。その中でエレベーターやエスカレーターはどのような形態でどのような機能を果たしているのか。
現状の単なる延長ではない、想像力と創造性がほとばしる作品をお待ちしています。
MOTANI Kosuke●株式会社日本政策投資銀行 地域振興グループ 地域支援班 参事役。1964年山口県生まれ。東京大学法学部卒業後、日本開発銀行、米国コロンビア大学ビジネススクール、日本経済研究所出向などを経て、2010年より現職。2000年頃より地域振興の各分野で研究などを行う。著作に『デフレの正体 ──経済は「人口の波」で動く』(角川書店、2010)、『実測!ニッポンの地域力』(日本経済新聞出版社、2007)などがある。

メーカーの視点から
原田 豊
東芝エレベータ株式会社 取締役上席常務 統括技師長
2008年に、「観光立国の実現」を掲げて観光庁が発足しました。観光庁が目指すのは、「観光立国の実現」を通して日本の経済社会の活性化、特に活力に満ちた地域社会の実現の促進です。観光は、旅行業、宿泊業、輸送業、飲食業、土産品業など、極めて裾野の広い産業です、その経済効果も大きく、日本の21世紀のリーディング産業になると期待されています。
前回のコンテストでは、地域コミュニティーの資源や特徴を生かし、持続的に発展させるアイデアを募集しましたが、今回はさらに踏み込んで地域の観光を支援する新しいエレベーターやエスカレーターの利用や、まったく新しい交通のアイデアを募集します。現在。上海万博が開催されて国内外の多くの人たちが上海を訪れていますが、応募者の地域のリソースを再発見し、上海万博に負けない観光と交通アイデアが集まることを期待しています。
HARADA Yutaka●1951年生まれ。九州工業大学工学部卒。株式会社東芝府中工場昇降機部長、東芝電梯(上海)有限公司責任者を経て、現在にいたる。