社会貢献活動のカギは、実体験で培った想像力です

東洋大学では、能登半島地震後の支援のため、震災後から現在もボランティア活動を続けている。

写真提供:東洋大学

──東洋大学では、さまざまな社会貢献への機会の創出をされていますね。

はい。当校の建学の精神の一つに、「諸学の基礎は哲学にあり」というものがあり、教育理念として学生一人ひとりに自分の哲学を持つことを掲げています。それには物事の本質に迫り、深く考える必要があり、主体的に社会の課題に取り組み、他者のために自己を磨き、活動の中での奮闘もそこにつながると考えています。そのために、社会貢献センターがハブとなって、学生に災害などのボランティア活動などの機会を提供し、学生は積極的に参画しています。その他にも、名誉教授や現職教員が社会貢献に関する自身のテーマを持って、全国で講演活動(講師派遣事業)を行っています。学生の活動への参加を促すために、さまざまな助成の仕組みも作っています。企業や組織はさまざまなかたちで社会貢献活動を行っていると思いますが、この分野への予算配分を見ると、社会貢献に対する本校の本気度が分かると思います(笑)

──具体的にはどのような活動をされているのでしょうか。

一番初めに関わったのは新潟県中越地震後の山古志村(現・長岡市)で、20年以上経った今も慰霊祭の準備などに関わらせていただいています。東日本大震災、熊本地震もですが、最近力を入れているのが2024年1月1日の能登半島地震後の支援です。東洋大学と能登地方は駅伝の陸上競技部や相撲部の合宿などつながりは古く、募金活動や学生や教職員の現地派遣などいち早く動きました。同年に起きた豪雨災害時も瓦礫の撤去や家屋の片付けを行い、現在は仮設住宅の方々の孤立を解消するための交流会や学童保育的なボランティア活動を継続しています。2025年度は、延べ日数301日、学生268名、教職員86名が支援活動に参画しました。

自分ごととして活動に参画する 発信者となることが大事です。

さまざまな学部学科の学生が一つの問題に向き合い、議論や協議、またコラボレーションすることで、イノベーションが生まれてきました。自費で活動を続ける学生もいて、現地でボランティア活動やイベント開催などを行う東洋大学能登復興支援団体「青いビブス」や、支援アプリの開発を行う学生ボランティア団体「こもれび」なども生まれています。また、SDGs活動も盛んで、2021年から推進委員会を設け、現在は4つあるキャンパスで計141名のSDGsアンバサダーが各キャンパスで発信活動を行っています。私たちはこういった活動にあえて「参加」ではなく「参画」と言っています。それは、自分ごととして主体的に活動に参画することで、自らが発信者となることが大事だからです。

赤羽台キャンパスにある社会貢献センターでは、SDGsアンバサダーメンバーが定期的に集まって推進活動の打ち合わせなどを行っています。

──社会貢献活動への参画を促すために、髙山教授が思う大事なことは何でしょうか。

私は20代の頃、インドの視察で出会ったマザーテレサから、「人生で最も不幸なことは、誰からも必要とされないこと」と教わりました。彼女たちは、当時、厳格な階級社会の中で最も貧しいとされる路上生活者の支援を行っていました。そして、社会から必要とされないように扱われている人は先進国にも多くいるのだということを伝えられました。
社会貢献活動はどういうかたちであっても、自身でどうすることもできない状況にある人たちに「必要とされる」行いです。企業でも同じで、人々や社会に必要とされる製品やサービスを提供することで、企業価値は上がるはずです。その、「必要とされる」ものを考えるときに大事になるのが、実は想像力なんですね。例えば、豪雨災害の映像を観て大変だなと思ったとしても、実際現地でボランティア活動をして感じるものとは全く違うはずです。泥を取り除く時の泥の重さや臭い、また私が何度も学生時代に行ったインドやフィリピンのベースキャンプでは、熱風の中で油混じりの香辛料の匂いがするわけですね。ああ、ここの人たちはこういう世界で生きているのかと実感するわけです。そういう実体験があると想像力が養われます。ですからリアルに想像することが、もしかすると社会貢献の中で非常に重要なポイントなのではないかと、そんなふうに思います。
石川県では能登の復興を、「創造的復興」と位置づけました。東洋大学では敢えて、「そうぞう的復興」とひらがなにしています。それは復興支援を通して、能登の人たちや能登という土地の声を、声なき声を想像して聴き、その声の実現を創造していくという2つのそうぞう(想像・創造)が大切だと考えるからです。

ボランティア支援室が学生の活動をサポートしています。

髙山教授がセンター長を務める社会貢献センターには、ボランティア活動に参画したい学生のために、ボランティア支援室が設けられ、コーディネーターの日比野さん(右)らがそのサポートを行っています。

大学でのボランティア活動を機に生まれたボランティア集団があります。

社会貢献センターで支援アプリの打ち合わせ中にお邪魔して話を伺いました。左手前が代表の布施さん。

求められることに、強みを生かした支援がしたい!

はじめは大学の支援を受けて能登地方の災害ボランティア活動を行っていましたが、2024年に「自分たちの強みで、相手が本当に求める支援をしたい」という思いから、大学の仲間4名で「こもれび」という組織を設立しました。児童養護施設での支援活動のほか、特に注力しているのは、能登半島の観光復興を目的としたアプリの開発です。復興支援アプリ「めぐり」は、観光地や飲食店の情報をはじめ、能登を安全に楽しんでもらうために避難場所などがすぐわかるマップなどを掲載しています。さらに、「一人一花 交換手帖 in 能登半島」というアプリでは、被災後、空き地になってしまった場所に花を植えていく「一人一花」運動の応援も込め、その場所の紹介を行っています。今は、各自で費用を負担しつつも、ご好意で活動をサポートしてくださる方々や地域の方々、また企業の方とコラボしながら、活動を続けています。大学卒業後も活動を継続しようとさまざまな方向性を探りながら、活動を続けているところです。

取材に訪れた石川県珠洲市。地元の人々の憩いの場、銭湯“あみだ湯”(左)や、塩田村(右)などに足を運び、現地の人々とのふれあいも活動の醍醐味だ。

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