写真提供:東洋大学
編集:有限会社バース
ボランティア活動や寄付をはじめとする社会貢献活動は、私たちが地域や社会を支える身近な方法の一つです。自然災害の多い日本では、誰もが思いがけずさまざまな支援を必要とする状況に置かれることもあります。社会貢献活動に取り組んだことがある方、いつか挑戦してみたい方、始め方が分からない方、必要性を感じないという方もいるかもしれません。そこで今回は、「そもそも社会貢献って何?」というところから社会貢献の意義に迫ります。お話を伺ったのは東洋大学で社会貢献センター長を務める髙山直樹教授。東洋大学の学生による社会貢献活動もご紹介します。
東洋大学福祉社会デザイン学部教授
東洋大学大学院社会福祉学研究科長
社会貢献センター長・ボランティア支援室長
髙山直樹さん
Naoki Takayama
profile●神奈川県出身。明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了。大学時代から社会貢献・社会福祉の分野に関心を持ち、さまざまな国でのボランティア活動などに参加。2002年、東洋大学社会学部教授に着任し2023年より現職。社会福祉学を専門とし、2022年より東洋大学社会貢献センター長も務める。神奈川県意思決定支援専門アドバイザー。
──社会貢献の意義や定義などについて教えていただけますか。
社会貢献は、個人や組織・団体が持てる知識、人材、資源などを活用して社会の問題や課題の解決、あるいは地域の発展に寄与するものと言われます。それによって人々や社会と信頼関係を築き、組織であれば人材育成などにもつながると考えられます。すべての人が安心して暮らせる社会をつくるという社会福祉の視点で言うと、まずは、その「人」とは何かということです。「人間」という存在は「人の間」と書くように、人と人との間で自己形成され、他者との関係の中で成長していくと捉えられます。そして、家族や地域、職場、学校などで多様な人間関係が重なり合うところに社会が形成されます。その関係のなかで、人間としての存在意義を見出し、さらに成長できる可能性もあります。 しかし現実の社会には、戦争やエネルギー問題、温暖化現象、いじめや虐待、孤立死、ヤングケアラー、こどもの貧困、闇バイト、災害の激甚化など多くの深刻な問題が起きています。これらが社会のひずみによって起きているという構造的な問題に気づくことが大切で、その気づきが社会貢献への第一歩ではないかと思います。
──社会貢献は時間、資金、ボランティア精神のある方々が中心に活動されているのでしょうか?
そうですね。確かに寄付やボランティアはしたくてもできない人もいますし、たとえ余裕があっても関心や興味がない人もいます。興味がない人に無理やり何かをすすめるのは難しいと思います。「いじめ」の問題を例に考えてみましょう。いじめの構造として、直接的・間接的に関与した人だけでなく、見て見ぬふりをしている傍観者はどう捉えればいいのでしょうか。社会のひずみや問題に気づいていても、傍観している人や諦めている人は多いと思います。近年、子どもの貧困やヤングケアラー、8050・9060、闇バイトなどといった10年ほど前にはあまり聞かれなかったような問題が取り沙汰されています。また、平均気温の上昇や豪雨などの異常気象をもたらす地球温暖化や、各地で起きる野生動物との軋轢などの問題もあります。社会のひずみや自然環境、人間社会の変化とも無関係ではない諸問題についても、自分ごとではなく、他人ごとだったりします。したがって社会貢献活動は、問題に気づいていても傍観している、諦観している自分に気づくことから始まるのではないかと思います。
──どうすれば傍観せずに、社会貢献への関心を高められるようになるのでしょうか?
世の中はつい多数派の理論で回りがちです。エレベーターを例に挙げると、世の中がエレベーターを必要としない人たちばかりだったなら、今のように各駅での設置義務や、車いすでの利用を想定した機能もなかったかもしれません。エレベーターでのフロア移動が必要な、比率の面では少数派の人の目線を大事にしたことで、結果として、暮らしやすい社会やインフラの普及につながり、多様な人たちが社会にいるからこそ、多くの人が恩恵を受けていることを忘れてはいけません。バリアフリーの「バリア(障壁)」には、物理的、制度的、文化・情報のバリアがありますが、最も厚いバリアは、偏見や差別といった意識的な障壁だと言われます。これを少しでもなくすためのカギとなるのが私は「アライ(ALLY)」である人ではないかと感じています。これはアライアンス(Alliance)が語源でLGBTQ+などの性的マイノリティへの理解や支持をする人(同志・賛同者)として使われています。したがって、社会貢献活動に参画している人たちが、自らの体験や気づきをシェアし、発信し、アライを増やしていくことが大事だと思います。
──理解者・支持者はどうすれば増えるのでしょうか?
若いうちにボランティア活動などの社会貢献活動の経験をすることはとても大事だと思います。企業や社会は大学に対して、習得した知識を生かし、他者と協働して課題を解決できる人材を求めていると思います。社会貢献活動に参画することの体験や気づきは、企業や社会において活かされると確信しています。だからこそ、大学で初めてボランティア体験をするのではなく、子ども時代から家庭や地域、学校などでさまざまな社会貢献活動に参画し、アライとなり、アライを増やしていく役割を果たしていくことが求められていると思います。そして、少しでも社会貢献活動に関心がある人たちを集めるといいですよね。ベクトルの合う人たちが集まることで、さまざまな意見や考えが生まれ、一人ではできないこともやりやすくなります。大学でもさまざまなかたちで学生に社会貢献活動の機会を用意していますが、人生100年とも言われます。年齢に関係なく意欲ある人たちに、もっと社会に目を向け、社会貢献活動に参画してもらおうと、各大学でも社会人の学び直しなどのリカレント教育に力を入れています。興味や関心を持つ人が増え、参画していく人を増やし、主体的な参画につなげていくボトムアップの取り組みも必要だと思います。

