小久保教授が天文学者として追い求める天体の魅力に迫ります。

山登りやスクーバダイビングのついでに星空をよく見ます。

星がよく見える場所がクマの生息域だったりする場合もあります。星を楽しむためにおすすめの場所はありますか?

そうですね。都会では一番明るい「1等星」かその次の「2等星」くらいまでしか見えませんし、少し郊外の住宅地でも「4等星」くらいまででしょうからね。僕も昔、山でクマを見かけたことがありますが、最近の話を聞くと少し怖いですね。僕のおすすめは、島です。スクーバダイビングが趣味で国内外いろんな島に行きますが、島であればクマもいませんし、ネオンなどの街明かりの影響もほぼありません。クマがいないというので言えば、九州もそうかもしれませんね。あとは、安全なところで望遠鏡を使って見るのもいいですね。

小久保先生がスクーバダイビングで潜った島の砂。それぞれ粒の大きさや色や形も違う。

ここ国立天文台三鷹キャンパスでも毎月観望会を開催していて、天体望遠鏡を通して季節毎に移りゆく天体を楽しめます。また、「4D2Uドームシアター」と言って、直径10mのドーム型スクリーンに、宇宙の次元「4次元」をデジタルデータを使ってコンピュータグラフィックスで表現した映像公開も行っています。莫大なスケールの宇宙の構造が映し出され、スーパーコンピュータで行ったシミュレーションの3D動画で最新の宇宙像を「目の当たり」にできると大変人気です。毎回さまざまなテーマで公開しており、詳しくは紹介サイトから確認できます。

4D2Uドームシアターでは、まるで宇宙空間に突入してしまったかのような体験も。4D2Uとは、4-Dimensional Digital Universeの略(4DDUをDが2個のためD2と表記)。また、“4-D to you”「4次元をあなたに」という意味も込められている。 [提供:国立天文台]

2025年は皆既月食やオーロラといった天体の話題が多かったと思いますが、2026年では何がありますか?

今年はあまり天文イベントがないようですが、3月3日の皆既月食は日本全国で、しかも見やすい夜の時間帯に起きるので、天候によっては部分食の始まりから終わるところまで全部見られるかもしれません。他には、毎年のことですが、8月のペルセウス座流星群、12月のふたご座流星群などが楽しみですね。詳しくは国立天文台のサイトでも確認することができます。
また、星ではありませんが、国際宇宙ステーション(ISS)は比較的よく見ることができます。かなり明るくて動いていますので、見つけやすいはずです。一見、「飛行機かな?」と思ったりしますが、飛行機の平均巡航高度が10kmなのに対し、ISSは高度400kmを時速約28,000kmで動き、約1時間半で地球を1周します。高度100km以上が宇宙とされていますので、まさに宇宙を駆け巡っているわけです。1月まで、日本人宇宙飛行士の油井亀美也さんがクルーとして活動中でしたし、あそこに人がいるんだなと思って見てみると興味深いかなと思います。インターネットで検索すると、いつ頃どのあたりの空を通過するかなど情報が出ています。これも星空を楽しむ一つの方法かもしれません。

国立天文台はどういった機関なのでしょうか。また、先生はどのような研究をされているのですか。

国立天文台は天文学についての研究を行う研究機関です。もともとは東京大学の附置研究所である東京天文台でした。1988年に独立して今は東京大学ではありませんが、現在も東京大学とは繋がりは強く、僕は国立天文台だけでなく東京大学大学院理学系研究科天文学専攻の教授も兼任しています。国立天文台では天文学専用のスーパーコンピュータを運用する部門「天文シミュレーションプロジェクト」の責任者をしています。
僕は惑星の分野が専門で、地球や太陽系がどうやってできたのか、その成り立ちを研究しています。ダスト(塵)が集まって惑星へと成長していく過程を理論やスーパーコンピュータを使ったシミュレーションによって調べています。今、僕が一番興味があるのが、地球のように海があったり生き物がいる可能性のある惑星がどのように作られ、銀河系にはどのくらいあるのかということです。実は、質量や中心星からの距離が地球と似た惑星はすでに数10個ほど見つかってはいるのですが、海の存在はまだ観測できていません。望遠鏡の性能がさらに向上し、惑星の大気や表面を詳しく見ることができれば、もっと多くのことが解明されるだろうと期待しているところです。

知らない世界を見てみたい。子供の頃の好奇心の延長に今があるのかもしれません。

先生は幼少期に探検家になりたいと思っていらしたとか。探索や解明するという意味では似ていますね。

そうかもしれません。僕が探検家になりたかったのは、知らない世界を知ってみたい、まだ見たことのないものを見つけたい、分からない謎を探って分かるようになりたい、という好奇心からです。そういう思いは子供の頃から変わりませんね。僕はずっと古代遺跡が好きで今でも巡っていますし、それから好きなサカナを探しに海に潜ったりもしています。言ってみれば探検や冒険のようなことが好きなので、その延長上に今の仕事があるのかもしれません。

研究室の卓上に1体だけ置かれていた土偶「縄文のビーナス」のレプリカ。「これに惹かれてしまったんです」と小久保先生。

先生は星空を見て、どんなことを考えたり、楽しまれたりしていますか?

特に何も考えず、ただ宇宙は果てしなく大きく、凄くて、不思議で、綺麗だなあと思って見ていますね。山登りやダイビングが好きでよく山や海に行くので、その時に星空を楽しんでいるといった感じです。富士山にもよく行きますが、夜登るので星がよく見えて、星との距離が近いなあと感じます。山でも海でも、綺麗な空があったら写真を撮ったりもしています。カメラは昔から「RICOH GR」シリーズが好きで、星のある景色を広角で撮っています。オーストラリアやニュージーランドに行けば、南十字星やマゼラン星雲を撮ったり。それから、北半球から見るととても低く見るのが難しいカノープスという、見えたら長生きできるという伝説の恒星も富士山から撮りましたね。すばる望遠鏡のあるハワイのマウナケアでは、アンドロメダ銀河も撮影しました。月明かりで海に道ができたように見えるムーンリバー(ムーンロード)は、星が明るい時もできるんですよね。オーストラリアに潜りに行った時、それが撮りたくて浜辺で挑戦して苦労して撮ったのもいい思い出です。

小久保先生がアルゼンチンで撮影した天の川の中心部。

なかなか上手く撮れなかったり、どれがどの星なのかわからなかったりしますが、撮影のコツはありますか。

今はカメラ機能の性能が良いスマートフォンであれば、けっこう簡単に星の写真が撮れますよ。また、三脚などの機材や少しは練習も必要ですが、デジタルカメラなら、長時間露出させたり、インターバル撮影をして合成することで、例えばこの写真のように星の軌道が弧を描いているように撮ることもできます。

桜の季節に撮影された北天の星の軌跡。 [提供:国立天文台]

この写真でいうと、弧の中心が地軸の北天ということになりますから、中心には北極星があるわけです。また、北極星を探したい時は、方位磁石を使って北の方角に輝く星がそれです。近くには、季節によって北斗七星やカシオペア座なども見えるはずです。また、冬の大三角形、夏の大三角形など、季節によって明るい星を見つけて、それを中心に星座を観察するといいでしょう。

天文学者という肩書きに敷居の高さを感じていましたが、先生のお話を聞いて科学を少し身近に感じ、星にも興味が湧いてきました。

それはよかったです。宇宙関連の本や映画に出てくる研究者や科学者にもいろんなキャラクターが描かれていますが、日本ではどうも、コミュニケーションが取りづらいマッドサイエンティスト的で堅物なイメージがいまだ強いようです。しかし、僕たちの仕事には、いろんな人たちと協力して活動するコミュニケーション力がとっても大事なんです。チームを組んだり、情報交換をしたりする上でも重要なのはコミュニケーション能力だと思います。自分の持っている情報をシェアすることで、一緒にやりたいという協力者も出てきたりしますしね。それから自分の知りたいことを諦めずに執念を持って追いかけられる体力も大切だと思います。天文学者にもいろいろ面白い人がいますので、ぜひ話を聞いてみてください。もし、今回の話を聞いて、少しでも宇宙に興味を持ってもらえたら、ぜひ星の綺麗な空があるところに出かけて、生の星の光を楽しんでもらえたらと思います。空は宇宙に繋がっていることが実感できると思います。

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