星空を楽しもう

編集:有限会社バース

夜空の星のことに少し興味がわいてきたら、宇宙の謎にも迫ってみたくなりませんか。そこで後編では、引き続き国立天文台の小久保英一郎教授に、天体の成り立ちや宇宙の様子などについてお話を伺いました。宇宙空間を想像しながらの星空は、また違って見えるかもしれません。

地球に似た惑星には、生命体がいる可能性があると推測しています
今回もお話を伺ったのは

小久保 英一郎さん 
Eiichiro Kokubo

国立天文台科学研究部教授。天文学者。

●協力
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
国立天文台 三鷹キャンパス(本部)
〒181-0015東京都三鷹市大沢2-21-1
https://www.nao.ac.jp

水や海がある星ならば、生命体がいるのではないかと考えています。

天体について、先生が今一番解明したいと思っていることはどのようなことでしょうか。

月や土星の環などさまざまな研究を行っていますが、僕はやはり地球のように海があったり、生命体がいる可能性がある惑星に一番興味があるんですね。そのためにも、地球や太陽系の惑星が一体どうやってできたのか、地球と関係の深い月や、太陽系以外の惑星の成り立ちなどの研究をしています。地球の生命体はライフサイクルのどこかで液体の水を使っています。水がないと我々のような生命体は誕生しないし、生きていくこともできませんから、水や海がある星であれば、生命体が存在する可能性があると推測されるわけです。地球以外の太陽系の惑星や衛星の表面には氷はあっても液体の水はありません。我々は今、理論ではどうやって海がある惑星が生まれるのかを研究し、観測では地球に似た惑星に海があるか、もしかしたら生命体がいないかなどをどうやって調べればよいか研究しています。

国立天文台ハワイ観測所のすばる望遠鏡にて撮影された暗黒の宇宙に宝石のように輝く「うしかい座矮小銀河」。地球から約197,000光年の距離にある。 [提供:国立天文台]

そういう研究にもスーパーコンピュータが使われているんですね。

そうです。観測データや宇宙の物理法則などを使って、恒星や惑星がどのように生まれるのかをスーパーコンピュータを用いてシミュレーションします。恒星の周りにある円盤の中のダスト(固体微粒子)からどうやって惑星ができるのかを仮説を立ててさまざまな実験を行い、その中で地球の成り立ちも解明しようと研究しています。惑星ができるとき、微惑星と呼ばれる小さな天体がぶつかって大きくなっていくのですが、本物で実験できないところをスーパーコンピュータを使って模擬宇宙を作って再現し、「惑星を作る実験」を繰り返します。月のように人類が着陸して石を持ち帰るなど多くの情報があっても、まだまだ解明されていないことが多くあります。現在の月の起源の有力なシナリオは、火星くらいの天体が地球に衝突し、その破片が集まって月ができるというものですが、これもシミュレーションによる検証が進められています。太陽系のある銀河系には数千億個もの星がありますが、まだ太陽系以外では月のように惑星の周りを回る衛星は1つも見つかっていません。月の謎が解明されれば、地球、そして地球に似た他の惑星の成り立ちも分かってくるのではないかと期待しています。

小久保教授が運用責任者を務める天文学専用のスーパーコンピュータ「アテルイ」。アテルイ(阿弖流為)は、奈良時代から平安時代はじめの蝦夷の英雄の名に由来し、宇宙の謎に挑んでほしいという願いが込められている。 [提供:国立天文台]

月がいつも地球に対して同じ向きなのは、どういう原理でしょうか?

惑星の重力の影響でそうなっていて、月だけでなく木星に4つあるガリレオ衛星も同様です。衛星は、惑星の重力につかまってその惑星の周りをずっとぐるぐる回っています。私たちも地球の重力で地球にはりついています。重力はニュートンの万有引力で、質量のあるすべてのものにはたらく力です。つまり、地球と月も引き合っていて、月は地球の周りを回ることで、地球に落ちずにいられるわけです。このとき、月は地球の周りを一周する公転の周期と同じ周期で自転するため、地球からは同じ面しか見えないというわけです。周期の話でいうと、太陽系惑星の公転速度は太陽との距離が遠いほど遅く、例えば、一番近い水星は88日、地球は365日、一番外側にある海王星では約164.8年かけて太陽の周りを一周します。

左が下弦の月、右が満月。 [提供:国立天文台]

今私たちが見ている天体はすでに過去のものなんですよね。

そうですね。一番近い月で約1.3秒前、太陽でも8分前の姿を僕たちは見ています。天文学では光が1年間に進む距離の単位「光年」を使うことがあります。1秒で地球を約7周半する光の速さで1年かかるのが1光年です。それでいうと、例えば冬の大三角形の一つで一番明るいおおいぬ座のシリウスは約8.6年前、次いで明るいりゅうこつ座のカノープスが約310年前、北極星だと約430年前、全てが過去の姿です。ですから今見えていても既に死んでいる星も中にはあってもいいわけで、それだけ宇宙は広くて遠いということなんですね。

そう考えると、やっぱりとても気になるのは、宇宙の果てについてです。

よく聞かれます。宇宙は約138億年前にビッグバンによって誕生し、今も膨張し続けています。僕たちの見ることのできる宇宙には限りがあります。なぜかというと、見るということは光が天体から望遠鏡に届くということですが、光は光の速さでしか伝わりません。宇宙は今、約138億歳なので、この宇宙の年齢の時間内に光が飛んで来られる範囲しか見ることができない、ということになります。つまり、観測可能なのはどうがんばっても約138億光年までということになり、ここを「宇宙の地平線」と呼んでいます。宇宙の地平線を宇宙の果てということもありますね。ただ、注意してほしいのですが、宇宙の地平線はあくまで観測可能な範囲で、宇宙の大きさではありません。宇宙は無限に広がっていると考えられています。これは観測できている宇宙がどこをとっても同じような様子をしていて、何か特別なところ、端とか真ん中とかがないことから、そう考えると都合がいいんです。

宇宙の果てについて、さらに詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。
https://www.nao.ac.jp/study/uchuzu2013/scroll/ (宇宙図)