詳しい知識がなくてもいいんです。興味のある天体を覗いてみてください。

国立天文台三鷹キャンパスで撮影されたオリオン大星雲。 [提供:国立天文台]

土星の環というのは、小さな望遠鏡で見ることができるのですね。

そうですね。僕が最初に土星の環を見たのは中学生の頃です。紙製の屈折望遠鏡のキットを組み立てて覗いたら、土星が滲んだように見えました。そして、大気が安定した一瞬、とてもクリアに環が見えたんです。思わず叫んだのを今でもよく覚えています。その美しさや不思議さに魅了され、環はどうやってできているのだろうと、とても興味を持ちました。
1610年にガリレオ・ガリレイが初めて土星の環を観測して以来、多くの学者たちがその謎の解明に取り組んできました。1675年にイタリアの天文学者、ジョヴァンニ・カッシーニは、「土星の環は間隔を置いた複数の環で構成されている」と、1859年にはイギリスの理論物理学者、ジェームズ・クラーク・マクスウェルは、「環は無数の粒子から構成されている」と提唱しました。そして、ジョヴァンニ・カッシーニの名前にちなんだ土星探査機「カッシーニ」が2004年に土星に到着すると、驚くほど美しい土星の環を僕たちに見せてくれたんです。

小久保先生もその美しさに魅了された、カッシーニ探査機が撮った土星の環。 [提供:NASA]

土星の環は数cmから数mの氷の粒子の集まりであると考えられています。粒子が整列することでさまざまな模様が生まれるのです。カッシーニはこれまで知られていなかったような環の構造をたくさん発見しました。未だにどのようにしてそんな構造ができるのか分からないものもあり、宿題になっています。皆さんはきっとあの大きな円盤のように見える環は厚みも相当あると思うかもしれませんが、平均的には約10mで、斜めの角度では見えても真横からは見えないほど薄いんです。最近の土星の環の研究の成果を可視化したものが4D2Uプロジェクトのコンテンツにいくつかあるので、よかったら土星の環の中を仮想探検してみてください。天文学の最新の成果を、分かりやすく、楽しく、そして科学的に正しい映像表現で見てもらいたいというのが4D2Uプロジェクトの思いです。星や宇宙について詳しい知識がなくても解説もありますので、気軽に覗いてみてください。
https://4d2u.nao.ac.jp/movies/20160701-planet/ (4D2Uドームシアター特設サイト)

実際に星を観察したいときは、やはり望遠鏡があった方がいいでしょうか?

見たい天体がはっきり決まっていたら、それを見るための望遠鏡があってもいいと思います。中学時代に紙のキットで作った口径6cmの簡易的な屈折望遠鏡でも、土星の環に感動しました。最近は手頃な価格で性能の良い小型の望遠鏡もあるようです。性能は倍率よりも口径の大きさが重要なようで、見たい天体に合ったものを選ぶのが大事みたいですね。それから双眼鏡の種類によっては天体を楽しめるものもあるようです。また、国立天文台三鷹キャンパスでは、定例観望会を毎月開催していて、月や惑星、星団や銀河などを観測できる機会があります。全国各地にある天文台でもさまざまな観測会を開催しているようですので、検索してみるといいと思います。
https://prc.nao.ac.jp/stargazing/index.html(国立天文台の定例観望会のサイト)

岡山天体物理観測所にて2017年に開催された188cm反射望遠鏡を使用した観望イベント。 [提供:国立天文台]

先生が開発に携わられた4D2Uドームシアターについて、改めて開発の経緯や想いなど教えてください。

4D2Uドームシアターは、僕が天文台に異動してすぐ、当時の国立天文台長だった海部宣男先生たちと一緒に、「宇宙を目の当たりにする」という大きな目標を掲げて開発を始めました。皆さんは夜空を見上げて星空を眺めることはあっても、その星のある宇宙を実感することってなかなか難しいと思うんです。そこで、もっと多くの皆さんに、どうにかこの素晴らしい宇宙を感じてもらいたいという思いから、このプロジェクトが始まりました。そして、国立天文台として作るからには、宇宙をできるだけ科学的に正しく表現することにこだわり、スーパーコンピュータを使った3次元シミュレーションデータやさまざまな観測データによる立体映像で宇宙を再現した4D2Uドームシアターが誕生したんです。

小久保教授が開発に携わった4D2Uドームシアター。さまざまなテーマで壮大な宇宙の様子が再現されている。 [提供:国立天文台]

実際に見せていただき、とても感動しました。まるで自分が宇宙空間にいるような体験でした。

それはよかったです。星空を光で投影して見せるプラネタリウムに対し、この4D2Uドームシアターは、星空だけではなく、実際に宇宙の中に入って行ってさまざまな天体を見る疑似体験ができるのが大きな違いです。月に3日ほど一般公開していて、多い時は抽選になることもありますが、Webでもコンテンツを公開していますので、どなたでも自由に見ることができます。2007年に開設して以来、研究もどんどん進んでいますので、内容も進化し、新しいものが次々公開されています。毎月テーマも違いますし、一見専門的で難しい内容に思えても、分かりやすく動画で解説もしていますので、ぜひ気軽に楽しんでいただければと思います。

国立天文台ではさまざまな望遠鏡や歴史的資料などが展示されています。見学コースは四季折々の草花を楽しめます。年末年始を除く毎日午前10時〜午後5時に一般公開しています。入場は無料です。

国立天文台三鷹キャンパスの見学案内サイト

写真は、20世紀中盤まで
観測施設として活躍した「子午儀資料館」。

Episode about stars 星にまつわるエピソード

曜日が星になっているのは、世界共通じゃない?

“日、月、火、水、木、金、土”というように、日本では各曜日に星の名前が付いています。これは、太陽や月、惑星が地球を中心に回っているという天動説を基に、太陽と月と肉眼で見える5つの惑星を地球から近い順に並べ、音楽のテトラ・コードに合わせたり、1日の時間に振り分けたりすることで今の順番になったとされています。日本には平安時代に弘法大師によって広まりました。英語や欧州の言語では惑星が神の名前になっている曜日もあり、世界で統一されているわけではありません。ちなみに、週の初めも日曜や月曜始まりと国や地方などによって異なるようです。

参考:https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/CDD7C1C72F1BDB5B4D6A4C8A4CFA1A92FCDCBC6FCA4CECCBEC1B0.html

新しい星を発見したら、名前はどうやって付けるの?

小久保先生にお聞きしたところ、国際的な連絡機関があるそうです。太陽系以外の惑星であれば発見者ではなく、「恒星の名前+アルファベット」など自動的に名前が振られ、それこそ星の数ほど発見されてきているそうで、「名前を付けても仕方ないといったところでしょうか」とのこと。命名できるのは小惑星だけで、天文学者の名前も多く付けられています。ちなみに、小久保先生から取った「小惑星Kokubo」もありました。

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