せっかくなのでDIYに挑戦してみた。結果は…

時間的な制約がある場合は、下準備と体力が重要!
古田さんから話を聞いているうちに、これはぜひやってみたい!と感じ、ほぼ空き家状態になっている筆者の実家で思い切って試してみることに。別の場所に住む家族からも「ご自由に!」との許可をもらい、古田さんのアドバイス通り、「失敗してもいい」場所を探してみた。もともと、一番の悩みは日本家屋にありがちな「ザ・砂壁」。台所と洗面所以外の大半の部分に塗装されており、この砂が経年劣化により剥がれ落ち、とにかく厄介なのだ。夜に掃除機をかけても朝にはボロボロと床に落ちている状態で、住んでいた頃はホトホト困り果てていた。落ちた砂が一番目立つのが廊下なのだが、玄関から約20m続く一本廊下の壁一面に塗装されており、これに手を付けるのは考えただけで気が重い。ましてや一番失敗してはいけないであろう場所だ。であれば、佇む時間が長いわりに家族以外は使わない居間にしてはどうだろうかと考えた。

砂壁を固定するスプレーを塗布した翌朝、全く砂が落ちていなかったのには驚いた。ただ、帰省の疲れもあり、手を抜いてしまった養生が後々命取りに。
今は誰も住まない6畳の居間。家具はテレビとソファ、座卓だけで、簡単に移動できるため好都合だ。古田式「砂壁をすべてこそぎ落とす」という方法は時間的に無理だと判断し、剝がさずに壁面を固定する方法で行うことに。まずは、スプレー式の固定剤と水性塗料、塗装道具のローラーやバケツ、養生テープをインターネットで購入。金曜の終業後に帰省し、夜中に約3時間かけてある程度の養生を済ませ、砂壁に固定剤をスプレー。かなり臭いがきつく、冬の寒空の中、窓を開けたまま行うことに。翌土曜は朝から塗装開始。一斗缶から塗料をバケツに移し、初めてのローラー作業は結構楽しかった。が、ジャンジャン塗り進めていくと、しっかりと養生できていない部分があり、塗料が柱にべっとり。慌てて拭いて養生するなど下準備の杜撰さが仇となる。やはりいい加減な準備では後が大変だということを思い知らされた。さらに、脚立がなかったため、座卓にダイニングチェアを置き、作業をしなければならず、乗り降りする際に不安定で、随分と塗料を床にこぼしてしまった。養生シートを敷いていたことで、畳は汚れなかったものの、足の裏は塗料まみれ。結局、朝9時から始めた作業が終わったのは深夜0時過ぎ。翌朝、養生をすべて撤去した。

初のDIYビフォア(上)アフター(下)。色数の多い襖には、ホームセンターで購入した無地の既製品を、既存の襖紙の上からスチームアイロンで抑えた。
いろんな失敗はあったものの、遠目で見ると、結構見栄えはいい。塗料が柱に付着し、補正しなかった壁の凹みも目立つが、短時間で、しかもたった一人でよくやった!と大満足。達成感と共にじわじわ襲ってきた疲労感。想像はしていたもののかなりの体力勝負だった。廊下にこぼれ落ちる砂壁の砂に、できるだけ目をくれないようにして急ぎ実家を後にした。耐久性については徐々に判明するだろう。
失敗せず完璧を目指すなら、綿密な計画と設計図が必要

上階の天井まで続く階段室。採寸・設計、素材のオーダーから施工まで、すべて一人で行い、しかも初めてのDIYというから驚きだ。
打って変わって、こちらは綿密な計画に則り行われたDIYの事例だ。読書家の住人は、新築した家の階段部分のスペースを見逃さなかったようだ。日曜大工で約1か月かけて立派な本棚をDIY。まずは、階段室のサイズを計り、手描きの設計図を作成。近所のホームセンターでサイズ通りにカットしてもらった木材と木ダボ、ドリル、アジャスターを購入し、なんと店から歩いて運んで来たらしい。気合いが違う。釘を使わないため、ドリルで木材に穴をあけ、木ダボを打ち込んで木材同士を組んでいく。上下の柱部分にはアジャスターで、いわゆる突っ張り棒のように固定。制作から5年たった今では、書物でびっしり埋め尽くされているそうだが、全くびくともしないそうだ。ここまでくると、まるで職人技だが、ご本人曰く「危険なことも一切なく、休日に少しずつ行った、いわゆる日曜大工でとても楽しかった」とのことだ。

元は砂壁だったという壁には釘を打ったりタイルを張ったりするのは難しい。そこで、壁の手前にべニアを張る。しかも、断熱材を入れるという手の込みよう。
「私にとってのDIYは実験のようなものです。だから失敗すると、次にまたやってみる楽しみが増えるんです」。最後に紹介するのは、そう語る古田さんのアイデア満載のこちらの壁。和室の砂壁と柱をうまく利用したベニヤの壁で、釘などを打てない賃貸などにおすすめだと言う。一体どうなっているのかというと、柱と砂壁の段差を利用して、砂壁側に等間隔に2~3本の合板を立て、合板上部と長押(柱と柱の間を渡す横木)間をアジャスターで突っ張って固定。合板と合板の間には断熱材を入れ、上からかぶせたべニア上から、下に合板を置いた辺りにタッカーを打ち込む。断熱効果も上がり、さらにべニアの上からタイルを張ったり、絵を飾ったりできるおしゃれな空間に。砂壁に困っていたら、一考の価値はある。ただし、挑戦する場合は失敗してもいい場所で。
DIYを始める前に押さえておくべき注意点
気軽に楽しめる一方、自己責任では済まされないような事故が起きる危険性もあるDIY。
DIYを検討する際には、決してやってはいけないことも押さえておこう。
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電気工事
配線工事や分電盤の改造、防水処理が必要な工事、コンセントの増設など資格が必要。
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給排水工事
建築基準法にて大規模改修を無資格者が行うのは違法。大きな被害になる恐れもある。
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ガス工事
爆発の危険性、一酸化炭素中毒のリスクもあるので必ず専門家に。
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躯体を傷付ける
構造体が壊れる恐れがあるため、躯体に穴を開けたり躯体を削ったりしてはいけない。
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柱や壁、天井を変更する
水道・電気設備に関係することもあり業者に依頼しよう。
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所有敷地に小屋などを建てる
土地には地域や用途による法律があるため必ず確認が必要。
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高所作業
安全対策が必要。万が一、命の危険もあるため、業者に依頼を。
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住宅設備機器の設置や修理
給湯機や換気設備などの設置や修理はプロに任せよう。
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賃貸住宅は契約内容を確認
やってはいけないことの制約も多いため賠償の必要があることは避けよう。