今回から始まった「TRENDOOR ―トレンドの扉―」は、世の中の“ちょっと気になる流行”を毎回一つ取り上げて、その実情や背景、傾向などをご紹介する新連載。第一回の今回は、『メンズ美容』。最近話題の“スキンケアおじさん”こと、サラリーマン兼美容ライターの伊藤聡さんに、最新のメンズ美容の傾向やご自身の体験を踏まえたスキンケアの魅力について伺いました。
タイトルにもあるように「乗り降り自由!」です。試してみるかやめておくか、それとも、すでに生活の一部になっているか、十人十色。皆さんはいかがでしょうか。
話を伺ったのは
伊藤聡さん
Satoshi Ito
Profile
1971年生まれ。会社員として勤務する傍ら、興味を持ったスキンケアにハマっていったことで、美容をテーマにしたライターとして活躍。スキンケアや美容について美容やライフスタイル系雑誌にて連載中。著書に『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました。』(平凡社)などがある。
コロナ禍で孤独を感じる中、電車の窓に映ったご自身の“くたびれた顔”に衝撃を受け、スキンケアを始めたという伊藤さん。ご自身の肌と真剣に向き合う中で、分からないことを人に聞くうちにコミュニケーションの大切さを実感。その体験から、特に同世代の男性に伝えたいメッセージがあると言います。
●まずは、最近のメンズ美容の傾向を教えていただけますか?
美容系雑誌に連載記事を執筆しているのですが、そこでの調査では、大学生や20代の方々は、洗顔後に化粧水・乳液を使っている人が多いようです。紫外線対策に日焼け止めを使うなどスキンケアの意識も高い傾向です。また、日焼け止めとファンデーションなどが合わさったBBクリームのようなベースメイクを取り入れる若い方も増えているようです。一方、40代以上では顔は水洗い、髭剃りで肌を傷つけても気にしないという人が多いんです。肌のトラブルが気になったとしても、私も以前はそうでしたが、ドラッグストアなどのスキンケアコーナーに足を踏み入れるのが恥ずかしかったりするんですよね。そんな抵抗感をなくすためか、男性用商品のパッケージは黒っぽくてハードなイメージで、スースーする使用感のものが多く、「肌に優しい」とか「潤う」などの効果がある商品を手に取る機会が少ないように感じます。
●背景にはどのようなことがあると考えられますか?
私たちの育った時代は、転んで怪我をしても「唾を付けときゃ治る」と言われがちで、ニキビに悩んでいても、相談する人も教えてくれる人もいませんでした。高校生ぐらいで髭が生え始めても、髭剃りの仕方が分からず、私の場合は村上春樹さんの小説で主人公が髭を剃るシーンがあって、それを真似して覚えた気がします。ですから、特に同世代の“おじさん”たちは、そもそも肌を労わったりケアしたりという意識があまりなく、自ら誰かに聞いてみるなんてことはまずないと思います。
最近の若い人は、何かに悩んだり分からないことがあれば、すぐにインターネットなどで調べて簡単に情報を取り、手軽・気軽に買うこともできます。そういった背景もあってか、男性用商品が増えて専用コーナーを設けている店舗もありますし、男性用・女性用といった区別のない、ボーダレスでユニセックスな商品も増えています。
●伊藤さんのスキンケアのルーティンを教えていただけますか?
朝はまず洗顔料でしっかりと汚れを落とします。泡立てた洗顔料を顔全体にそっと伸ばし、こすらずに優しく洗います。髭剃り前には肌に化粧水を付け、剃り終わったら洗い流して優しく拭き取った後、化粧水が浸透しやすくなるように「導入剤→化粧水→美容液→乳液→日焼け止め」の順で使います。夜は、「洗顔→導入剤→化粧水→美容液→乳液」にしています。
美容液は、その日の肌の調子で何が必要かを考えながら、2種類ほどを使い分けています。例えば、お酒を飲んだ翌朝などに肌がゴワゴワしているなと思ったら、それをリセットしてくれるような美容液を使いますし、肌が乾燥気味な日はオイル系の美容液を夜に使ったりします。
左から、お気に入りのオイルタイプの洗顔料、化粧水が入りやすくなる導入剤、長年愛用の化粧水、ハリを与えてくれる美容液、ビタミンC誘導体の入った毛穴対策の美容液。そして、さまざまな美容成分を肌に注入後、最後に蓋をする役割の乳液。
●スキンケア初心者におすすめの商品やポイントはありますか?
基本的には洗顔、化粧水、乳液くらいは使うといいと思いますが、やったことがないという方は、洗顔後に化粧水と乳液が一緒になった「オールインワン」タイプもおすすめです。髭剃り後にヒリヒリするようなら、我慢せずに乳液を付けると結構収まりますし、肌の突っ張りも緩和されます。高価な商品じゃなくてもいいので、ぜひ試してみてほしいです。できればご自身の肌に興味を持って鏡でよく観察して、ハリはあるか、毛穴やしわが目立っていないかなどチェックして、気になるところに必要だと思うものを試してみるとよいでしょう。私はシミが気になってビタミンC誘導体の入った商品を選び、実際にシミが薄くなっていくのを実感したときは嬉しかったです。少しでも変化を実感できると楽しくなると思います。
●スキンケアを始められてから、さまざまな変化があったようですね。
はい。女性は「見られる側」、男性は「見る側」という感覚を無意識に持っているのか、自分が「人から見られている」という意識が薄い男性が多い気がします。それに中年になってくると、やたらと教えたがったり、人の話をちゃんと聞かなくなって、気が付くと周りに話相手がいなくなっていたり。誰かが落ち込んでいても、「大変だね、つらいね」って寄り添ってあげられず、「君の努力が足りないからだ」なんてつい言っちゃったり。そんな風に、人をケアするのが苦手な“おじさん”は、ご自身のケアなんて考えたこともないんじゃないかと。思い当たるところがある“おじさん”にはぜひ、まずはご自身をしっかりと見てスキンケアをしてほしいと思うんです。泡立てた洗顔料で顔を優しく洗って、化粧水で保湿して、美容液を浸透させ、乳液で蓋をする。そうやって自分を丁寧に扱って大事にしてあげると、自分がどれだけ自分を粗末に扱ってきたかに気付くはずです。自分が自分を大事にすると、きっと周りの人にも優しくなれて、相手との関係も変わってくると思います。
●最近は電車の窓に映る自分を見ていかがですか?
そうですね。ビフォーアフターみたいな違いは分かりませんが、精神的な部分の変化は結構大きいです。友達もできたりして毎日がハッピーだと感じられるようになりましたね。日々を楽しく過ごすためにも、自分を大事に、人とのコミュニケーションやケアを面倒くさがらずにやっていきたいと思っています。

