今の部屋に満足できず、方法が分からない場合は…

和室をおしゃれにしたいなら“要素を減らす”こと
大工になりたいと思っていたにもかかわらず、私は必要最低限のレベルのやり方だけを身に付け、なるべく工具を買わず、知識をつけないようにしています。というのも、手軽で何度でも直せるという楽しさを追求していることもあって、大掛かりな工具などまで使いこなしてしまうと趣味の領域を超えそうで。実際、私のDIYに興味を持ってもらえるのも、「誰でもこんなに簡単にできるんだ!」というところだと思うんです。そこを楽しんでもらいたいなと。なので、大掛かりなところはプロに頼み、ちょっとした不都合や痒い所くらいは自分で何とかやってみようというスタンスです。
私の講習に来られる方は、今の部屋に満足していない。おしゃれにしたいけど、どうしていいか分からないという方がとても多いんです。そんな方々にまずお伝えしているのは、“要素を減らす”ということです。

ふすまをウッド調のブラインドに変え、壁や天袋の扉を白に。色や素材の数を減らすだけで手軽にできる押し入れDIYの例。
和室ってめちゃめちゃ要素が多いんです。例えば、ふすまには色や柄がついていて、障子には桟が、砂壁にも色があります。デザインにも素材にもいろいろなものが入っている。なので何かを足そうとするともっとごちゃごちゃになる。だから要素を減らして掃除して片付ければ、実はそれだけでも簡単におしゃれになる。実際、私のおすすめは、工具はほとんど使わず、知恵を使って、発想を変え、柔軟に考えるDIYです。失敗してもいい。そういう柔軟さでとりあえず簡単なことからやってみる。これは「ミッドセンチュリー」がコンセプトの和室ですが、床は置き型フローリング。壁は砂壁をそぎ落として水彩塗料を塗り、戸袋の扉を白に替え、ふすまを外してウッド系のブラインドを付けただけです。

木とステンレスに障子などの和素材で構成された部屋は、シンプルかつモダンな家具と調和する。障子越しに射す柔らかな光が心地いい。
また、これは最初にDIYを始めた「和モダン」がコンセプトの和室です。建築家、吉村順三の日本の木造建築の伝統とモダニズムの融合を意識したようなデザインにしています。天井照明を変えて、手前右のカウンターを作り、障子の左隣の壁にL字の板を設置しました。カウンターは合板で棚を作って、その上にインターネットでオーダーしたステンレスを乗せただけの手作りです。L字の板はタッカーの針を斜め上から打ち、自重で引っかかるようにしたものです。障子は木枠から作ってくれる建具屋さんに、桟の数を減らしたものをオーダーしてはめています。和室の雰囲気は生かし、木とステンレスの素材、色は3色に抑え、お気に入りの家具を置く。また、お金を「ケチるところ」と「かけるところ」のギャップも大切です。アイデアや工夫でお金をかけない分、好きな家具などはちょっと良いものを選ぶなどのこだわりが、いいスパイスになったりします。

古いけれどしっかりした造りの実家。大掛かりなリフォームをせずともおしゃれに豊かに暮らすにはどうすればいいか、この部屋を眺めながらじっくり考えた。
今あるものを生かしてデザインし、機能を工夫する
そして、今あるものを生かす。洗面台周りは、既存の洗面台の脇に17cmくらいの隙間があったんです。たぶん、前に新しい洗面台を設置したら、隙間ができてしまったんだと思うんです。ここをおしゃれで機能的にしようと思うと、水回りですから、ちょっと大掛かりなリフォームになります。今の洗面台を撤去して、ここに収まる洗面台に取り換えるのかと思います。また、「リフォームはちょっと…」と思っても、この17cmに収まる隙間家具を探して購入することを考えがちではないでしょうか。ただ、私の場合はおしゃれにデザイン性を考えつつ、出来るだけ費用をかけず、空いているところを機能的に使いたいと思うんです。じゃあ、この洗面所のデザインを全体的にまとめるにはどうするか。まずは、このスペースを白と木で統一した洗面室にしようと思いました。そこで洗面台の既存ミラーを取り外し、壁を白く塗り、ミラーと棚を既製品から選びました。隙間部分は洗面台の延長のようにしようと、既製品の箱を引き出しのように3段重ね、その上に隙間をふさぐような台を置こうと。100円ショップで買った板をL型につなげ、洗面扉と同じシートを貼りました。壁と洗面台に小さなピンを付け、その上に台を乗せました。工夫次第で、材料もお金も無駄にせずにすみました。

元々のシステム洗面台と壁には17cmの隙間が。水回りの大掛かりな工事をせず、使える部分をうまく生かし、お金をかけずにおしゃれにする。
例えば、実家が空き家予備軍という方も多いと思います。「実家に住むのはちょっと恥ずかしい」、「自分で家を買ったり建てたりするのが一人前」みたいな見方もあるようです。だったら、「実家を生かして自分らしく暮らす」という考え方もあると思います。これからどんどん増える空き家対策にもなるのかもしれません。
危険な作業や大掛かりなことはプロに任せ、デザイン面でのこだわりや、住みやすさを工夫して、失敗したらまた直せばいいと気軽に楽しんでやってみるといいと思います。何からやっていいかわからない場合は、釘も糊も使わず、カーペットや照明を変えるだけでも、変わったと実感してもらえるんじゃないかと思います。