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ニュースリリース

2007-05-29

首都直下地震を想定した東芝エレベータの総合的な地震対策について
総合的な地震対策の構築により地震発生時の早期復旧を目指す

エレベーター サービス デジタル/AI 保守 安全 安心 新商品/新機能 自動化 遠隔技術

 当社(社長:下野政之、本社:東京都品川区)は、首都直下地震をはじめ、東海・東南海・南海地震の発生が懸念されるなか、製品・サービスの両面から首都直下地震を想定した総合的な地震対策を構築しました。

 製品面では、地震発生時に気象庁から配信される緊急地震速報を利用し、予め決められた震度以上の地震波が到達すると予想される場合に、エレベーターの管制運転を開始、最寄の階に停止させる「緊急地震速報の利用」を新たに開発するとともに、昨年7月業界に先駆けて発売した「リスタート運転機能(*1)」や「自動復旧運転機能(*2)」など、幅広い地震対応機能を既設エレベーターにも適用拡大しています。2008年までに、リスタート運転機能については、当社全保守台数の約50%に適用することが可能となり、リニューアルや改修工事などで対地震性能を向上させます 。
*1:地震管制運転中に安全スイッチが動作後、復帰を確認し再スタートする機能
*2:地震による停止後、診断運転を実施し自動的に仮復旧する機能

 一方、サービス面では、「携帯電話を活用した昇降機保守支援システム」を新開発し、復旧作業の開始および終了時間をQRコードにより携帯電話に記録することで、地震発生時の被害および復旧状況をリアルタイムに把握することが可能になりました。携帯電話により位置情報を把握し、サービス情報センターからメール送信により出動指示を行い、フィールドエンジニアを機動的に配置し効率的な復旧を実現します。さらに、将来的には、フィールドエンジニアが目的地へ速やかに移動できるようサポートする位置情報ナビゲーション機能を開発し、本システムに搭載する計画です。

 また、サービス情報センターの体制強化および携帯電話を活用した昇降機保守支援システムの開発により、広域災害情報やフィールドエンジニアの安否情報、物件情報、顧客情報など復旧に必要な様々な情報を早期に把握し、物件情報表示モニターで閲覧できるシステムを新開発しました。将来的には、お客様の該当エリアごとに復旧までに掛かる目安時間を予測し、インターネットによる情報提供サービスを計画しています。

 この度の総合的な地震対策の構築により、首都圏を震源とする大規模地震では、発生後12時間以内に約1,000名(後方支援含む)を動員し、発生後8時間以内に閉じ込め救出完了、発生後7日以内に復旧完了。また、中規模地震では、発生後3時間以内に約500名以上動員(5割稼動)し、発生後30分以内に閉じ込め救出完了、発生後6時間以内に復旧を行う目標を掲げています。

【1.背 景】
 一昨年7月、千葉県北西部を震源とする地震が発生し、首都圏を中心に約64,000台(*3)のエレベーターが安全確保のため運転休止し、このうち78台(*3)において閉じ込めが発生しました。その後、国土交通省の諮問機関である社会資本整備審議会建築分科会建築物等事故・災害対策部会において、エレベーターの地震防災対策が議論され、昨年4月最終報告がまとめられました。今後も首都直下地震をはじめ、東海・東南海・南海地震の発生が懸念されるなか、千葉県北西部地震後も福岡県西方沖地震や能登半島地震が発生しており、全国各地でいつ大規模な地震が発生するかは予断を許さない状況となっています。一方、マンションやオフィスビル、駅舎や商業施設などにおいて、縦の交通機関として社会インフラを支える昇降機設備に対する所有者および管理者、利用者からの安全・安心・快適についての意識は高まっており、高水準かつ高品質な製品およびサービスの提供が求められています。
 こうした状況下、当社は東芝昇降機に関わる製造・販売・技術・サービスの一貫体制を生かして、2006年4月、エレベーターの地震対策について製品面・サービス面の両面から対応する社内プロジェクトを発足、この度、首都直下地震を想定した総合的な地震対策を構築しました。
*3:ともに大手五社合計値。(社)日本エレベータ協会調べ

【2.基本方針】
1.広域災害発生時の迅速な復旧対応を支援
 「安全・安心・快適な昇降機製品およびサービスの提供を目指す」という当社の考え方をもとに、万一、地震が発生した際の基本方針およびその対処方針を策定しました。

(1)基本方針
  • 人命尊重、安全確保(閉じ込め救出)を最優先とする
  • 昇降機の早期復旧を図り、都市機能の再開に全力をあげる
  • 地震対策機能の充実、普及

(2)対処方針
  • 被害の早急な実態把握と早期復旧に向けた迅速かつ的確な対応体制の構築
  • 早期回復に向けた人員配置と支援ツールの構築
  • お客様・利用者に対する情報提供、コミュニケーション強化
  • 実践的な準備・訓練を重ねて災害に備える

【3.全社施策】
(1)新・地震災害対応体制の確立
 万一の大規模地震(震度6弱以上)の発生に備えて、全社災害対策本部に生産・技術・営業部門等を加え、製造・販売・技術・サービスの全社総力を挙げて対応する新しい対策本部体制を構築しました。新体制の確立により、部品供給や技術検討などの復旧支援、お客様に対する被害状況および復旧状況の報告など、お客様建物におけるエレベーターの復旧作業を迅速に対応する体制を確立しました。

(2)全社一斉訓練の実施
 5月12日、当社およびグループ会社社員約4,600名が参加し、地震対応に備えた実践的な訓練を全社一斉に実施しました。今回の訓練は、出動に時間を要する休日に震度6強の首都直下地震並びに全国各地で震度6弱の地震が同時に発生するという想定で行われ、首都圏50km圏内では、新開発の携帯電話を活用した昇降機保守支援システムを用いて地震発生後に復旧状況を入力、復旧情報をリアルタイムで自動集計する等の検証と災害対策本部の設置および情報収集(安否・被害および復旧状況等)の訓練を実施しました。同時に、新たに導入した携帯電話による安否確認システムを用いて、フィールドエンジニアに安否確認を実施しました。

【4.具体的取り組み(製品面)】
(1)地震対策商品の普及と適用拡大
 閉じ込め防止に対応する「リスタート運転機能」や「緊急救出復旧機能(*4)」、早期復旧に対応する「自動復旧運転機能」など、幅広い地震対応機能を既設エレベーターにも適用拡大しています。2008年までに、リスタート運転機能については、当社全保守台数の約50%に適用することが可能となり、リニューアルや改修工事などで対地震性能を向上させます。
*4:地震による停止後、外部からの誘導で最寄階へ運転する機能
注:「自動復旧運転機能」については97年以前の機種・高速機種・高昇降行程仕様での適用を除きます。

(2)緊急地震速報の利用
 地震発生時に気象庁から配信される緊急地震速報を利用し、予め決められた震度以上の地震波が到達すると予想される場合に、エレベーターの管制運転を開始、最寄の階に停止させます。より早く地震時管制運転を開始することにより、閉じ込めなどの被害を防止します。緊急地震速報の利用については、東芝ビルをはじめ都内大型ビル数ヵ所で稼動しています。

(3)長周期地震対策
 高層建物へ設置したエレベーターは、比較的長周期な地震の影響が懸念されます。 長周期地震対策は、建物特性にあわせたエレベーターロープの揺れ解析を実施し、ロープ類の引掛り防止対策に加え、長周期地震を検出する地震感知器の適用し、ロープ類の揺れが軽減される位置までの乗りカゴ退避オペレーションなどにより、長周期地震時の被害を未然に防ぎます。

【5.具体的取り組み(サービス面)】
(1)広域災害出動体制の再構築
 地震の発生場所や被害状況などにより、応援事業所および出動人員を決定する広域災害発生時の応援体制を新設しました。首都直下地震が発生した場合は、首都圏以外の5つのエリアから総勢100名のフィールドエンジニアを出動させる計画です。また、首都圏にある府中工場では、部品供給や技術検討などの復旧支援のため、技術者を出動させる体制としました。さらに、首都圏にあるビジネスパートナーと広域災害発生時における出動を取り決め、最大約400名の支援体制を構築しました。

(2)初動人員の確保
 地震発生直後より閉じ込め救出や復旧作業を行う初動人員を確保するため、フィールドエンジニアの居住地を社内調査し、その結果に基づき、段階的に主要な寮の再配置を行い、早期に緊急出動できる人員の確保を計画しています。

(3)携帯電話を活用した昇降機保守支援システムの開発

  1. リアルタイムで被害および復旧状況を把握
    復旧作業の開始および終了時間をQRコードにより携帯電話に記録することで、復旧作業の進捗状況をリアルタイムに把握することが可能になりました。
  2. フィールドエンジニアに出動指示
    携帯電話により位置情報を把握し、サービス情報センターからメール送信により出動 指示を行い、日頃より訓練を重ねたフィールドエンジニアを機動的に配置し効率的な復旧を実現します。さらに、将来的には、フィールドエンジニアが目的地へ速やかに移動できるようサポートする位置情報ナビゲーション機能を開発し、本システムに搭載する計画です。
  3. 携帯電話に安否確認システムを搭載
    株式会社東芝で採用している安否確認システムを携帯電話に搭載。フィールドエンジニアの安否情報を早期に収集し、迅速な初動対応、昇降機の復旧対応に繋げます。

(4)情報提供サービスの開発
 サービス情報センターの体制強化および昇降機保守支援システムの開発により、広域災害情報やフィールドエンジニアの安否情報、物件情報、顧客情報など復旧に必要な様々な情報を早期に把握し、物件情報表示モニターで閲覧できるシステムを新開発しました。将来的には、お客様の該当エリアごとに復旧までに掛かる目安時間を予測し、インターネットによる情報提供サービスを計画しています。

【6.被害想定と対応目標(中規模地震)】

(1)想定地震
首都圏を震源とする(規模M6.0、最大震度:5強)
(2)エレベーターの被害想定(首都圏50km範囲内)
閉じ込め台数 10台
物損台数 5台
停止台数 約14,000台 40%
総契約台数 約35,000台
(3)対応目標
【動 員】発生後3時間以内:約500名以上動員(5割稼動)
【救出復旧】閉じ込め救出完了:発生後 30分以内、復旧完了:発生後 6時間以内

【7.被害想定と対応目標(大規模地震)】

(1)想定地震
震源:東京湾北部 規模:M7.3 最大震度:6強 条件:冬、夕方 風速:15m/秒
(2)東京の災害想定
建物被害 約47.1万棟
死者 約6,400人
(減災目標:4,600人)
道路・橋梁被害 607箇所
鉄道被害 663箇所
「首都直下地震による東京の被害想定(2007年5月25日東京都)」より
(3)エレベーターの被害想定(首都圏50km範囲内)
閉じ込め台数 約2,450台 7%前後
物損台数 約3,500台 10%前後
停止台数 約28,000台 80%前後
総契約台数 約35,000台
(4)対応目標
【動 員】発生後12時間以内:約1,000名(後方支援含む)を動員
【救出復旧】閉じ込め救出完了:発生後 8時間以内、復旧完了:発生後 7日以内
注:算出条件:休日の場合は出社徒歩(分速80m)、道路・橋梁被害の影響を受けず最短で出社した場合。

【8.投資計画】
約30億円(内訳 製品:約10億円、サービス:約20億円)

本資料についてのお問い合わせ先:

東芝エレベータ株式会社 総務部総務広報担当TEL 044(331)7001