ニュースリリース
2002-12-17
国内初、世界最高速 超高層向け屋外形展望エレベーター稼動開始
屋外形展望エレベーター及び大容量高速エレベーターについて
エレベーター R&D 新商品/新機能 新設
【概要】
当社(社長:西岡浩史、本社:東京都品川区)は、超高層ビル向けでは国内初となる「屋外形展望エレベーター」を開発し、六本木一丁目の泉ガーデンタワーに納入しました。
泉ガーデンは、住友不動産株式会社殿がメインデベロッパーとして取り纏めた再開発事業で、営団地下鉄南北線「六本木一丁目」駅に隣接した2.4haの敷地に、事務所商業棟、住宅棟、美術館ギャラリー棟の大きく3棟から構成されています。当社は、このうちの事務所商業棟である地上45階の泉ガーデンタワーに、屋外形展望エレベーター2基と大容量高速エレベーター4基を含む高速エレベーター14基を納入しました。
屋外形展望エレベーター2基は、同タワー最上層に位置する住友会館直通で、総ガラスのタワーデザインを活かすためエレベーターが上下する昇降路の壁を屋外にオープンにしたもので、超高層物件向けの高速エレベーターとして国内で初めて開発しました。 また、同タワーでは一度に多くの方が利用できる大容量の高速エレベーターが求められ、当社として定員75名と国内最大となる高速シャトルエレベーターを開発したものです。
【屋外形展望エレベーター開発の背景】
屋外形展望エレベーターは海外ではいくつもの事例がありますが、従来、わが国の旧建築基準法(注)では、囲いの無いエレベーターは大臣が認めた場合を除き基本的には認められていませんでした。
(注)旧建築基準法施行令第129条の6 エレベーターの昇降路の構造第三号「昇降路の壁又は出入口の戸は、不燃材で造り、又は覆うこと。」
当社としては、エレベーターの運行を外部や内部から見られるオープンタイプ(シャフトレス)エレベーターを国内の建築物でも実現したいというニーズに応えるため、本製品については2000年3月に「六本木一丁目西地区第一種市街地再開発事業B−1工区に設置する屋外に面する昇降路壁のないエレベーター(個別評定)」として(財)日本建築センターの昇降機性能評価を受け、2000年5月31日付けをもって大臣認定を取得し、法的な面をクリアしたものです。 なお、建築基準法は2000年(平成12年)6月1日に改正され施行されましたが、合わせて出された平成12年建設省告示第1413号「特殊な構造又は使用形態のエレベーター及びエスカレーターの構造方法を定める件」において、オープンタイプエレベーターとして条件に適合すれば設置できるようになりました。
【新製品の概要と特長】
屋外形展望エレベーターは、昇降路壁が無くエレベーターの乗りかごが直接外気に晒される完全屋外形です。建物外観を際立たせる存在として利用され、かつ眺望にすぐれた縦の交通機関として海外などでは設置例もありますが、本製品は165mの高揚程で360m/分の高速を実現した屋外形展望エレベーターです。
大容量高速エレベーターは、地下鉄「六本木1丁目」駅改札口に隣接する1階から7階および24階スカイロビーを速度240m/分で結ぶ、高速シャトルエレベーターとして設置されており、24階スカイロビーから高層部ローカルエレベーターへ乗替えることで利用者は各目的階へ移動できます。
【主な技術】
各エレベーターは、次のような新技術の開発と応用により製品化を実現致しました。
<屋外形展望エレベーター>
- 風対策
建物および昇降路回りの風洞実験を行い、風によるエレベーターへの影響を把握しました。風の影響によるロープの挙動解析の結果、強風が吹き続けることで生じるロープの揺れを抑え、昇降路機器への引掛かりを防止するための「ロープ振止め装置」を全行程に3カ所設けました。また、かごに作用する風の力を考慮した横揺れ解析を実施して、ローラーガイドの特性を決定し良好な乗心地を実現しています。 - 防水・防錆対策
屋外腐食環境にかご等が晒されるため、各機器には重防食塗装やステンレス材の使用など適切な防錆処理を行っています。また降雨・降雪時にも乗りかご内や搭載電気機器および建物側乗場に雨水が浸入しないよう防水構造のかご、ドア装置を開発しました。扉駆動装置を含め防水外装パネルで覆う構造をかごに採用、あいじゃくり構造・防水パッキン・シーリングなどの組合わせによって水滴浸入防止対策を行っています。また、最上階は昇降路を覆う構造にし、悪天候や夜間、エレベーターを使用しないときに待避させるようにしています。 - 安全システム
屋外形エレベーターでは、乗場敷居とかごの敷居の隙間から乗客が誤って物を落とした場合、エレベーターの走行エリアの外に物が落下し、2次災害の危険性があります。そのため、2カ所ある停止階のうち最上階の乗場直下に「落下物防止装置」を設け、万一の事故を未然に防ぐ機能を有しています。一般のエレベーターでは、フェッシャープレートと呼ぶ金属製などの板でかご敷居先端と乗場側壁との隙間を125mm以下とし、乗客がかごドアを万が一開けることがあっても転落しない対策をするよう法令で定められています。本エレベーターでは、乗場側の壁が建物の構造上全く無い部分があり、フェッシャープレートを設けることができないため、乗場にかごが着床していない時はかご内からかご戸を開くことができないようにする「かご戸ロック装置」を設けています。 - 自然環境に対する運行管理
屋外であるため、四季折々の自然環境の変化は、エレベーターに直接影響します。このため、各種管制運転を行い、エレベーターの保全および乗客の安全を確保しています。強風管制運転 : 瞬間風速15m/s(地上200m相当)以上の時、180m/分へ減速運転します。瞬間風速20m/s(地上200m相当)の時、機器の保全および乗り心地確保のため運行停止します。 降雨雪時運転 : 雨・雪が降っている場合、エレベーターの利用が無い時は、エレベーターを最上階に待機させかごが雨や雪さらしにならないようにします。 雷管制管理 : 雷が接近している時はかごへの落雷を防止するため運行を停止します。 - その他
昇降路をオープンにしたことで、一般の展望エレベーターのように目の前を建物内のガラスなどが遮ることなく、乗客は眺望をお楽しみいただけます。かご内の展望ガラスは、液晶ガラスを使用することで、透明とくもりの状態を選択することが可能となっています。
<大容量高速エレベーター>
- 駆動システム
75人の定員を速度240m/分で輸送するため、大容量の二巻線式永久磁石同期電動機(PMSM)とツインインバーター駆動制御方式を採用しました。かごはFEMによる解析を行い高剛性確保と軽量化を実現しています。 - 安全システム
高速・大容量のかごを非常時にも安全に停止させるため、かごの上下に非常止め装置を設置(一般エレベーターは、かごの下部のみ)するダブル・セフティ方式を採用しています。
また、7階から24階の吹き抜け構造に隣接しているため、屋外形展望エレベーターと同様、「落下物防止装置」と「かご戸ロック装置」を設けています。 - 展望かご
設置されている4基のうち2基は昇降路が建物壁面(ガラス)に面している展望エレベーターです。かご背面および側面ガラスは腰高より天井面までと極めて大きなものとなっています。
また4基とも、かご扉前面が建物内吹き抜け部分に接しており、かご扉も大型ガラスで構成され開放感を高めています。 - インフォメーションシステム
新たに開発されたエレベーター・インフォメーションシステムを設け、乗客が快適に利用できるようにしています。
かご内に設置した15インチ形液晶ディスプレイに、階床・方向表示などのエレベーター情報だけでなく、DVDなどの動画や静止画、建物側からのメッセージを一度に表示する事ができます。