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よくわかるエレベーターと建物のこと

大型マンション「ニュートンプレイス」のゆとり空間を支えるエレベーターサイネージ

乗車中のちょっとした「情報のスキマ」を埋めるエレベーターサイネージの導入が進んでいますが、どのような形で運用がなされているでしょうか。今回は東京湾岸エリアの大型マンション「ニュートンプレイス」へのサイネージ設置事例をご紹介するとともに、今後期待されるコンテンツについてみていきます。

東芝エレベータが提供するエレベータサイネージ

 看板やポスターに代わり、ディスプレイやプロジェクタを使って情報や広告を投影する「デジタルサイネージ」の普及が急速に進んでいます。東芝エレベータも大日本印刷(DNP)とともに、2021年10月よりDNPサイネージ配信管理システム「SmartSignage」を用いたエレベーターサイネージ運用を始めています。駅や街路に設置されたサイネージと異なり、エレベーター内サイネージはある程度属性が限定された利用者が繰り返し乗車し、さらに一定時間その場にとどまってサイネージを見ることになります。このため利用者が求める情報や高い効果が得られる広告など、効果的な配信を行うことが期待され、2023年11月時点で2900台が稼働しています。

ニュートンプレイス
理事長
宮田 高道さん

 サイネージの機器設置は東芝エレベータが担当、DNPがコンテンツ作成および広告集稿などを行なっています。サイネージ画面A4パソコンとほぼ同サイズの15.6インチで、左上のメイン画面に情報コンテンツや広告など、右側のサイド画面には静止画で天気や花粉情報を表示。下部のフッター画面にはニュースなどのテキスト情報を掲載する3分割構成となっています。広告を中心としたサイネージでは、東芝エレベータがサイネージを設置し、貸し出す契約となっているため導入や運営にあたっての施設側コストは不要。サイネージの電気使用量だけで情報配信を行うことができます。
 サイネージにはカメラが搭載されていて利用数や視聴人数、おおまかな年齢、性別などの属性を把握、最適な広告やコンテンツが配信できるようになっていますが、カメラ画像は個人を特定しない形でテキストデータへと変換されています。画像の録画や保存は行わず、メモリ上からも処理終了後直ちに削除されています。

エレベーターサイネージを設置した大型マンション「ニュートンプレイス」

 再開発が進む東京湾岸エリアの中で、ファッションやグルメなど商業施設に加えてキッザニア東京などレジャー施設も建つことで注目を集めている豊洲。格段に暮らしやすくなったこの豊洲エリアに建つ総戸数989戸の大型マンションが2003年3月に竣工した「ニュートンプレイス」です。
 100㎡以上が基準の室内専有面積と居住者専用の広大な中庭による「ゆとり」のリズムを最大限に活かしたニュートンプレイスですが2021年12月、当時の理事長が「住民向け情報公開に役立てば」と、17台設置されている東芝エレベータ製エレベーター全基にエレベーターサイネージの導入を決定しました。東芝エレベータによる施工は非常にスムーズに進み、マンション管理組合側の準備作業などはほとんどなく、住民からみると「いつのまにかサイネージが付いていた」といった形で運用が始まりました。

東芝エレベータ社製エレベーターは17台設置されており、エレベーターサイネージもすべてのエレベーターに設置されている。

繰り返し見ることで記憶に残るコンテンツ

 現在、ニュートンプレイスのメイン画面コンテンツは、ニュースや広告、占いやクイズのほかに自治体からのお知らせや、防災情報などが配信されています。防災情報は「どのように水を備蓄するか」「災害が発生した時にはまず何をすればいいか」など繰り返し見ていただくことで、記憶に定着することを目的としています。
 広告は現在、全国規模のものが主となっていますが、今後サイネージの設置を広めていく上で、近隣商圏からの広告も表示できるよう対応を進める予定となっています。
 コンテンツについては要望に合わせた柔軟な運用を目指しています。例えば画面右側の天気予報表示エリアについては「警報や注意報などの気象情報を映してほしい」という要望を受け、さまざまな情報が表示できるよう改良が行われています。

画面は動画で様々な情報を届けるメイン、気象情報などを配信するサイド、一行ニュースを配信するフッターの3つに分かれている。将来的にフッターとサイドで住民向けコンテンツを配信することも予定されている。
右下のQRコードからはカメラから取得した利用者画像の利用方針にアクセスできる。

「見ていて楽しい」と住民評価はおおむね肯定的

 サイネージに関するニュートンプレイス住民の評価はおおむね肯定的なものとなっています。管理組合の宮田理事長によると「2022年5月に行われた住民アンケートでは全体のうち普通・満足・とても満足が66%で、『見ていて楽しい』『天気情報は役に立つ』など、肯定的な意見が多かった」といいます。帰宅時に表示される「おかえりなさい」メッセージに癒される、コンテンツ配信待ち時間に表示される鳥の動画を子どもたちが楽しんでいるといった声も寄せられています。
 占いも人気コンテンツの一つです。「『今日の運勢は』と楽しみにしている住民の方がいらっしゃいます。もちろん『見ない』という方もいらっしゃるのですが、占いはやはり人気がありますね。現在は運勢一位の星座が表示されるのですが、全星座一気に出してほしいという声もでています」(宮田理事長)

お客様のご要望に合わせて機能開発が進められるエレベーターサイネージ

 今後求められるコンテンツについて、「流れてほしいのは地域ものですね。地域のニュースが増えてほしい」という宮田理事長の言葉通り、ニュートンプレイス住民アンケートでもエレベーターサイネージには地元の広告やニュートンプレイス独自情報の配信を求める声が上がっています。
 他にも「張り紙を廃止してデジタル化希望。紙の無駄」「デジタルサイネージに管理組合からの情報やお知らせ、募集などを掲載してほしい」といった声も出ています。こうした要望を受け、東芝エレベータでは現在住民向け情報コンテンツや地域性の高い広告などが掲載できるよう情報発信機能の開発を順次進め、機能追加の際にはその都度アナウンスを行なっています。お客様のご要望に合わせて進化を続けるエレベーターサイネージの今後に期待が高まります。

現在はエレベーターサイネージの下に地元スーパーのお買い得情報やイベント告知が紙で張り出されているが、将来的にこうした情報もエレベーターサイネージで配信できるようになることが期待されている。

ニュートンプレイス

総戸数「989戸」の大規模分譲マンション。サウスコート・ノースコートからなる「ニュートンプレイス」は、敷地面積約3万8千㎡、室内専有面積100㎡以上を基準にした広大な面積を活かした広々とゆとりある快適な暮らしが特徴。敷地を住棟と塀で囲んだ上で4か所の出入口にオートロックを設置し、24時間有人管理体制で居住者の安全に配慮している。
住所:東京都江東区塩浜1-4-33
施工:2003年3月5日

次回は「エレベーターを支えるロープ(仮)」です。
乞うご期待!