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よくわかるエレベーターと建物のこと

デジタルサイネージで
エレベーター内を快適情報空間に

看板や紙のポスターがデジタルサイネージと呼ばれる電子看板へと置き換わる動きが進んでいますが、デジタルサイネージにはどのような特長があるのでしょうか。今回は東芝エレベータが開始した「エレベーターサイネージ」のサービスを紹介するとともに、デジタルサイネージのもつメリットに迫ります。

ポスターや看板からの置き換えが進むデジタルサイネージ

用途に合わせた様々なデジタルサイネージ

 なにかと手持ち無沙汰になりがちなエレベーターでの移動時間。とはいえわざわざスマホを取り出してニュースサイトにアクセスするには少し時間がたりない。そんなちょっとした「情報のスキマ」を埋める便利なディスプレイ、「エレベーターサイネージ」のサービスが始まりました。街のあちこちで普及が進み、最近耳にすることも目にすることも多いデジタルサイネージ。いったいどんな製品があって、どのように活用されているのでしょうか。
 デジタルサイネージとはディスプレイやプロジェクタを使って情報や広告を投影する仕組みで、ディスプレイ技術の発展にあわせて従来の看板やポスターに代わって急速に広まっています。デジタルサイネージは、直訳すると「電子的な看板」「電子的な標識」といった意味になるのですが、屋外の広告看板にとどまらず、ショッピングモールや駅、大学やホテル、病院などさまざまな場所で広く使われています。数十メートルを超える広告用パネルから、タクシー車内などで用いられるタブレットサイズのものまで、用途に合わせてさまざまな製品やサービスがリリースされています。

約縦4m×横40mと地下施設において日本最大級のサイズを誇る
「Umeda Metro Vision」
画像提供:Osaka Metro

デジタルサイネージのメリット

 デジタルサイネージには、動画が表示できることや、パネルが発光することで暗いところでも目立つなどの特長があります。しかし、なんといっても最大のメリットはコンテンツの更新が容易であることです。電車内の吊り広告も、電子ペーパーを用いたデジタルサイネージを使えば、手間と時間のかかる手作業での入れ替えが不要になります。
 デジタルサイネージを大きく分けると、ディスプレイ単体で動作するスタンドアロン型とネットワークを介してコンテンツを配信するネットワーク型の二つがあります。スタンドアロン型でもUSBメモリなどの挿し替えなどで簡単に表示内容を更新することができるのですが、ネットワーク型デジタルサイネージは、リモートでのコンテンツ配信が可能なため、多数のサイネージの表示内容を施設の状況に合わせて一気に更新するなど、さらにスピーディで柔軟性の高い運用が可能です。

デジタルサイネージは更新が容易で、複数の広告を瞬時に入れ替えることができる。

デジタルサイネージはピンポイントで最新情報を届けることが可能

設置場所に合わせた柔軟な広告運用

 デジタルサイネージはウェブサイトやテレビ放送と異なり、設置場所がそのまま閲覧場所になります。マンションエントランスに設置されたサイネージはマンションの住人や来客が、百貨店に設置されたサイネージは商品購入を目的に来店したお客さんが目にすることから「居住者向け」「百貨店来店者向け」など、それぞれ訴求対象に適合した情報をピンポイントで流すことができます。また、鉄道駅周辺の商業施設は、駅に設置されたデジタルサイネージに広告を出すことで大きな広告効果が期待できます。さらに紙のポスターと違って更新が容易なので、ランチ客メインの飲食店は昼間の時間帯、バーや居酒屋は夕方以降など、時間を分けて一つのサイネージに異なる広告を出すような運用も容易です。

広告以外でも活躍するデジタルサイネージ

 デジタルサイネージの用途は広告だけではありません。施設利用者に向けた掲示板や案内標識などの分野での利用も進んでいます。工事現場や工場などでは、その日の天候や気温、業務内容に合わせた注意喚起が可能です。商業施設の案内サインも、時間によって閉鎖される出入り口や店舗の営業時間に合わせた表示を行うことができます。通常は広告を掲載している駅などの大画面サイネージは、災害発生時には非常口への誘導やリアルタイム災害情報を表示する画面に切り替えるなどの運用も可能です。
 デジタルサイネージではこうしたリアルタイムコンテンツ配信に加え、双方向通信も注目を集めています。タッチパネルで言語を選択することによる多言語化や、AI認識で周囲の状況や閲覧者の属性を把握して、適切な情報を表示するなどの技術も次々と実用化されています。


熱中症注意喚起ボード。
数字およびインジケーター(矢印)表示部に電子ペーパーを使用している。
画像提供:大日本印刷株式会社(DNP)
https://www.dnp.co.jp/biz/solution/products/detail/1189608_1567.html

銀座三越の多言語化対応デジタルサイネージ
画像提供:株式会社Will Smart
https://willsmart.co.jp/work/digitalsignage/20190601/

エレベーターにデジタルサイネージを無料で提供

エレベーター向け広告配信システムを共同開発

 2021年10月、東芝エレベータは大日本印刷(DNP)とともに、DNPサイネージ配信管理システム「SmartSignage」を用いたエレベーターサイネージの運用を開始しました。東芝エレベータはサイネージ機器設置を、DNPはコンテンツ作成および広告の集稿などを担当。マンションやオフィスビル、商業施設や公共機関などに向け2022年度末までに5000台の導入を目指しています。
 不特定多数が歩きながら見る駅や街路のサイネージと異なり、エレベーターはある程度属性が限定された利用者が一定時間その場にとどまってサイネージを見上げるため、高い広告効果を得られると考えられます。その一方でエレベーターは利用者によって滞在時間が異なるため、さまざまな情報を瞬時に得られる工夫も必要になります。そこで、エレベーターサイネージではコンテンツの特性に合わせ、画面を3分割表示して情報提供しています。メインコンテンツの動画とともに、静止画で天気を画面右側に表示。さらに画面下部にはニュースなどのテキスト情報を掲載しています。
 将来的には、エレベーターの点検日や施設からのお知らせなどもテキスト情報として掲載できるよう、コンテンツの拡充を計画しています。


エレベーターサイネージの導入イメージ

SmartSignageの運用イメージ
画像提供:大日本印刷株式会社(DNP)

利用者の属性に合わせた広告の提供を目指す

 もうひとつの特長は利用者に合わせた最適なコンテンツ配信です。サイネージにはカメラが搭載されていて、サイネージにインストールされたアプリにより個人を特定することなく人数や年代、性別などの利用者の仮想的な属性を把握することができます。このデータに合わせて最適な広告やコンテンツを配信することが可能です。
 広告を中心としたビジネスモデルでは、東芝エレベータがサイネージを設置し、貸し出す契約となるため、施設側の導入や運用のコストが不要。既存のエレベーターにも後付けで導入でき、サイネージの電気使用料だけで手軽に始めることができます。
 エレベーター内を快適情報空間に変えるエレベーターサイネージ。今後の普及が期待されます。

次回は「磯達雄・宮沢洋が送る名作映画・ドラマの隠れた「主役たち」(第2回)」です。
乞うご期待!