真栄マンション元塩 名古屋市南区
マンションはエレベーター以外にもさまざまな修繕を必要としているため、住人全員の合意を得ることは簡単ではない。真江マンション元塩は、自治会の会長が住人たちの意見を取りまとめてリニューアルを成し遂げた。
エレベーター
マンション
ロープ式
住宅用
準撤去
仕様
物件名 | 真栄マンション元塩 |
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住所 | 名古屋市南区元塩町2-15-2 |
概要 | 1982年竣工、10階建て、29戸。 JR東海道本線笠寺駅からタクシーで10分ほどの元塩町にあり、周辺には工場や数多くのマンションが立ち並ぶ。広い公園に面した快適な住環境に恵まれている。 |
どの修繕を優先するか
笠寺駅周辺は、トヨタをはじめ大手メーカーの工場が集まる地域。その一角にある元塩町には、1980年代初頭に建設された分譲マンションが何棟も建っています。
真栄マンション元塩も1982年に建設された分譲マンションで、地上10階建てに29戸が入居しています。築28年を迎えることもあり、配管の修繕やエレベーターのリニューアルが7~8年前から議論されていました。
エレベーター事故の報道を聞き、エレベーターのリニューアルをしなければならないと考えていました。お金のかかることですが、命には代えられません。3年前に管理組合の役員と自治会長を任され、なんとか任期中にリニューアルを決めたいと考えて住人の了解を得ました。
■井上 勝彦氏
真栄マンション元塩 管理人
防犯カメラでいたずらがなくなった
実は当時、毎日のようにエレベーターの中に水を撒くいたずらが起こっており、不安になった住人たちは防犯カメラの設置も強く望んでいました。
当初は予算もないので、防犯カメラの追加と制御リニューアルを考えていました。しかし改正建築基準法の施行にともなう新安全基準に対応した新しいエレベーターが発売されることがわかり、準撤去リニューアルで最新の安全装置が付いたエレベーターにすればあと20年は持つだろうと予測できました。新法で定められたブレーキの二重化のほか、オプションだった機能も標準装備しました。
車いすの利用者や高齢者がいることから、管理組合として工期の短縮を求めつつ、車いすの利用者には工事の間親族のもとで生活してもらえるようお願いしました。
工事完了後、防犯カメラのせいか水撒きもピタリとなくなりました。かご内が明るくなって、音も静かになったと住人たちは喜んでいます。
■エレベーター・かご室
光天井は大型のLED式照明を導入し、明るさと消費電力が大幅に改善した。また、防犯カメラの設置により、悩みの種になっていたいたずらがなくなった。
■エレベーター・1階のりば
今回のリニューアルに合わせて、扉および三方枠を再塗装した。
■エレベーター・巻上機
新安全基準への対応にともない、ブレーキを二重化して万一の駆動装置の不具合に備えている。
ここがポイント
新安全基準対応でエレベーターの安全性が高まる
水を撒くいたずらが頻発していたことで、エレベーターに防犯カメラを設置しました。防犯カメラは建物入口にオートロックを装備するより安価で防犯効果も高い対処法です。
分譲マンションの場合、管理組合やエレベーター管理者がモニターする際にプライバシー問題も懸念されます。普段は記録画像をチェックせずに、問題が生じたときだけ第三者や警察などの立ち会いの下で確認する方針が賢明です。防犯カメラを導入する際は、管理組合の総会で記録画像の処理まで合意を取っておいた方がいいでしょう。
新安全基準に適合したエレベーターを導入したリニューアルでした。動作音が静かになり、安全性、防犯性、さらにLED照明による省エネ効果もあり、マンションの居住性が高まりました。
分譲マンションを自主的に管理する場合、管理組合が修繕などを計画しながら進める必要があります。その際に(財)マンション管理センターにも相談窓口や修繕計画の支援サービスがあるので、活用してみてはいかがでしょうか。
メーカーの立場から
新安全基準に対応したエレベーターのリニューアルは全国でもほとんど例がない。エレベーターの完全停止期間を極力短くしながら工事を遂行した。
新安全基準で戸開走行保護装置も標準装備
新しいエレベーターは、新安全基準で定められたブレーキの二重化や、扉が開いたままでの走行を防ぐ「戸開走行保護装置」、「P波感知器付地震管制運転機能」などを標準で搭載しています。さらにユニバーサルデザインを取り入れた見やすい操作盤や大型の液晶インジケータなども採用しました。インジケータはお年寄りの方でも見やすく、扉の開閉や地震の発生なども音声で知らせてくれます。また天井ライトは蛍光灯からLED照明に替えて省エネ性能も高めました。
大幅に安全性能を高める新安全基準対応の準撤去リニューアルにはコストもかかりますが、住人のみなさんは将来を見据えて実行しました。
いたずら対策として、かご奥の天井付近に専用のドーム型の防犯カメラを設置しました。車いす利用者や高齢者もいるため、扉に組み込まれた複数の赤外線センサーで乗り降りを安全にする「多光軸ドアセイフティ機能」も追加採用。車いすでも操作しやすい低位置に副操作盤を設置し、手すりも設置しています。
新安全基準リニューアルのモデルケース
準撤去リニューアルは、エレベーターの完全停止期間が長くなります。当時は新安全基準対応のブレーキの設置が全国的にも前例がなく、工事を慎重に進める必要がありました。施主が工事に対して非常に協力的だったこともあり、部分停止が1週間、完全停止が1週間という最短工期で完了しました。
工事は基本的に朝9時から夕方6時まで。完全停止の時は騒音に配慮しながら夜遅くまで作業を行いました。