林友ビル(日本森林林業復興会) 東京都文京区

東京ドームの近くにある日本森林林業振興会は、29団体のテナントが入る事務所ビルとしても機能している。正面玄関奥にある2台のエレベーターのうち、1台がストップしたことを機に緊急でリニューアルが行われた。

  • エレベーター

  • オフィス

  • ロープ式

  • 乗用

  • 制御

林友ビル(日本森林林業復興会)

仕様

物件名

林友ビル(財団法人日本森林林業振興会)

住所

東京都文京区後楽1-7-12

概要

1946 年設立以来、森林利用者へのサービスや森林調査などを通じて森林・林業の振興に寄与してきた。2008 年10月には財団法人林野弘済会から現名称に改称。同会の組織するグリーン・サークルの会員は現在860no名、自然を愛する人たちが会員となっている。

森林と林業を支援する振興会

 財団法人日本森林林業振興会の本部は、東京ドームにほど近い「林友ビル」にあります。地上6階、地下1階のビルには本部の他に29団体のテナントが入居しています。多くは森林関係の公益法人ですが、なかには民間企業もあります。1974年の落成以来、35年間にわたって玄関奥に設置された2台のエレベーターが人々を運び続けてきました。
 エレベーターのリニューアル時期は設置後25年がひとつの目安。このビルには24時間体制で管理者が常駐して2週間ごとの定期メンテナンスを続けてきたため、閉じ込めなどの問題は経験ありません。それでも振動や段差などの経年劣化による問題は目に付き始めていました。テナントからかご室の暗さや停止時の振動に不満が出ていたものの、リニューアルの予算が確保できていませんでした。2台設置されているので、「1台が停止しても、もう1台がある」という安心感もあってリニューアルを先延ばしにしていました。

萩原 宏氏

■萩原 宏氏
財団法人 日本森林林業振興会 副会長

木のイメージでリニューアル

 しかし実際に1台が停止する事態が起きたことで、危機感が高まりました。テナントからもクレームがあり、特別に予算措置を行って2台同時にリニューアルすることに決めました。
 リニューアル工事は1台当たり12日間をかけて完了しました。工事に当たっての要望は、木を使うこと。そして見た目が一新されること。建築基準法の規定により、エレベーター周りに可燃材を使うことはできないので、エレベーターホール側ドアとかご室内に木目調の化粧シートを貼って天井の照明も交換しました。明るくて落ち着いた木目調は来客にもテナントにも好評です。
 かご室内には木製のテナント案内板があり、デザインに一体感があります。以前はかご室内に掲示物が数多く貼られていましたが、美観を損ねるので1階ロビーに掲示板を新設しました。今回のリニューアルは、日本森林林業振興会らしいイメージづくりにも寄与しました。

斉藤 正勝氏

■斉藤 正勝氏
財団法人 日本森林林業振興会 総務部長

エレベーター・1階のりば

■エレベーター・1階のりば
従来はステンレスをエッチング仕上げで装飾したホールドアだったが、リニューアル時に木目調化粧シート貼り仕上げに。フロアのイメージを一新した。

エレベーター・かご室天井

■エレベーター・かご室天井
左右隅2カ所に設置されていた照明を撤去して、新たに中央に設置した。照度が上がり、かご室内が明るくなった。

エレベーター・操作盤と階数表示パネル

■エレベーター・操作盤と階数表示パネル
階数表示パネルがデジタル式になり、操作盤も最新モデルと同じユニバーサルデザインになった。

ここがポイント
リニューアルの意図が明確なモデルケース

 玄関奥のエレベーターホールは建物の顔ともいえるスポット。今回のリニューアルでは、この顔をイメージアップすることができました。林業を支援する組織らしく、エレベーターホール側のドアを少し濃い目の木目調化粧シートで覆い、大理石の壁にうまくマッチさせています。エレベーターは2本の木が立っているようで、中に入ると明るい木目調の空間が開けるストーリー性もあります。かご室内は光天井で明るく、圧迫感がありません。
 快適性、乗り心地、安全性の向上、イメージアップ。制御リニューアルという最小限の改修で、コストと手間と時間をかけずに理想を実現したモデルケースです。エレベーターホールやかご室内のイメージアップは、テナントにアピールする上でも効果的といえるでしょう。

メーカーの立場から

ステンレス製のホールドアとかご室内に、あえて木目の化粧シートを貼ることで施主の要望に応えた。

ロビーに木が立つイメージを

 2台のエレベーターのうち1台が停止した原因は、経年劣化によるモーターの消耗でした。壊れたモーターを自社工場で修理しましたが、運転再開までには長い時間がかかりました。このトラブルをきっかけに、緊急措置として予算が計上されてリニューアルすることになりました。
 コストを抑えるために制御リニューアルを選択しましたが、イメージを一新したいという要望もあったので、かご室内とホール側のドアにも手を入れました。通常の制御リニューアルでは、操作盤を除いて既存の環境を温存します。しかし今回は巻上機、制御盤、操作盤とともに、かご室内の天井照明を交換し、かご室パネルやホールドアのパネルも変えることとしました。
 かご室内とホールドアのパネルに天然木を使いたいというご要望がありました。しかし法律上、エレベーターには難燃材料しか使えないため、木目調の化粧シートからお好みのデザインを選んで頂くことに。その結果、玄関から入ってくる人には木が2本立っているような印象を与え、落ち着きと暖かみがロビーに漂うようになりました。

目に見えない「安心」を強化

 かご室内の壁は、ホールドアと比べて少し明るめの木目調化粧シートを貼り、天井照明も替えて全体の照度を上げました。テナントビルなので平日の昼間は大きな音を出す工事を避け、そうした工事を日曜日に集中させました。
 1台当たりの工期は12日間という厳しいスケジュールの中、朝夕の通勤者に迷惑をかけないように工事を進めました。交通量の多い道路の交差点にあるビルなので、巻き上げ機の交換を行うクレーン車は夜間に出動させました。
 工事後は、乗り心地がよくなったと施主やテナントにも好評です。標準装備の地震時管制運転や故障時最寄階自動着床運転、24時間遠隔監視などの機能が付加され、目に見えない安全性も大きく進歩しました。

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