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永芳閣 富山県氷見市

氷見の新鮮な魚介料理で有名な「永芳閣」は、 1937年創業の老舗旅館。400年ぶりの大地震に襲われたが、エレベーターのリニューアルで地震時管制運転装置を装備していたおかげで被害が最小限で済んだ。

  • エレベーター

  • ホテル

  • ロープ式

  • 乗用

  • 制御

永芳閣

仕様

物件名

永芳閣

住所

富山県氷見市阿尾3257

概要

1937年に創業し、富山湾の魚が食べられる「魚めぐりの宿」として知られる旅館。女将の平田さんは自らブログも書いている。

地震に備えてリニューアル

 能登半島の玄関口にある氷見市は、寒ブリなど富山湾の魚介で知られる土地。「永芳閣」は1937年創業の老舗旅館で、手作り料理が好評です。
 旅館は「ホテル海光」(客室38室)と「旅館天遊」(客室19室)の2棟。1978年竣工の海光(5階建て)にある2台のエレベーターを2004年12月にリニューアルしました。同年10月に震度7の新潟県中越地震が発生したため、危機感を感じて「地震時管制運転装置」と「停電時自動着床装置」の導入を最優先。制御盤、モーターなどを交換する「制御リニューアル」を行いました。見た目にはわからなくとも、この決断が後に大きな意味を持ちました。

平田 淑江氏

■平田 淑江氏
永芳閣 取締役 女将

宿泊施設の根本は安心と安全

 リニューアルから2年が経った2007年3月25日。午前9時42分にマグニチュード(M)6・9の大地震が能登半島を襲いました。能登半島ではM7クラスの地震は過去400年間起きたことがなく、地元でも警戒感が薄れていた矢先の出来事でした。
 氷見市も震度5弱の揺れに襲われましたが、幸いにも永芳閣では施設への被害はなし。リニューアルしたエレベーターも地震時管制運転装置が作動して役割を果たしました。同日の午後早くには東芝エレベータも駆けつけて運転が復旧しました。
 エレベーターの閉じ込め発生を想定した救出訓練も受けていました。安全やリニューアルは、1回やったら終わりというものではありません。宿泊施設で最優先すべきは安心と安全だと再認識しました。

エレベーター・5階ホールとかご室

■エレベーター・5階ホールとかご室
かご室内は化粧シートのみを張り替え、光天井は既存のものをそのまま使用した。グレイの化粧シートが白い光天井とマッチしてシャープで清潔な印象を与える。

エレベーター・本館1階ホール

■エレベーター・本館1階ホール
インジケーター、のりばドアなどはリニューアルせず従来のものを使用している。

かご操作盤

■かご操作盤
リニューアルによりユニバーサルデザイン対応となった。ボタンの数字が立体的になっているため、視覚障害者のお客さまでも触れることでボタンの内容が理解できる。

ここがポイント
シンプルな内装を生かした旅館ならではのリニューアル

 2階の大広間に面したエレベーターホールに各階の案内を掲示し、リニューアルで張り替えたかご室の化粧シートはシンプルな印象。操作盤はバリアフリー対応になりましたが、手すりなどの設備は追加されていません。これはキャリーバッグの客様が広く活用できることを優先し、なおかつ仲居さんによるサポートが期待できる旅館ならではの設計です。
 制御関係のリニューアルは目に見える効果が少ないため後まわしにされがちですが、震災時の安全を第一に考えたリニューアルが事故を未然に防ぐ結果になりました。

メーカーの立場から

能登半島地震の対応に追われた北陸支店富山営業所。永芳閣でのリニューアルと地震対策について振り返る。

地震と停電の不安を解消

 5年ほど前に停電でエレベーターが止まったことがあり、停電時自動着床装置の導入を検討されていました。さらに新潟県中越地震が発生したことで、地震と停電対策を同時に導入することになりました。
 またエレベーターに少し段差が生じていたので、お客さまがつまずいて転ぶ不安の解消も目標になりました。設置後30年ですが手入れは行き届いており、制御盤やモーターなどを交換する最小限の制御リニューアルを行ってかご室の壁面シートを貼りました。
 宿泊客がいらっしゃる中で2台同時に工事する訳にはいかず、混雑する土日を避けるために1台目を2004年12月6~9日に実施。土日をはずして2台目を13~16日に工事しました。

東芝エレベータの地震対策

 東芝エレベータは、地震時管制運転中に安全装置が作動後、復帰を確認し再スタートする「リスタート運転機能」や、地震による停止後に診断運転を実施し自動的に仮復旧する「自動復旧運転装置」などを業界に先がけて発売してきました。また気象庁から配信される緊急地震速報を利用して、地震波が到達する前に最寄階に停止させる「緊急地震速報の利用」も開発しています。
 また「携帯電話を活用した昇降機保守支援システム」は、復旧などの作業ごとに開始および終了時間をQRコードで携帯電話から記録し、サービス情報センターで一元管理して迅速な出動指示などを実現します。携帯電話で復旧作業の位置情報を把握し、フィールドエンジニアを機動的に配置できるような指示・サポート機能も付加されました。
 さらに重要なのがP波感知器です。P波(初期微動)を感知した時点で、エレベーターのかご操作盤に「地震」と表示し、最寄階に停止してドアが開きます。P波は本震の5秒前に伝わるので、エレベーター内閉じ込めや、装置の損傷を防ぐ確率が格段に向上します。

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