ホテルサンルート彦根 滋賀県彦根市
大規模リニューアルによって、エレベーターの印象と乗り心地、社員のやる気まで向上
サンルートホテルチェーンは、"ビジネスホテル御三家"の一角をなす日本有数のホテルグループ。ホテルサンルート彦根は、観光需要を意識したエレベーターのリニューアルを実施した。
エレベーター
ホテル
ロープ式
乗用
制御
仕様
物件名 | ホテルサンルート彦根 |
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住所 | 滋賀県彦根市旭町9-14 |
施設 | 客室/シングル47 室、ツイン26 室 宴会場/ 6 室 館内施設/レストラン、バー、コインランドリー、ベンダーコーナーなど |
概要 | 1984年1月20日創業。JR琵琶湖線彦根駅からは徒歩1分、名神高速道路彦根インターチェンジからは車で5分の距離という好立地を誇る。 |
こだわりを持って臨んだエレベーターのリニューアル
彦根を代表する宿泊施設として、さまざまな会合や宴席の場としても活用されてきたホテルサンルート彦根。開業から33年が経ち、3年がかりで客室、ロビー、フロント周りを中心に大規模なリニューアルを実施しました。その最後の仕上げとなったのが、館内に2台あるエレベーターのリニューアルでした。
今回の工事で、以前のままなのはかご室本体だけ。制御盤、巻上機、ロープといった構造の主要部分はもとより、直接顧客の目に触れるドアやかご室内の壁パネル、操作盤、天井や床の意匠までが大幅に変わりました。
宿泊されるお客様も、会合や宴席にいらっしゃるお客様も、必ずエレベーターに乗り込んで移動します。だからこそ内装は黒というシンプルな色をベースに、柄の濃淡を使うことで深みを出した意匠を採用しました。
■田井中 徹氏
株式会社ティーアールシー 代表取締役
リニューアルは社員のやる気にも直結
日本を代表するビジネスホテルチェーンの一員とはいえ、彦根市は観光資源が豊富。リニューアルの大きな目的の1つは、観光需要をメインとしたホテルに転換することでした。観光客需要による収益アップ分をサービスや施設の品質向上という形で顧客に還元し、さらなる顧客の獲得につなげることが中長期的戦略となっています。
宿泊客が一番少ない時期は、新年の松が取れてから春の声が聞こえる前までの2カ月ほど。ただしこの期間にも宿泊客はいるので、前日のチェックアウトから当日のチェックインが始まる10~15時の間に工事を集中させました。
リニューアル後のエレベーターは、社員たちの間でも乗り心地が激変したと評判に。今までは機械音がして、停止時に小さなショックが感じられましたが、リニューアル後はどちらも解消されて宿泊客にも好評です。ホテルのイメージアップは、社員のやる気にもつながっています。
入口を入ると、フロントまでの動線がまっすぐに伸びており、 エレベーター乗り場にもアクセスしやすい。
ホテルに足を踏み入れた顧客の気持ちを和ませてくれる、柔らかく明るい空間が魅力的だ。
ホテル1Fのエレベーター乗り場。扉には、黒地のなかに濃淡で浮かび上がる文様が施されている。
黒とシルバーのコントラストがシックな上品さを醸し出す。
専門家の声
大胆なチャレンジが印象的な移動空間に結実
大規模マンションでの一斉リニューアルでは、積み立て金や修繕計画はもちろん理事会の活動が重要になります。
オフィスビルと異なり、マンションはあらゆる年代の人たちがさまざまな時間帯で活動する場所。住人の意思統一の難しさはもとより、工事内容の周知徹底といった事務的な伝達も大変です。任期制の理事会も多いため、リニューアル工事が終了するまでに理事会が代替わりして、前任者からの引き継ぎがうまくいかない事態も想定されます。
今回の事例では、理事会に前任の理事が残って相談役を務めていたことで、理事会の運営ノウハウがスムーズに引き継がれていました。リニューアル工事の際に理事会から手厚いサポートが得られたのも、このような充実した管理体制の賜物です。
建築家 株式会社ディーディーティー 一級建築士事務所 武富 恭美(たけとみ・やすみ)氏
メーカーの立場から
お客様のご要望に応えるためにホテルを回って研究
今回のリニューアルは、かご室内部と1階の扉部分の意匠がポイント。大阪や京都にあるホテルのエレベーターを調査して、意匠から受ける印象を研究しました。
その結果、強さと上品さを併せ持つ「黒」をベースにし、モノトーンにこだわって展開させるというアイデアが生まれました。そこにエントランスの照明周りや階段に利用されている文様を合体させて個性を打ち出します。黒地のなかに凹凸の文様が浮かび上がる現在の意匠が生まれました。
お客様の業態を考慮して工事日程を段取り
ホテルの大規模リニューアルの最後を飾る2台のエレベーターのリニューアル。どんな時期にも宿泊客がいるため、工事中でも1台は稼働し続けなければなりません。また宿泊客が増える観光シーズンは避けるべきです。2月から桜の開花前までの期間で、宿泊客の数が比較的少ない午前10時から午後3時までの間に作業を集中させました。
クレーン車を3台手配して効率よく作業にあたりました。機器搬入の当日に大雪に見舞われるなどの困難もありましたが、結果的に工事は予定どおり完了。リニューアルされたエレベーターは、ホテルの従業員や宿泊客からも高く評価されています。