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ホテル大松荘 宮城県宮城郡

日本三景の松島海岸で、1970年に創業したホテル大松荘。油圧式エレベーターは稼働30年を越え、繰り返し発生する地震への危機感から準撤去リニューアルを決断した。

  • エレベーター

  • ホテル

  • 油圧式

  • 乗用

  • 準撤去

ホテル大松荘

仕様

物件名

ホテル大松荘

住所

宮城県宮城郡松島町松島字町内25

概要

JR松島海岸駅から徒歩2分、名所や遊覧船の発着所までも徒歩5分という絶好のロケーション。鉄筋5階建ての41室に196人を収容するの大松荘は、塩釜港直送の磯料理が自慢だ。

繰り返し起こる地震への危機感

 日本三景の松島海岸には景観を重視する規制も多く、屋上にエレベーター用の機械室を設置できません。1970年創業の大松荘は、2回目の増改築を行った1979年にエレベーターを導入。機械室を地下に設置できる油圧式を採用したものの、使用年数を重ねるうちに問題が生じてきました。
 動作音や振動が気になって寝つけないという宿泊客からの苦情。段差による車いす利用者や高齢者の不便。そして何よりも地震への不安が高まってきました。
 これまで宮城県沖地震は25~40年という短い周期で発生し、1978年にもマグニチュード7.4の地震で死者28名の被害をもたらしていました。地震が起きるたび、夜中であっても従業員全員でエレベーターの閉じ込めが起きていないかを確認してきました。10分の閉じ込めでも報道される時代なので、1回の事故で商売ができなくなる恐れも感じていました。
 また油圧式エレベーターは作動油を必要とするため、作動油が漏れると土壌汚染の恐れもありました。

小野 明文氏

■小野 明文氏
ホテル大松荘 代表取締役

安心・安全は一日でも早く買うべき

 油圧式エレベーターの準撤去リニューアルを決断し、最新型のマシンルームレスエレベーターを導入しました。
 この方式はシャフト内に制御盤も巻上機も収納するので、シャフト内の余裕が必要になります。大松荘では従来通りの9人乗りかご室を入れることができました。
 リニューアル後のエレベーターには、地震時や停電・火災時に最寄り階に自動着床する管制装置が付き、これまでずっと神経を使っていた確認作業から従業員一同が解放されて喜んでいます。 常連客にも「乗り心地がよくなった」「前より広く感じる」「明るくなった」などと好評です。
 そして目に見えるリニューアルは宿泊客にも安心感を与えます。ホテル業としては、買うことで得られる安心・安全は1日でも早く買うべき。リニューアルの資金調達の際、金融機関と相談したところ「安心・安全のための投資なら大歓迎です」と即座に了解してくれました。金融機関も、経営者の安全意識を評価する時代になったのでしょう。

エレベーター・1階ホール

■エレベーター・1階ホール
エントランスから見渡せる土産物スペースの奥にエレベーターは設置されている。

エレベーター・のりば

■エレベーター・のりば
リニューアルにあわせてバリアフリーに対応した。

ここがポイント
エレベーターの運用に重要なメンテナンス

 油圧式エレベーターは、工場など大容量を運ぶ必要がある場所で利用されています。乗用エレベーターとして設置される場合は、屋上に機械室を設けることが難しい建物で利用されてきました。
 ホテルは宿泊客へサービスを安定して提供するため、メンテナンスにも細心の注意が必要です。製造メーカーがメンテナンスを担当していれば、トラブルが発生した際にも部品調達などで素早い対応が可能になります。また、地震時管制運転などハードウェアとソフトウェアの両方が必要な緊急対応では、やはり製造メーカーによるメンテナンスに一日の長があるといえるでしょう。
 エレベーターにさまざまな機能が搭載されるようになった現在、メンテナンスもエレベーターの性能として考えられます。エレベーターのリニューアルを考える際には、エレベーターの性能を最大限に発揮するためにも運用やメンテナンスを含めて検討する必要があります。

メーカーの立場から

東北地方において初の油圧式エレベーター準撤去リニューアルを実施した大松荘。小野代表取締役の熱意が成功に結びついた。

社長の思いと提案が一致

 東芝エレベータ東北支社にとって、地震ほど心配なことはありません。特にホテルや旅館は昼夜を問わずエレベーターが稼働しているので、30年前の油圧式エレベーターは気になっていました。
 油圧式エレベーターのリニューアルには、安全対策以外にもさまざまなメリットがあります。第1に騒音や振動が少なくなること。第2に部品の調達が容易になるのでメンテナンスも迅速化すること。30年前の油圧式では部品の在庫も少なく、すでに製造中止の部品もあります。そして第3に電気代が節約できること。第4に大量の作動油の補充や交換が不要になって土壌汚染などのリスクがなくなることです。
 油圧式を全面撤去して最新型を導入する工事は、ホテルということもあって夜間や繁忙期を避け、 2週間の日中作業で完了しました。準撤去リニューアルとしては最短のスケジュールです。

明るくて静かなエレベーター

 工事の時期は予約状況などから判断して、団体客やお年寄りのお客さまが多い繁忙期を避けて4月初旬にしました。もう一つの問題はシャフトのサイズです。余裕がない場合は、制御盤や巻上機を入れるためにかご室を小さくしなければなりません。幸いシャフトには余裕があり、かご室はそのままの大きさで使えました。
 工事で一番気を遣うのが撤去と作動油の抜き取りです。狭い場所もありましたが、なんとかクリアしました。導入後は、高齢の宿泊客やリピーターからも「明るくて音も静かになった」と好評のようです。

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