朝日プラザ千里住宅 大阪府豊中市
1983年に竣工した朝日プラザ千里住宅は、569戸に約2000人が暮らす大規模なマンション。25年目のエレベーター11台を一斉にリニューアルしようと、短期間での入れ替え工事を実施した。
エレベーター
学校
ロープ式
住宅用
準撤去
仕様
物件名 | 朝日プラザ千里住宅 |
---|---|
住所 | 大阪府豊中市上新田4-8 |
概要 | 阪急千里線南千里駅など3駅が利用できる分譲マンション。ゆったりとした敷地に4棟と駐車場がある。住人や管理組合の結束が強く、1987年には有志で敷地内に農園を開いた。バリアフリーやセキュリティも重視している。 |
リニューアル計画を6年前倒し
大阪府豊中市の朝日プラザ千里住宅は、閑静な住宅地の一角に建つ4棟の分譲マンション。10~14階建ての建物で569戸に約2000人が暮らしています。管理組合では長期修繕計画を5年ごとに見直し、外壁、給排水管、設備関係などの改修を行っています。
マンションとしての資産価値や生活環境を維持・向上させるには、エレベーター全11台のリニューアルという大事業を避けては通れません。1983年の完成以来、すでに四半世紀が過ぎていたたエレベーターの工事は当初2013年を予定していました。大きな故障はなかったものの、過去にエレベーターが途中で止まるトラブルがあり、エレベーターの閉じ込め事故などがマスコミを騒がせた影響も考慮して計画を6年前倒しにしました。
■川内 一誠氏
朝日プラザ千里住宅 管理組合法人 代表理事理事長
■秋元 教利氏
朝日プラザ千里住宅 管理組合法人 前代表理事理事長
住人へのサポートを組合が徹底
A・C棟はエレベーターが2台ずつ設置されており、1台を停止してもまったく使えなくなることはありません。しかしD棟は1台、B棟は各階2戸で1台のエレベーターを利用しているため、停止中は階段を使うことになります。上層階には高齢者や小さい子供も住んでいるため、リニューアルに不安を抱いていました。
工事期間短縮のために制御リニューアルと準撤去リニューアルを併用する案もありましたが、共益費の不公平感が出ないように11台全てを準撤去リニューアルにしました。
工事を短縮しながら、各棟ごとに住人向けの説明会を開いて全住人にアンケート調査を実施しました。日用品の運搬の手伝いや階段への椅子の設置などが決まり、地元スーパーとの交渉で自宅までの配送サービスも依頼。管理事務所に専用の相談電話を引き、管理組合のWebサイトで状況を逐次報告しました。
その結果、住民側から苦情や不満はなく、5カ月間という短期で工事を完了。新築マンション並みの最新機能となったエレベーターに住人は満足しています。組合と住人との信頼関係が深まり、リニューアルして本当によかったと思いました。
■津田 豊氏
朝日プラザ千里住宅 管理組合法人 前代表理事副理事長
■北野 伸也氏
朝日プラザ千里住宅 管理組合法人 代表理事副理事長
■エレベーター・C棟1階ホール
大型の防犯窓を採用し、かご室の様子が外からでも良く見える。また、1階ホールにはセキュリティ強化のための防犯モニターを設置している。
■エレベーター・B棟1階のりば
B棟のエレベーターは2戸で1台のエレベーターを使用しており、台数に非常にゆとりを持たせた贅沢な仕様になっている。
■B棟へのエレベーター搬入の様子
2007年10月に行われたB棟へのエレベーター搬入の様子。大型クレーンを使用するため、10台分の駐車場スペースを必要とした。
ここがポイント
リニューアル工事を円滑に進めた管理組合の体制
大規模マンションでの一斉リニューアルでは、積み立て金や修繕計画はもちろん理事会の活動が重要になります。
オフィスビルと異なり、マンションはあらゆる年代の人たちがさまざまな時間帯で活動する場所。住人の意思統一の難しさはもとより、工事内容の周知徹底といった事務的な伝達も大変です。任期制の理事会も多いため、リニューアル工事が終了するまでに理事会が代替わりして、前任者からの引き継ぎがうまくいかない事態も想定されます。
今回の事例では、理事会に前任の理事が残って相談役を務めていたことで、理事会の運営ノウハウがスムーズに引き継がれていました。リニューアル工事の際に理事会から手厚いサポートが得られたのも、このような充実した管理体制の賜物です。
メーカーの立場から
管理組合の理事たちと信頼関係を築き、短期間での大規模マンションにおける一斉リニューアルが成功。
運転停止時間の短縮が至上命題
大規模マンションの一斉準撤去リニューアルは、全国的にも珍しい事例です。住人の生活形態や年齢などもバラバラで、同時期のリニューアルは容易ではありません。
工事中の運転停止時間を短くするのが至上命題でした。569世帯もあって、いろいろな人がいるので調整が大変です。住人へのアンケート調査の結果、棟ごとに最適な停止時間を設定しました。
終日停止する期間なども含めて、エレベーターごとの停止・稼動のスケジュール表を住人に告知し、管理組合のWebサイトにも掲載しました。 50tの大型クレーンで屋上から機材を搬入するために駐車場10台分のスペースを使用。管理組合が事前に自動車を移動するよう住人に通知したり、万が一に備えてレッカー車の業者にまで連絡してくれました。
竣工パーティーで感謝状
トラブルひとつなく、工事は約5カ月で完了して最新型のエレベーターになりました。P波感知器付地震時管制運転、ドアの開閉の安全を確保する多光軸ドアセフティ、大窓仕様の防犯窓、1階ホールに設置した液晶モニター、視聴覚障がい者用の点字やオートアナウンスなどの機能を完備して、使用電気量も6割以上削減されます。
竣工後、管理組合は工事スタッフも招いてパーティーを開いてくださり、感謝状をいただきました。管理組合、住人、東芝エレベータが一体となったリニューアルでした。