小原産婦人科 三重県伊勢市
産院で37年間使ったエレベーターをリニューアル。振動、段差、騒音が解消し、患者や見舞客にも喜ばれている。
エレベーター
医療福祉
ロープ式
寝台用
乗用
準撤去
改築・改装と一緒にリニューアル
小原産婦人科は、地元で最古の産院のひとつ。4階建て13室の院内は築37年で老朽化が目立ち、35年間使用してきたエレベーターもリニューアルが必要になっていました。
エレベーターは分娩室の前にあり、主に分娩後の妊婦さんをストレッチャーで病室に移動させるために使用。旧式のため操作盤のボタンを押してもドアがなかなか閉まらず、動き出しと停止で振動が起きることから、分娩直後の傷に障ってしまうのではないかと心配になっていました。
停止時に生じる段差も、ストレッチャーの乗降時に衝撃を伝えていました。毎月の点検は欠かしていませんでしたが、モーターとワイヤーの騒音も気になっており、患者さんはもちろん見舞い客にも利用してほしいという思いからリニューアルを決意しました。
■小原 茂氏
小原産婦人科 院長
■中村 泰矩氏
中村建築設計事務所 所長
段差・振動・騒音のない快適さ
2004年3月から18日間で「準撤去リニューアル」を完了。グレーのドアも院内に合わせて濃いピンク色に変えました。段差もなくなり、振動も騒音も解消。新しいエレベーターを利用する見舞い客も増え、車いすをご利用のおじいちゃんが、毎日孫の顔を見に来るようになりました。リニューアルでこれほど安全・快適になるとは思いませんでした。妊婦さんの負担も減らすことができて、本当によかったと感謝しています。
■エレベーター・1階ホール
手術後の患者さんを病室まで運ぶため、手術室の前にエレベーターが設置されている。
■エレベーター・かご室内部
病院・福祉施設向けの仕様のため、天井のライトが小さく、ストレッチャーがそのまま搬入できる奥行きになっている。
■エレベーター・3階ホール
病室へ向かう廊下の中央に設置されており、壁にあわせて明るいピンクで塗装されている。
ここがポイント
エレベーターのリニューアルで、利用者へのホスピタリティーを高める
リニューアルでは、老朽化したものを取り替えるだけでなく、この機会にホスピタリティーを高める視点も重要です。一般的に、リニューアル後のエレベーターは建築空間の前面に出てくると印象が強まります。エレベーターを単に上下移動のハコと考えるのではなく、エレベーターに乗る行為そのものが楽しい体験になることも目的になります。
必ず人が通るところにあるので、エレベーターが変わると施設のイメージも大きく変わります。今回のリニューアルでは院長の指定でエレベーターもピンク色に変わり、通路全体が明るくなりました。また「停電時自動着床装置」や遠隔監視保守システムの「スーパーTERM」で安全の充実が図られるなど、最新機能や利便性だけでなく人に優しい演出も重要です。
メーカーの立場から
リニューアルを担当したのは、東芝エレベータ中部支社。リニューアルのポイント、方法、工期、エレベータの寿命などについて考える。
エレベーターの寿命は平均25年前後
法的な減価償却資産の耐用年数は17年ですが、メンテナンスで寿命は伸ばせます。建築物のコストから考えると、25年前後が目安といえるでしょう。
しかし装置そのものがまだ動いても、20年以上前の製品と最新式では性能の差が歴然。モーター制御の仕組みも進化しており、動き出しや停止は滑らかで段差も生じません。
便利な24時間・365日の遠隔監視
小原産婦人科は「準撤去リニューアル」を採用。レールや乗り場の枠・しきいなどを残して他はすべて交換しました。
産院ということもあり、安全装置の充実も重視しました。「地震時管制運転」や「故障時最寄階自動着床運転」は標準装備。また「停電時自動着床装置」は停電になると専用バッテリーに切り替わり、停電灯が点灯し、自動アナウンスが流れ、最寄階に停止してドアが開くシステムです。
遠隔監視保守システム「スーパーTERM」は、エレベーターとサービス情報センターを電話回線で結び、運転状態を常時監視しするシステム。閉じ込めが発生してもエレベーター内からセンターに通話でじき、利用状況のレポートも毎月受け取れるので病院側も安心できます。
上手な段取りで工期短縮
全撤去リニューアルに近い大がかりなリニューアルでしたが、工期は18日間で済みました。ホール前に仮囲いの許可をいただいて材料を置くことができたので作業が捗りました。入院中の妊婦さんもいるので、工事の騒音にも十分に配慮しました。
注:同社遠隔監視メンテナンス「スーパーTERM」の契約が必要となる。