2009年実施内容

2009年
授賞式とディスカッション

2009年特別参加

過去の応募作品

2009年受賞作品

Moses 〜どこまでも歩いていくということ〜

荒井 拓也(芝浦工業大学 大学院)
野口 直樹(芝浦工業大学 大学院)
梅澤 佑介(芝浦工業大学 大学院)

Moses 〜どこまでも歩いていくということ〜

作品概要

建築物の高層化にますます拍車がかかる東京では、高層建築においては、いかに早く時間をかけずに移動するかに重点が置かれている。しかしこの提案で力点が置かれるのは、むしろ移動そのものである。人々が地上を歩くように、高層建築の壁面を自分の足で歩けるようになれば、全く新しい体験ができ、移動そのものを楽しむことができる。その手段として使われるのが、モーゼ効果だ。これは水が反磁性であることから、強力な磁場中におかれた時、そこから遠ざかろうとする現象を指す。「Moses」は、人の身体の60%が水であることから、超伝導磁石によって高層建築のファサードおよびその周辺部分に強力な磁場を作り出し、モーゼ効果によって人を建物の側面へと押し上げ、壁面歩行を可能にする。

*モーゼ効果(Moses effect):旧約聖書でモーゼが紅海を二つに分け、両側に水の壁をつくってイスラエルの民を渡らせたことからそう呼ばれる。

審査員講評

今村 創平

最初このプレゼンテーションを見たとき、空から街を見た光景と人の目線から見た光景を組み合わせた絵かと思ったのだが、実はこれらは1枚の絵だと気づいた時、僕はこの案の肩を持とうと思った。
水平垂直の区別なく自由に移動できるというアイデアは、このコンペでもおなじみといえるが、このだまし絵のような表現が、そうした状況の面白さを伝えている。CGを使ったプレゼンテーションは年々こなれてきている半面、どうしても似通っている感は否めない。この案のように、自分たちのアイデアに合わせたオリジナルの表現方法を模索することが期待される。

辛島恵美子

この作品は、高層ビル側面のファサードを利用し、“モーゼ効果”で重力を制御して、あたかも地続きでのように高層ビル側面を自分の足で、自覚的には水平移動、客観的には垂直移動できるようにしようとの提案です。「人が生活するための街」にするには効率性ばかりではなく、人が散歩感覚で歩きまわれることが大事だとの思いは十分理解できます。しかし、現状では実現するだけの技術の可能性が見いだせなかったせいか、少なくとも頭を超える程度の空間は完全に地球重力から解放されているように見える図面に驚かされ、その空間を雨はどう降るのだろうかとつい余計なことを考えてしまったほど奇想天外にも感じました。しかし発想の転換にはショックもまた必要に思われました。

田中 浩也

50年後、人々は高層ビル群の「側面」を歩いているという案である。この案に関しては、実現可能性は度外視し、全く異なる観点から評価することとした。歴史は「連続的」でありながら同時に「断続的」でもある。「今」の技術や「今」の社会、「今」の人の感受性がそのまま50年後の未来にまで引き延ばされてゆくとは限らない。この先50年の間のどこかで、おそらく、幾度か「転換点」があり、大きな「技術」の革新、大きな「社会構造」の変化、大きな「感受性」の更新があるのではないだろうか。「現在をそのまま引き延ばした」のではない未来を常に企み、オルタナティブな想像力を確保していることはどのような時代であっても重要である。この案がそうした価値観を最もよく体現していた。

小林 庸至

これまで水平方向に限定されていたパーソナルなモビリティを垂直方向にも拡大する、というアイデア自体は他にもあった。しかし、平面も立面もまったく区別なく歩いて移動できる、という、スパイダーマンさえ凌駕するような提案は、これが随一だった。
言ってしまえば荒唐無稽な提案ではあるが、それを、写真を使い、また、科学的(であるかのよう)なロジックをもって主張する、というその潔さに惚れた、という点に尽きるだろう。日頃、あまりにも現実的な仕事に従事している身からすると、こうした夢のある提案ができることを羨ましく思う。

原田 豊

人がビルの壁面を歩行すると何が起こるか? あまりに唐突で、それがもたらす新しい都市機能は想像を超えている。つまり都市を生活空間として充実させるために、移動手段として歩くことを選択肢のひとつとして再評価するものである。それは移動そのものを目的化して楽しみを与えようと提案している。
ただ、作品中にある “モーゼ効果”なるものが現実となるのはいつのことか。しっかりと評価するには難しい作品であるが、ただただ面白く、夢のあることには変わりない。
今回の作品全体に「ゆっくり」「ゆったり」がひとつの共通項のような気がしている。それは実業に長く身を置いているものとして、今までビジネス空間として都市に求められてきた効率性と、今後拡大するであろう生活空間を如何に両立させるか、大きな課題として考えて行きたい。

受賞者コメント

私たちは、グループ3人で応募させていただきました。応募にあたって私たちが考えたのは歩くということの可能性についてでした。エレベーター・エスカレーターというと、どうしてもそれに乗って移動するということだけを考えがちですが、移動するときの選択肢の広さについてもっと考えてもいいのではないかと、私たちは思ったわけです。この考えを基に今回の東芝未来エレベーターコンテストに応募させていただきました。審査員賞をいただいたということでたいへん嬉しく思っています。このような賞をいただけたのも、家族、友達、また研究室の先輩・後輩、そして先生のおかげであるとありがたく思っています。今日は本当にありがとうございました。



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