FUTURE DESIGN

FUTURE DESIGN 2013 vol.35

2013 vol.35特集・交通と都市の未来形

東京シームレスシティ
アジア的な超高層建築を目指して

 座談会で提起されたテーマを受けて、松田チームは、超高層建築が、東京都心部に立地するものと仮定し、プロトタイプのバージョンアップを試みた。その進化形は「東京シームレスシティ」と名づけられ、スパイラル状立体緑道、5層バンド基準階、立体ラドバーンシステムなど、複数のアイデアから成り立っている。
それらは緊密に連携しており、シームレスシティの可能性を未来に示している。

合理的空間性を超えて

添川 超高層建築は、基本的に合理的な考え方をもとに成立しています。しかし、欧米的な合理性とは別の前提から生まれた、アジア的な超高層建築はあると思いますか。

松田 線路をマーケットとして用いること、屋上が自動車教習所であるスーパーなどは、アジア独特の時空間の使用法です。東京シームレスシティでは、そのようなアジア的空間の可能性を重ね合わせることを模索しました。複数のモビリティを同時に存在させること、冗長性のあるセミラティス型ネットワークを利用することなどは、アジア的な空間利用方法のひとつです。

ハードとソフトのシームレス

藤原 今後の人口縮小高齢化社会において、都市や街が生き延びていくためには、トップダウン式のマスタープラン型都市計画だけではなく、ボトムアップ的な市民参加によるまちづくりも重要になるのではないでしょうか。

和田 先に紹介したワテラスでは、学生は地域活動に参加することで、家賃サポートを受けられます。若年層の都心居住を推進し、希薄化が進む地域コミュニティを刺激させようとしているのです。地域コミュニティが弱くなりがちな都心部では、参加型都市居住システムのようなソフトの仕組みは大きな可能性を持っています。東京シームレスシティは、建築が都市に参加するため、ハードとソフトのシームレス化も目指しました。

松田 東京シームレスシティの立体緑道空間は、周囲の街にも開放されています。特に災害時には一時的な避難場所となり、大きな立体緑地空間が、逃げ込める場所として機能します。つまり、東京シームレスシティは地域における防災拠点にもなるのです。

プロジェクトを終えて

松田チーム

松田 達氏(まつだ たつ)
和田 吉史氏(わだ よしふみ)

建築と都市の融合を目指して

森ビルさんは、これまでずっと「都市」について考えてこられました。中心的思想である立体緑園都市はもちろん、安全・安心のまちづくり、都市の緑化、公共空間の確保、スマート化などに加え、今回ガレージレジデンスという未来志向の考え方が明らかになりました。
 それらすべてに我々は大きく啓発されました。今回我々は、その森ビルチームから様々な貴重なアドバイスをいただきながら、「東京シームレスシティ」という、日本の大都市の未来に様々な示唆と大きな可能性をもたらすであろう、魅惑的なプロジェクトに参画させていただきました。
 中心となるアイデアは「シームレス」です。添川さんと対談させていただいた時に出てきた重要なキーワードで、ここにすべてが集約されているといっても過言ではありません。人と車、建築と都市、自然と人工、ソフトとハードといった、これまで分離されてきた物事をつなげていこうという考えが、このプロジェクトに通底しています。
 物事の明示的な境界は、物事のシームレスな遷移的境界を見えなくしていたかもしれません。そのような不可視の曖昧性を積極的に捉えることによって、アジア的といえるかもしれない新しい超高層建築の可能性を、明らかにしたいと考えています。それはまた、建築と都市を融合することにもなるだろうと思っています。

田邊 曜氏
増田 忠史氏
梅岡 恒

森ビルチーム

添川 光雄氏(そえかわ みつお)
藤原 匠氏(ふじわら たくみ)

日本の大都市の魅力向上を目指して

今回、このプロジェクトにアドバイザーとして参加させていただき、私たちが従来提唱してきた立体緑園都市や都市のスマート化の方向性について再認識する機会を得て、非常に啓発を受けたと思っています。東京シームレスシティのコンセプトは今後、日本の建築や都市設計に一石を投じるのではないでしょうか。
 また、今回、都市に住む人の視点に立った様々なアイデアや仕掛けのご提案を受け、超高層建築の新たな可能性を改めて考えることができました。
 当社は都市のことをずっと考えてきたという自負があります。アークヒルズ時代から緑化に取り組み、高層ビルでも人の憩える場を提供してきましたし、災害時にも「逃げ込める」安全・安心なまちづくりを目指してきました。当社では、スマートシティという言葉が普及する以前から、それを構成するすべての要素に取り組んできたのです。
 私たちは、日本の大都市を魅力ある都市にしたいと願っています。そのために10年、20年先を見すえて、今何をすべきかを考えています。

今回の座談会には、そのためのアイデアやヒントがたくさん詰まっていましたが、特に大きく共感したのは、計画どおりに都市はできないということです。無駄な路地や緑地があり、ちょっと猥雑で複合的な部分が楽しい。ピラネージの夢想した複雑な建築空間、アレグザンダーの唱えたセミラティス構造の話も面白かったですね。まさに「都市はツリーではない」です。また、アジアでは時間軸の変化によって空間の利用法が変わるという発想も私たちが発想しにくい考え方でした。
 そんななか、森ビルが中心的に関わった「環状二号線Ⅲ街区プロジェクト(虎ノ門ヒルズ)」が2014年竣工予定です。地下に環状二号線が通る地上52階建ての超高層複合施設になります。これは、立体緑園都市のひとつの形です。今後東京のランドマークとして、さらに地域のコミュニティの中核として機能していくでしょう。
 今回の対談で、今後も都市のグランドデザインを思い描き、世界の都市間競争に打ち勝つための戦略を練っていきたいという思いを強くしました。

森ビルが理想として掲げる立体緑園都市(Virtical Garden City)に最新のモビリティシステム
を導入した新しい都市のイメージのひとつ。


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