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未来的な乗り物、SVが街を駆け抜けることによって、既存の熱海の旧市街地を無理に再開発することなく、未来と過去が同居した街として熱海をアピールする。このSVとは、どのような性能を持ち、どのように熱海の地で利用されるのだろうか。その詳細に迫る。
全長4350mm、全幅1900mm、全高1650mm。
SVのサイズは軽自動車より一回り大きいといったところだろうか。しかし、街路に溶け込む卵形のデザインは、熱海の街になじみ、大きさを感じさせない。
動力源は、短距離では圧搾空気を、長距離では電気を利用するハイブリッドとし、自動車モード以外では、すべてコンピューターによる中央制御となる。SVにはGPSと同期したセンサーがついており、渋滞させない運行はもちろん、SV同士が衝突しないようなシステムによってバックアップされる。
SVは地域住民、別荘族、観光客の3種類の熱海の住民に対して、「販売」、「共有」、「各回使用」という3つの方法で詳細に価格を設定する。対象に応じた価格設定により、熱海市民に対しては特別価格を設定して熱海への移住を促し、別荘族に対しては販売や年間契約などのビークル・シェアリングを促す。また、観光客に対してはタクシーに頼ることなく自由に熱海を動き回れることをアピールする。これまでにない脱開発型観光計画を未来型SVが創り出す。
SV仕様
基本性能
各モード性能
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寸法・重量
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PRTモード
定員
5名
最高速度
時速60km
サイズ(mm)
4350×1900×1650
一充電走行距離
200km
積載荷重
750kg
操作方法
タッチパネル指示方式
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動力
■
自走モード
動力
ハイブリッド(電気および空気)
最高速度
時速160km
動力源
薄型リチウムイオン電池、圧搾空気
一充電走行距離
80km
標準充電時間
9h(家庭用110V)、
操作方法
ステアリング・ホイール方式
4.5h(220V)
■
水上モード
最大出力
250kw
最高速度
時速70km
■
その他
一充電走行距離
40km
主要材質
CRP(カーボン繊維強化プラスチック)
操作方法
タッチパネル指示方式(自動操縦時)
シート
5席(回転移動方式)
ステアリング・ホイール方式(手動操縦時)
ドア
2枚(バーティカル・ドア)
動力推進機構
スクリュープロペラ
照明
LED照明
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ロープウェイモード
最高速度
時速28.8km(毎秒8m)
最短輸送間隔
20秒
水平長
2800m
最大高低差
120m
片道所要時間
8分
最大輸送量
毎時900人
こんな夢のような乗り物は、本当に実現するの!? そう思う方も多いだろう。しかし、実はもう世界では使われ始めている。その実例を少し覗いてみよう。
ウルトラ・パーソナル・ポッド
(イギリス・ヒースロー)
©Advanced Transport Systems Ltd.
▲ル・テレフェリック
(フランス・グルノーブル)
▲Aquada(イギリス)
最初に紹介するのは、アドバンスト・トランスポート・システムズ社の「ウルトラ・パーソナル・ポッド」。バッテリー駆動の乗り物で、専用レーンを使って駅から駅へと走る。目的地を設定すればあとは自動走行。4人まで乗車が可能で、最高速度は時速40kmにもなる。
実はこの乗り物、すでにロンドン・ヒースロー空港に整備済みで、業務用の駐車場と第5ターミナルを走るべく最終試験中とのこと。シミュレーション結果によると、平均待ち時間は10秒、乗客の95%は1分以内にサービスが提供されるというから驚きだ。今後はさらにホテルや駅と接続し、空港バスをすべて置き換える予定になっている。
次に紹介するのは、フランスの南東部に位置する都市グルノーブルにあるロープウェイ「ル・テレフェリック・ドゥ・グルノーブル・バスティーユ」。1934年の開業以来、1200万人以上の旅行者に使われ、今や街の観光資源として、なくてはならない存在感を持つ。なんといっても特徴的なのが、愛くるしい球体の車体。旅行者はついカメラを構えてしまう。乗り物のある風景が絵になる好事例だ。山に囲まれた盆地になっているグルノーブルだからこそ考えられた乗り物だ。
最後は、イギリスで開発され水陸両用車両として注目されているスポーツカー「ギブス・アクアダ」。地上を時速160km、水上を時速50kmで走行が可能なこの車、水着するとタイヤを格納しジェット噴射で航行する。価格は日本円でおよそ3000万円と高額だが、こんな乗り物が街を走る姿を考えるだけで、未来が楽しくならないだろうか。
どの乗り物も夢物語ではない。今日もまた未来の社会を変える新しい乗り物が開発され続けている。
熱海で生まれ育ち、現在、温泉や土地柄といったハードウェアだけに頼らない熱海の魅力づくりに取り組む市来広一郎氏に、今回のプロジェクトの可能性や課題について聞いた。
熱海の魅力は、豊富な湯量を誇る温泉や夏涼しく冬暖かい気候といった土地そのものが持つものだけではありません。様々な個性をもつ個人商店が集まった昔ながらの商店街や、明治の名建築が数多く残る別荘などは、観光客のみならず、別荘族や地域住民にとっても、興味を持ってもらえるものだと思います。
僕が代表を務めるNPO「atamista」では、「熱海温泉玉手箱」として、熱海の魅力を数多くの人に体験してもらうための体験型地域交流プログラムを提供しています。たとえば、そのひとつに「熱海の老舗和菓子スィーツウォーク」があります。文化人が愛した和菓子や温泉まんじゅう発祥の店などを、講習を受けた地元住民の方によるガイドさんとともに巡るのです。地域住民は、自分たちが住む街の魅力を再発見でき、別荘族には次の来訪時の楽しみができ、観光客は花火や温泉といったありきたりの熱海以外の魅力を知ることができます。
こうして熱海の魅力を地域住民と別荘族、観光客で分かち合うことで、それぞれの立場から熱海を盛り上げるためのサポーターになって欲しい。そして、活動を通じて生まれた熱海のサポーターとともに、熱海の新しいコンテンツをつくり出せればいいと考えています。
戦後から昭和30年代にかけての熱海の魅力は、温泉街の情緒というよりはむしろ当時としては珍しい鉄筋コンクリートの建造物が軒を連ねる近代的な街並みにありました。昭和30年代から40年代にかけては、モノレールの構想があったこともあるなど、その頃の熱海は、少し先の未来を感じさせる街だったのです。このプロジェクトが示す少し先の熱海の未来からは、その当時と同じワクワクする雰囲気を感じました。
今、熱海では、海からの交通をどう開拓するかという点が課題になっています。国道135号線と坂道により分断された海と、熱海駅そして市街地をどのように結びつけるか。今回の提案では、SVがシームレスな交通の魅力と可能性を見せてくれたと思います。熱海の街を海から見た景色はぜひ多くの人に見ていただきたいですし、ロープウェイで空から市街地を見下ろした様子は、想像するだけで楽しくなってきます。また、PRTの軌道を街路の上に配置したり、国道135号線を地中化したりするなど、人の歩行や生活空間に対する配慮をとてもうれしく感じました。
しかし、利便性を考える一方で、生活や自然環境に対しての配慮が課題となります。夜間にSVが空を多数行き来すると、あたりが明るくなりすぎてしまい、花火やビーチから望む初島などがよく見えなくなる恐れがあります。山の斜面に沿ったルートにするなど、町の中心部を迂回したほうがよいかもしれません。また、街路の上部を走るPRTは、市街地を走る路線だけに民家のプライバシーに配慮する必要があると思います。
そして、旅の楽しみには予期していなかった空間や場面に出会うこともあると思います。生活の匂いのある空間を保ち続けている熱海の良さを残したまま、さらに磨きをかけるためにも、SVの届かない空間にこそ地域の魅力をつくっていく必要があります。そこは私たち地元の住民の役割だと思いますので、このような交通インフラだけに頼らない魅力ある地域づくりを今後も進めていきたいと思います。
「自動車を気にすることなく、安心して歩いて巡ることができる。道端や路地裏で、子どもたちが走り回って遊べる。街全体が遊び場になる未来の街」。このプロジェクトからは、そんな熱海が思い浮かびました。(談)
市来 広一郎●ICHIKI Koichiro
NPO atamista 代表
熱海温泉玉手箱(オンたま)実行委員会
実行委員長
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