FUTURE DESIGN and NAVI
FUTURE DESIGN 最新号 ELEVATOR NAVI 最新号 NAVI-Library Back Number
 
logo
都市と交通の未来形
 
フラックスタウン・熱海
 
 
観光地としての栄華を誇った熱海だが、現在抱えている問題は多角的だ。
交通インフラや地形といった熱海特有の問題に加え、観光の多様化に伴う時代のズレ、高齢化社会など他の都市でも共通したものもある。
まずは熱海の現状を整理し、フラックスタウンの具体的な提案のための準備をしてみよう。
 
 静岡県の最東端、中部地方と関東地方の境である伊豆半島の付け根に位置する熱海市は、東西約8km、南北14kmという縦長の形状。富士箱根伊豆国立公園に含まれ、海・山・湖などの自然に恵まれた地域だ。
  総面積の約半分が急傾斜地で、高台の上には別荘や住宅が建ち並び、鋭角の坂道があちこちに見られる。海岸線がすぐに丘となる地形がほとんどで、市街地は海岸に面した急斜面に張り付くように形成されている。
  1921年以降は段階的な埋め立てにより、海際に平地ができ、砂浜海岸などが整備された。
 海と山に挟まれ起伏のある地形は、街歩きには魅力的だ。細い路地、曲がる小道、急な坂を上った後の見晴らし。歩を進めるたびに次々と風景が変わる街並みは、観光客に迷路の中を歩くような楽しみをもたらす。だが一方、日常をすごす地域住民に、負の要素としても働く。特に周辺地域よりも高齢化率が高い熱海では、斜面だらけの地形が生活上の負担となってしまう。急斜面の魅力をそのままに、高齢化社会に適応する解決策を見出したい。
 歩行者としての視点に続き、熱海への主要交通である道路と鉄道にも、新たな課題が浮かび上がる。
 海岸沿いを走る国道135号線は、湯河原から熱海を通過し伊豆へと抜けていく。近年は熱海を通過してその先へと移動する車が多く、夏季や休日は、中心地での渋滞が恒常化している。市街の宿泊する観光客がビーチへ出る際にも、交通量の多い道路を渡る必要がある。
 鉄道に関しても、東海道新幹線は、全線が熱海駅に停車するのではなく「ひかり」と「こだま」のみの乗り入れだ。熱海を交差する交通網は現在、道路、鉄道ともに通過交通となりがちである。人々がより気軽に立ち寄れるような、誘導性をもった提案はできないのだろうか。
 熱海の中心市街地は熱海駅と来宮駅という2つの駅に挟まれるようにして広がっている。徒歩15〜20分圏内にほとんどの主要な観光要素がつまった非常にコンパクトな観光都市と言えるだろう。本プロジェクトではこの規模自体も熱海の魅力のひとつと捉えている。
 特有の地形、時代の変化による観光客の減少など、さまざまな問題がある一方、熱海には歩いて回れる狭いエリアに豊富な観光資源が凝縮されているといった他の街にはない大きな魅力があり、それらをさらに発掘できそうだ。問題を解決すると同時に、ポテンシャルを活かした未来の熱海を描きたい。
 次ページから、建築家の今村創平氏と松田達氏による熱海の未来を提案するプロジェクト「フラックスタウン・熱海」の概要を発表する。人やモノ、土地のつながりといった「フラックス」を再構築した街はどのようになるのだろうか。
 
クリックで地図が拡大します
 
1:JR熱海駅
駅前のロータリーには熱海の主要交通を担うタクシーがずらりと並ぶ。
2:熱海仲見世名店街
駅前ロータリーからは数本の商店街が延びる。まさに熱海の街の玄関口だ。
3:熱海七湯・風呂の湯
街のいたるところに源泉の碑があり、なかには温泉がわき出ているところも。塩化物温泉と硫酸塩温泉が約9割を占める熱海の温泉は、1日の総湧出量約2万6千t。透明の温泉で、塩分が皮膚を覆い保温効果に優れることから、神経痛、冷え性などに適しているとされる。
4:ときわぎ
創業して九十余年、熱海の銀座通りにある和菓子の老舗「ときわぎ」。熱海にゆかりのある文人たちにも愛されてきた名店。このような歴史のある建物は、別荘をはじめとして街中に散在し、それらが重要な観光資源となっている。
5:サンビーチ
夏には、連日多くの海水浴客で賑わう。1921年から段階的に海岸の埋め立てを行っており、写真の砂浜は1988年に完成した人工海岸。同時期にお宮の松広場など付近の観光施設整備が行われた。さらに1991年には海岸線を整備。親水公園などが建設され、地中海風のデザインで統一された。
6:熱海港
熱海湾からは遊覧船のほか、離島への船も運航されている。初島へは船で約30分、東京都の大島へは時速80kmの高速船で45分で行くことができる。
7:アタミロープウェイ
乗り場から愛錠岬のある八幡山駅まで、高低差96m、距離286mを約3分で登るアタミロープウェイは、1958年から運行されている。ゴンドラは全面ガラス張りで山頂駅にある展望台からは、相模湾から真鶴半島、初島、網代を見渡す絶景が楽しめる。
8. MOA美術館
熱海駅の背後の山の手に立ち、広大な敷地を備える美術館。国宝の「紅梅図屏風」(尾形光琳)「色絵藤花文茶壷」(野々村仁清)「翰墨城」のほか、日本画や陶磁器など東洋美術の名品を揃える。
9. 熱海梅園
1886年に開園した4万4,000m2の広さを誇る梅の名所。樹齢百年を超える梅の古木を含めて400本以上の梅の木がある。日本一早咲きの梅に始まり、桜、新緑、紅葉と四季を通じて楽しめるほか、庭園内には中山晋平記念館、韓国庭園もある。
10. お宮の松
『金色夜叉』に出てくる貫一とお宮の別れの場として有名に。今は二代目「お宮の松」と「貫一・お宮の像」がある。
11. 起雲閣
1919年に明治の実業家である内田信也の別荘として建設された。その後旅館となり、文豪や著名人が多数滞在した。現在熱海市の所有で一般に公開されている。
12. 陽和洞
明治期の実業家である岩崎小彌太の別邸。現在は非公開のため写真なし。
   


< 東芝エレベータのトップへ