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日本の森林・林業の発展を支援する日本森林林業振興会は、その本部が東京都文京区の東京ドーム近くにある。29団体のテナントビルが入る事務所ビルとしても機能しており、正面玄関奥の2台のエレベーターが多くの人の往来を支えている。昨年末、そのうちの1台がストップした。
ビルを使う人の安全性と利便性を考慮し、緊急でリニューアルが行われることになった。
■萩原 宏氏
財団法人日本森林林業振興会
副会長
■斉藤 正勝氏
財団法人日本森林林業振興会
総務部長
財団法人日本森林林業振興会(以下、振興会)の本部は東京ドームにほど近い東京都文京区にある。地上6階、地下1階の「林友ビル」という名称の建物には本部の他に29団体のテナントが入居している。多くは森林関係の公益法人だが、なかには民間企業もある。萩原宏副会長は振興会の役割をこう語る。
「事業には3つの柱があります。第1に森林を訪れる人へのサービス。グリーン・サークルという会を組織しており、会員のために年15回の森林教室や年3、4回の宿泊ツアーを主催しています。国有林見学会は特に人気です。第2に森林・林業の振興で、森林の各種専門調査や木材製品を中心とする林業用機材などの物販などを行っています。第3に森林に関する出版事業です。この他に、林野庁の情報管理システムのサポートも行っています」
本部のある林友ビルの落成は1974年のこと。以来、35年間、玄関奥に設置された2台のエレベーターがせっせと人々を運び続けてきた。
エレベーターのリニューアル時期は設置後25年がひとつの基準だ。管理室に人が24時間体制で常駐する有人管理や2週間に1回の定期メンテナンスなどでしっかり管理してきたため、閉じ込めなどは起きたことがなかったが、昇降時にガクンと振動が起きたり、停止時に段差が生じるなど経年劣化による問題が目に付き始めていた。振興会の斉藤正勝総務部長は「テナントからもかご室が暗いとか、ガタンと止まるなど不満は出ていましたし、安全上からも早くリニューアルしたかったのですが、なかなか予算が確保できませんでした」と語る。
エレベーターはビルにとって必要不可欠なものだが、人を運ぶという役割さえ果たしていれば、新たに交換する必要性を感じにくい。しかも、2台以上設置されている場合、「1台が停止しても、もう1台がある」という一種の安心感があり、なおさら、リニューアルに踏み切る決断がしにくくなる。
しかし、昨年12月、実際に1台が停止する事態が起き、斉藤部長も危機感を感じた。
「さすがに片方が止まるとテナントからもクレームがあり、困ったことになりました。役員と相談して、特別に予算措置を行い、2台同時にリニューアルすることを決めました」
リニューアル工事は今年6月初旬にスタートし1台当たり12日間をかけ、下旬には完了した。工事に当たって斉藤部長は「木を使うことと、見た目が変わること」を要望した。日本森林林業振興会の名にちなみ、本来は実際の木をあしらったデザインにしたかったが、建築基準法の規定によりエレベーター周りに可燃材を使うことはできず、エレベーターホール側ドアと、かご室内に木目調の化粧シートを貼ることにした。また、天井の照明も交換した。
「明るくて落ち着いた木目調に変わり、雰囲気がだいぶ変わりました。来客にもテナントにも好評です」
かご室内には木製のテナント案内板があるが、木目調のかご室内とよくマッチしている。それまで、かご室内には掲示物が数多く貼ってあったが、役員から「きれいになったのだから、もう貼らないように」との要請があり、1階ロビーにわざわざ掲示板を新設したという。今回のリニューアルは、振興会らしいイメージづくりにも寄与したようだ。
■エレベーター・1階のりば
従来はステンレスをエッチング仕上げで装飾したホールドアだったが、リニューアル時に木目調化粧シート貼り仕上げに。フロアのイメージを一新した。
■エレベーター・かご室天井
左右隅2カ所に設置されていた照明を撤去して、新たに中央に設置した。照度が上がり、かご室内が明るくなった。
■エレベーター・操作盤と階数表示パネル
階数表示パネルがデジタル式になり、操作盤も最新モデルと同じユニバーサルデザインになった。
財団法人日本森林林業振興会
1946年設立以来、森林利用者へのサービスや森林調査などを通じて森林・林業の振興に寄与してきた。2008年10月には財団法人林野弘済会から現名称に改称。同会の組織するグリーン・サークルの会員は現在860名、自然を愛する人たちが会員となっている。
■住所:東京都文京区後楽1-7-12
■TEL:03-3816-2471
玄関奥のエレベーターホールは建物の“顔”ともいえるスポットです。今回のリニューアルでは、この顔が見事に変わり、イメージアップしました。 林業を支援されている組織のため、木のイメージを大切にされているということですが、エレベーターホール側のドアを少し濃い目の木目調化粧シートで覆い、大理石の壁とよくマッチしています。
まさに2本の木が立っているようで、その中に入っていくと、明るい木目調の空間が開けるというストーリーがあります。かご室内は光天井で明るく、圧迫感がありません。
リニューアルの意図がはっきりしており、しかもエレベーターの外も内も主張しすぎておらず、好感が持てます。
制御リニューアルという最小限の改修で、コストと手間と時間をあまりかけずに、快適性、乗り心地、安全性の向上と、さらにイメージアップを実現したモデルケースだと思います。
多数のテナントが入っており、長期間、エレベーターを停められない条件下で、これだけのことができるという意味で、リニューアルが必要な他の建物にもお手本となるのではないでしょうか。
60年代半ばから、70年代にかけて建設された都心のビルは多く、どこも空調や照明設備を含めて建物全体の改修が必要な時期です。特に古い空調設備は小規模ビルでも全館空調が多く、消費電力などランニングコストが相当にかかっています。
温暖化ガス削減の社会的な要請もあり、今後は空調設備の交換と共にエレベーターリニューアルのニーズが高まるのではないでしょうか。
建物をブラッシュアップする上で、エレベーターホールやかご室内のイメージアップはテナントにアピールする上でも効果的といえるでしょう。(談)
■隊長 篠ア正彦
東洋大学工学部建築学科准教授。 1968年東京都生まれ。
専門分野は、建築計画と環境行動研究。特に、都市での生活様式と住居、施設の関係を研究している。現在、ベトナムにおける集合住宅の調査研究を進めている。
■隊員 山田花子
篠ア先生の研究室でベトナム建築を学ぶ。趣味はピアノとフルート。
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