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東京・四ツ谷駅のすぐ近くにある桃園学園は通うには最高の立地だ。しかし、稼働から26年間経った油圧式のエレベーターは振動もあり、利用者を困らせていた。そこで、東芝エレベータは三方枠やしきいを残したまま油圧式をロープ式にリニューアルする技術を開発、その第1号として導入した。省エネ効果も大きく、リニューアルの一つのモデルケースとなりそうだ。
 
 

■小瀬 尚子様
財団法人桃園学園
理事長

 

 
 

■木村 信子様
財団法人桃園学園
事務

 

 桃園学園は1943年に設立。社会人を対象とした美術教室(四谷美術研究所)を運営しており、120人ほどが絵を習いに来ている。なかには、プロ級の腕前を持った人たちもいる。
 小瀬尚子理事長は「日展にも入選し、自宅で美術教室を開いているような方々も学んでいらっしゃいます。なかには20年以上も続けている方もおり、最高齢は83歳です」と語る。
 中高年から高齢の利用者が多いなか、桃園学園のエレベーターにはいくつかの問題があった。すでに稼働後26年も経つ油圧式エレベーターで、振動や段差、騒音などが利用者を悩ませていたのだ。事務の木村信子さんは「振動や電気代もかかっていました」と語る。
 油圧式エレベーターは油圧でかごを上げ下げするため、巻上機や制御盤などを収納する機械室を建物の上に設置するスペースがなかったり、機械室の設置ができない中低層住宅や工場などに設置されることが多かった。油圧式エレベーターも、油圧ユニットを収める機械室は必要だが、場所は地下などにも設置できた。また、油圧で直接かごを動かすため大きなモーターを必要とし、電力を多く消費する。小瀬理事長もリニューアルの必要性を強く感じていた。
■エレベーター・1階ホール
のりば戸は落ち着いたモスグリーン。階数表示は以前は地下1階から3階までランプが点く各階表示方式だったが、今回のリニューアルで大きいデジタル表示に変えられた。
  しかし、東芝エレベータがリニューアルの技術的検討を開始すると大きな障害が見えてきた。制御盤を取り付けるために、最上階である3階のエレベーターのりばについては、三方枠としきいを撤去せざるを得ないことがわかったのだ。そうなると、大がかりな建物工事が必要になるが、現在、1階から3階には大手予備校がテナントとして入居しているため、騒音を出す大がかりな工事は難しいということになった。
 そこで、東芝エレベータが社内で検討を重ねた結果、当時、新築物件に向けて使用されていた技術である、シャフト内に制御盤も巻上機も収納する手法を、このリニューアルに導入することにした。これならば、壁を壊すこともなく、三方枠などをそのまま利用できる。
 ところが、シャフトにつり合いおもりが入るスペースを確保するため、かごのサイズを9人乗りから6人乗りにしなければならなくなった。
 「台車なども乗せますから容積が小さくなるのは心配でしたが、結果的には大丈夫でした」と小瀬理事長。
 工事はテナントの都合を考慮し、2月中旬から約1カ月かけて行われた。リニューアル後、「振動もなくなり、音も静かになりました。桃園学園の生徒さんにはお年寄りもいるので、階数表示が大きくて見やすくなったのもありがたいですね」と小瀬理事長は頬を緩ませる。
 「電気代もかなり安くなりました。また、かごの照明が落ち着いた感じになり、ドアの色もきれいですよ」と木村さんは語る。
 ホール側とかご室内の階の表示はお年寄りでも見やすいように大きくした。ドア色は小瀬理事長が選んだというが、さすがに美術学校だけあってセンスのいいモスグリーンだ。ロープ式になることで電力消費は大幅に減り、電気代は年間で数十万円の節約になった。環境保護にも大いに貢献したリニューアルだった。
■エレベーター・フットライト
かご室内にはフットライトが取り付けられており、かご室内のアクセントになっている。

  ■エレベーター・かご室操作盤
操作盤がバリアフリー対応になり、表示が大きく見やすくなった。

 

桃園学園

1943年に設立、1978年に四谷に移転した。社会人対象の四谷美術研究所はデッサン、静物、人体などを教える本科とクロッキー部などがある。所長は日本芸術院会員であり日展理事の塗師祥一郎氏。
■住所:東京都千代田区六番町13-2
■TEL:03-3230-2881(代表)


 油圧式エレベーターは、大きくて重いものを運ぶ必要のある工場などに主に設置されていたものです。油圧式エレベーターは、屋上以外に機械室を設置でき、重い機械室を屋上に設置しなくてもいいため、建物に対してかける負荷が小さくなります。しかし、ロープ式エレベーターに比べて、モーターも大容量のものが必要なため消費電力や作動音もどうしても大きくなります。メンテナンス面でも大量の作動油を必要とするなど、ロープ式エレベーターに比べてデメリットもあります。
 今回は、その油圧式エレベーターをロープ式で、しかもマシンルームレスタイプにリニューアルしたとのことですが、まずはその小型化ぶりにとても驚かされました。制御盤と巻上機がシャフトの中に納まってしまうのであれば、「屋上に機械室を設置する」という問題が解決できます。しかも、シャフト内に機器が収納できるため、従来機械室として使用していたスペースも不要になります。シャフト内に機器を収納するために、従来よりかごのサイズが変更となる場合もありますが、今回のようにかごのサイズ変更を問題としない場合には、まさにうってつけと言えるでしょう。
 省エネ効果にも驚きました。今回のリニューアル事例では、建物が3階建てで上層階のテナントが予備校とのこと。それほどエレベーターの利用頻度は高くなかったようですが、それでも消費電力を70%以上にまで削減できたのですからすごいことです。作動油が不要になったこととあわせて、とても環境に配慮していると感じました。
 今後、このような油圧式の乗用エレベーターに対してリニューアルを検討するお客さまも増えると思いますが、その導入事例としていい見本になるケースではないでしょうか(談)。


■隊長 篠ア正彦
東洋大学工学部建築学科准教授。 1968年東京都生まれ。
専門分野は、建築計画と環境行動研究。特に、都市での生活様式と住居、施設の関係を研究している。現在、ベトナムにおける集合住宅の調査研究を進めている。
■隊員 山田花子
篠崎先生の研究室でベトナム建築を学ぶ。趣味はピアノとフルート。

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