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災害による被害は、同じ地区でも地点や建物構造によって、また事前の対策の程度によって異なってくる。どのように災害リスクを判断し、対策をとっていくか。今回は、災害リスクマネジメントを研究している独立行政法人防災科学技術研究所の長坂俊成氏に、ライフプランと災害情報のかかわりについてお話を伺った。
 「災害情報」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。地震や津波などの気象状況、人的・物的な被害状況、避難情報といった、自分たちの実生活からやや遠い、都道府県や市町村レベルの情報ではないだろうか。しかし本来の災害情報とは、住まい選びや将来の生活設計に活かすことができるレベルのものでなければならない、と語るのは、独立行政法人防災科学技術研究所の長坂俊成氏である。
 「地震に関して言えば、災害リスクは、住宅選びの時点ですでに考えるべき事柄なのです。もし、今、住んでいる家の液状化リスクが高いなら、建物を補強したり、地震保険に入ったりとリスクを軽減するか、あるいはより安全な土地へ引っ越すか。こうした災害を軽減・回避する手段は多種多様で、また個人の価値観によっても異なります。しかもハード面でのリスク対策には資金が必要であり、そこには予算の制約が伴います。リスク対策においては、まず自分たちの置かれた環境を把握し、今後の人生設計の中でどのリスクをとるかを判断していくことが必要です。よりよい生活のためにも、災害リスクをライフプランの一要素と捉え、老後までの生活水準の想定やマネー設計に組み込むことが求められるのです」
 長坂氏は、ライフプランの判断材料になる情報が本来の防災情報であり、対策に必要な資金の投入計画や調達手段もまた、防災情報に含まれるべきだと言うのだ。長坂氏はさらに、収集したハザード情報や予知情報を、どう自分たちのリスクとして変換し、対策に変えていくかを工夫する知恵も必要になると強調する。起こりうる災害に対して、日ごろの備えを個人で対策していくか、それとも地域で連携したほうがいいのか。本来の災害情報の活用とは、このようにリアリティーをもって自らの生活に当てはめていくことから始まる。
 ライフプランの判断材料となる防災情報は、どこで入手できるのか。残念ながら、行政が提供する情報だけではまだまだ不十分というのが現状である。しかし長坂氏は、行政からの提供を待つのではなく、有用な災害情報は行政よりも地域こそが提供できるものであり、そういう場を地域につくっていくことが先決だと語る。
  「地域には災害と共生した災害文化というものがあります。過去の土地利用や災害履歴を経験知として持っていますから、それを伝承し、うまく活用していく。そのための情報の集まる場づくりを地域から起こしてほしいのです。情報の集まる場は、防災を目的としたものではなく、たとえば『地域の歴史マップ』といったような、地域の土地利用や遊びの情報を通じたものであったほうが、副次的な効果も含め、よりよい情報が期待できると思います」 
 ブログなどを使ってインターネットで災害情報を行政と住民が共有し、活用する動きもある。静岡県島田市役所と防災科学技術研究所が共同研究を進めている「eコミュニティしまだ」では、ブログなどを使ってインターネットに住民が気づいたことや思ったことを共有するポータルサイトを開設した。同サイトには参加する地域グループ(コミュニティー・セル)ごとに個別のWebサイトを持つことができる。歴史探索や環境保護、学生グループなど40以上のセルが活動しているなか、「町内安全点検地図」は、町内ごとに「まちあるき」を実施して得られた情報を地震や水・火災・土砂といった危険なテーマに分類し、まちあるきに参加できなかった住民との情報共有を図っている。
 こうした住民たちによる積極的な情報提供と共有の成果は、行政にも情報のフィードバックとして表れる。行政・住民双方にとって望ましいかたちで情報を活用できるようになるだろう。

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▲図 災害リスク情報を行政と住民が共有・活用する



空間を共有している者同士、自分たちに起こりうる災害を想定し、管理組合と住民、誰がどのように対応するかについては日ごろから話し合っておきたい。

 現在の建物構造で起こりうる災害はないだろうか。またそれらの対策はとられているだろうか。たとえば台風などで、地下の機械式立体駐車場に排水能力を超える雨水が流れ込む事態に備え、管理組合または他の住民に鍵を預けて外出するといった対策があれば、自動車への被害を回避できる。また、排水溝に落ち葉が溜まりやすいなら、隣接住宅と協力して日ごろの掃除を心がけることで浸水被害の回避につながる。
 防災訓練は在宅率の高い休日に実施されることが多いが、実際の災害は平日の昼間にも起こりうる。在宅者の少ない時間帯の災害発生は想定されているだろうか。あるいは、住民の中に人工透析などの定期治療が必要な方はいないだろうか。災害発生時の病院搬送を、住民間で連携して行うことができるかもしれない。
 集合住宅によっては、自治体と防災協定を結び、津波の一時避難場所に指定されている場合もあるだろう。都心部であれば、帰宅困難者が押し寄せてくるかもしれない。オートロック式の場合、避難者の受け入れは大丈夫だろうか。避難者の飲料水や食物は各戸が用意するだけで十分だろうか。加えて、バックグラウンドの異なる個々の避難者に応対する心がまえができているだろうか。
 自分たちの居住環境における災害の独自対策を、日ごろから気軽に話し合える場づくりも重要だろう。

midashi

 緊急地震速報は、地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた観測データを解析して震源や地震の規模(マグニチュード)を直ちに推定し、これに基づいて各地での主要動の到達時刻や震度を推定し、可能な限りすばやく知らせる情報のこと。
  地震が発生してから大きな揺れが到達する前に地震の情報をキャッチできる場合もあるため、エレベーターの制御などへの利用が期待されてきた。
 今年の10月1日より、一般向け緊急地震速報がテレビ・ラジオなどで提供されている。
 エレベーターで緊急地震速報を利用する場合、あらかじめ決められた震度以上の地震動が到達すると予想された時に、エレベーターの管制運転を開始して、最寄の階に停止させる。より早く地震時管制運転を開始することで、機器の損傷を少なくし、閉じ込めなどの被害を防止する効果が期待されている。
 現在、東芝エレベータでは、東芝ビルをはじめ都内大型ビル数カ所で緊急地震速報が利用されている。

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