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今号から始まった「リニューアル探検隊が行く!―安全で快適なエレベーターを探る―」はエレベーターをリニューアルした施主の方々を訪ね、リニューアル前後で何がどう変わったのかを探る。第1回目は「お伊勢さん」で知られる伊勢神宮の入り口に位置する伝統ある小原産婦人科。37年間使ったエレベーターを一新し、患者さんにも喜ばれていると語る小原茂院長にお話を聞いた。
 
 
■中村泰矩氏
中村建築設計事務所
所長
 
 

■小原 茂氏
小原産婦人科
院長

 

 伊勢神宮外宮の入り口に当たるJR・近鉄伊勢市駅から歩いて5分もかからないところに小原産婦人科はある。開院70年を誇る地元で最も古い産院の一つであり、小原茂院長は3代目だ。
 4階建て、病室は13室。淡いピンクを基調としたパステルカラーの明るい院内は我々探検隊もゆったりとした気分にさせてくれる。病室も広々としており、窓から神宮の森が見える産院として新聞に紹介されたこともある。
 内外観ともにさほど築年数が経ってないように見えるが、実は竣工が1969年。築37年になる。小原院長の決断で、95年から5回にわたり、改築・改装を続けてきた。改装に伴いグレーだった基調色をピンクに変更し、玄関、ホール回りから次第に明るくなっていった。病室も当初の39室から3分の1に減らし、一室当たりの広さを倍増させた。
 エレベーターも69年以来、35年間働き続け、かなりの疲れが見えていたが、改築・改装が優先でエレベーターのリニューアルまで手が届かなかった。
 改築・改装の設計をすべて担当してきた一級建築士の中村泰矩氏(中村建築設計事務所所長)はこう語る。
 「エレベーターは分娩室の前にあって、主に分娩後の妊婦さんをストレッチャー(脚と車のついた担架)に乗せて病室に移動させるために使われていました」

 
■エレベーター・1階ホール
術後の患者さんを病室まで運ぶため、手術室の前にエレベーターが設置されている。
 
 小原院長はエレベーターを使うたびに「これでは妊婦さんがかわいそうだ」と思うようになった。
 何しろ旧式のため、操作盤のボタンを押してもなかなかドアが閉まらない。おそらく接触が悪かったのだろう。エレベーターが動き出すときも止まるときもガクンガクンと振動が起き、分娩後間もない妊婦の傷に障るのではないかと心配になった。
 また、月に1回、エレベーターのフィールドエンジニアに調整をお願いしていたものの停止時に段差が生じ、ストレッチャーを乗せるとき、降ろすときに、妊婦にショックを与えてしまう。さらに、モーターとワイヤーから生じる騒音も気になった。そこで、小原院長はリニューアルを決意する。
 「妊婦さんはもちろんのこと、お見舞いなど一般のみなさんにも使ってほしかったのです」と小原院長。
 こうして、2004年3月にリニューアル工事を始め、18日間で準撤去リニューアルを完了。グレーのドアも院内に合わせて濃いピンク色に変わった。もう段差ができることもないし、振動も騒音もない。一般客も利用するようになり、お年寄りも見舞いに来やすくなった。
「新しいエレベーターの効果で見舞客も増えました。車いすをご利用のおじいちゃんが毎日、孫の顔を見に来るようになりました。これほど安全・快適になるとは思いませんでしたね。妊婦さんも喜んでいるし、リニューアルして本当によかったですよ。感謝しています」。
■エレベーター・かご室内部
病院・福祉施設向けの仕様のため、天井のライトが小さく、ストレッチャーがそのまま搬入できる奥行きになっている。

  ■エレベーター・3階ホール
病室へ向かう廊下の中央に設置されており、壁にあわせて明るいピンクで塗装されている。

 
小原産婦人科
「自然なお産」「母乳保育」「明るく楽しく」が基本方針。年間約230人の赤ちゃんが生まれ、親子何代も続けてお世話になっている人たちも少なくない。
■住所: 三重県伊勢市宮後1‐5‐3
■URL: http://www.a-space.ne.jp/ohara/
 

 
 施設設備のリニューアルは、エレベーターに限らず、単に老朽化したものを新しいものに取り替えるだけはありません。
 一般的にリニューアル前のエレベーターは、施設の裏方にあるのですが、リニューアル後は少し建築空間の全面に出てくるケースが多いのです。それは、エレベーターを単に上下移動のハコと考えるのではなく、エレベーターに乗る行為そのものが楽しい体験になること、すなわち利用者のホスピタリティーを重視するからです。
エレベーターは必ず人が通るところにあるので、エレベーターが変わると施設のイメージは大きく変わることになります。
 たとえば今回のリニューアルのポイントの1つとなった色もそうです。小原院長指定でピンク色に変わりましたが、これでエレベーターの存在感が出てきますし、通路全体が明るくなります。また、エレベーターの安全の意識が高まる中、「停電時自動着床装置」や遠隔監視保守システムの「スーパーTERM」が装備され、安全の充実が図られたことは、このリニューアルの大きなポイントになっています。
建築の視点から見ると、エレベーター前の照明を変えると、エレベーターの存在がさらに増します。今後は、エレベーターにも金属的な素材だけでなく、自然素材を使って利用者に癒しをもたらすリニューアルの方向性も出てくるでしょう。
さらに産院ならではアイデアとしては、エレベーター内のモニターに妊婦さんに役立つ情報などが、さりげなく表示されていると喜ばれるかもしれませんね。
 新生児にとっては、人生の最初に乗るエレベーターなので、最新の機能や利便性だけでなく、人に優しい演出が重要になってくると思います(談)。
■隊長 篠ア正彦
東洋大学工学部建築学科助教授。 1968年東京都生まれ。
専門分野は、建築計画と環境行動研究。特に、都市での生活様式と住居、施設の関係を研究している。現在、ベトナムにおける集合住宅の調査研究を進めている。
■隊員 山田花子
篠崎先生の研究室でベトナム建築を学ぶ。趣味はピアノとフルート。

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