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石川 英輔●昭和8年京都生まれ。国際基督教大学と東京都立大学理学部中退。武蔵野美術大学講師。ミカ製版株式会社の社長を務めながら、『SF西遊記』で作家としてデビュー。著書に『大江戸えころじー事情』『大江戸ボランティア事情』『大江戸テクノロジー事情』『大江戸リサイクル事情』『大江戸神仙伝』『大江戸仙界紀』『SF三国志』『総天然色への一世紀』など多数。最新刊は『大江戸妖美伝』。江戸のリサイクルとエコロジーをテーマにした講演も多く、全国を飛び回っている。 |
江戸時代の交通風景
江戸時代の交通手段は、基本は徒歩です。補助的な手段として、馬と駕篭。ただ駕篭はお金もかかるし、一般人が気軽に乗るものではありませんでした。大工さんの日当が500〜600文の時代に、日本橋から品川までの相場がだいたい400文ですから。
時代劇を見ているとよく駕篭が出てきますが、当時描かれた町中の絵を見てみても、あまり駕篭に乗っている場面は載っていません。馬もいないですね。実際はタクシーというよりリムジンに近い感覚だったのではないかと思います。
駕篭にもいろいろあり、一番高級なのが「乗り物駕篭」。大きさも大きくて、最低でも旗本クラスの、身分の高い人が乗るものです。屋根があって、駕篭の中には布団が敷いてあり、飲み物や食べ物も備わっていた。また、「女乗り物」といって、身分の高い女性専用の駕篭もありました。庶民の女性でも大名家などに仕えていた人は、退職して嫁入りする日だけは特別に貸してもらって乗れたそうです。
一方、一般庶民が乗るものは「四つ手駕篭」。四本の竹で吊るしてあるので四つ手。両側にござみたいなものが垂れています。これにもピンからキリまでいろいろありますね。箱根の山を越える「山駕篭」なんかだと、とにかく軽くするために余計なものは一切付いていません。
駕篭の乗り心地
駕篭はなんで人がかついでいたかというと、昔は車輪のほうが乗り心地が悪かったからです。当時はゴムタイヤもないから揺れが激しいし、雨の時は轍ができてはまりこむ。
駕篭は基本的にお金持ちの使うものですが、スピードは出ないし、乗る側にも技術がいったようです。バイクの後ろに人を乗せる場合と同じで、曲がるところでは一緒に重心を傾けるとうまく行く。だから乗り心地は、担ぎ手と乗り手による「総合芸術」です(笑)。
旅行でも駕篭に乗ったり徒歩で歩いたりの併用です。当時、江戸から京都までの標準の旅程が14泊15日。今の感覚だと「大変だ」ということになりますが、電話もかかってこないし、これだけで半月つぶせるって素晴らしいと思いませんか? そこかしこに美味しい食べ物もあるし、歩くのはみんな慣れているわけですからね。
現代人は「新幹線で2時間半」なんて自慢しているけど、こういう旅の豊かさに比べたら、そんなもの単なる「移動」じゃないかと思ってしまいます。