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学校法人聖マリアンナ医科大学
■聖マリアンナ医科大学 外観
エレベーターの安全が患者の命に関わる大学病院でのエレベーターには、どのような機能が期待されているのだろうか。今回取材に伺った聖マリアンナ医科大学病院は、神奈川県川崎市の大学病院。地域の医療を支える医療施設として、また多数の学生や職員が活動する大規模な教育・研究機関として、さまざまな用途が混在する環境でのエレベーター管理について、お話を伺ってきた。
■施設部 部長
坂本 竹廣 氏
■施設部施設課 主任
柏木 義幸 氏
1971年の創立以来、多くの医師たちを養成してきた聖マリアンナ医科大学。神奈川県川崎市の菅生キャンパスは、緑に囲まれた広大な敷地に、医学部と大学病院、さらに各種専門研究施設を備えた総合的な教育環境となっている。
中でも大学病院は、学生たちの実地修練の場となるとともに、神奈川県内でも最大級の医療施設として、地域の医療を担ってきた。本館・別館を合わせて27科の診療科、約1200床の許可病床数、さらには24時間体制の救命救急センターを備える。
■聖マリアンナ医科大学病院本館エレベーターホール。各階で壁面の色が異なる
「ここは一つの“街”ですね。学生は、医学部が600人強、看護学校が200人強、と数としては少ない。しかし職員や協力会社さん、患者さんやお見舞いの方々を含めると、日中は8500人くらいの人口がここに集まっています」(施設部部長 坂本竹廣氏)。
「キャンパス内の建物を全部回っていくと、早足で3時間くらいかかります。病院だけでも本館・別館があり、手術室や主な検査機関は本館に集中していることもあって、入院されている方が移動するために渡り廊下とエレベーターを使うことになります」(施設部施設課主任 柏木義幸氏)。
聖マリアンナ医科大学で現在稼働中のエレベーターは、全体では28基。うち病院本館が11基、別館が8基となっている。医学部や研究施設を含め、用途別にさまざまな機種のエレベーターが入っているのも、大きな医科大学としての特徴だ。バックヤードでの荷物運搬や配膳用のエレベーターや、薬局からナースステーションへ薬を運ぶための小荷物専用昇降機もある。また、本館1階から8階までのどこからでも手術室に直で行ける、手術室専用エレベーターなどもある。
エレベーターの速度は、通常の商業施設などよりもやや速めの「中速」(毎分90m)を採用。身体の具合の悪い利用者を、なるべく早く、かつ安定して運ぶことのできるスピードだ。安全装置にも気を遣い、ドア部のセンサーは、通常の光電管式に超音波式を加えて二重に安全を確認している。
また安全面で特に効果的だったのは、ランニングクリアランス(しきい間距離)の幅の改善だ。もともとランニングクリアランスには、車椅子などの細い車輪がはまりやすく危険である。同病院では、昨年、この隙間を通常の30から10まで縮めることのできる製品を一部のエレベーターに導入した。
「現在、病院本館を中心に導入して様子を見ていますが、付けているものとないものでは患者さんの安全度がまったく違いますね。苦情もずいぶん軽減しました。一番良かったのは、患者さんが持って歩く点滴スタンドの車輪が引っかかりにくくなり、転倒事故もなくなったことです。来年度に向けて、別館でも設置する方向で考えています」(柏木氏)。
その他意匠面でも、内装や各階ごとの扉の色などを工夫し、できるだけ明るく気分転換ができるようにしているという。
医科大学としてのエレベーターの利用状況はどうだろう。
「教育棟の場合は、授業の前後に学生が固まって移動するために、短い時間にエレベーターの利用が集中します。また一般の大学に比べて、医学部では実習内容によって建物の中を移動することも多いのです。しかも病院別館の8階にも階段教室があるので、時間帯によっては大勢の学生と患者さんが一緒に使わなければならず、ぎゅうぎゅう詰めになってしまうこともあります」(坂本氏)。
病院内での乗用エレベーターのうち、8階まですべてをカバーするものは実質的には3台のみ。台数が限られるので、どうしても混雑する時間ができてしまう。このため、搬送用のエレベーターを時間を区切って乗用にも利用したり、学生や職員には極力階段を使うよう指導されているという。
これだけの人数が集まるために、防災訓練も大規模なものになる。毎年、秋に行われる防災訓練は、管轄の宮前消防署と合同で400〜500人の参加者を集めて行われる。これも、一事業所としては県内有数の規模だという。
エレベーターのメンテナンスや非常時の対応については、管轄の東芝エレベータ溝の口営業所と日頃から密接なコミュニケーションをとった上で対策を行っている。
「昨年7月23日に震度5の地震があった時は、道が混んでいて点検員の方の到着が遅れてしまいました。ただ、その後反省点をご相談できたので、今後関東圏に本当に大きな地震が来たときのための予行演習になったと思います」(柏木氏)。
現在聖マリアンナ医科大学では、今年、創立35周年を迎えるにあたり、大規模な改築計画が進行中である。外来向けの立体駐車場や、各種校舎の改築を含め、いまある建物の8割方を解体し、新設するという。早ければ15年後の50周年をめどに完成を目指している。
コンセプトは、“環境に優しい建物”。例えばエネルギーセンターをつくり、エネルギー関係のロスを抑えCO
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の排出を抑える計画だという。建物自体も、あまり大きな換気設備を設けず、自然換気を利用したり、また景観上も現在よりさらに緑あふれる、人の心にとっても優しい設計になる予定だ。
「建て替え計画が始まっていますから、いまは古いものをいかにソフト面で工夫しながら運用していくかという時期です。メーカーさんへの要望としては、われわれは、とにかく患者さんに迷惑をかけないということを第一に心がけておりますので、まずは、“安全に動く”という機能を発揮してもらうようお願いしております」(坂本氏)。
学校法人聖マリアンナ医科大学
キリスト教的人類愛に根ざした、生命の尊厳を基調とする医師としての使命感を自覚し、人類社会に奉仕する人間の育成ならびに専門的研究の成果を人類の福祉に活かしていく医科大学病院。
■住所:神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1
■設立:1971年
大規模な建て替えを控えた聖マリアンナ医科大学。人々がもっとくつろげる空間を創るためには、どんな条件があるのだろう。学校建築のエキスパートである工藤和美先生に、学校建築の視点から医科大学建築のこれからを分析していただいた。
私が主に手がけているのは小学校などの学校建築ですが、じつは病院と学校の建築はすごく近いものだと思っています。現在、車いすを利用しているお子さんなど障害を持つお子さんを一般の学校に受け入れる動きがあって、建て替えなどの際に学校にエレベーターを設置する例が増えています。ある意味で“弱者”を支えるための施設、という傾向に、病院やグループホームと共通するものがあると思います。
空間の単位としても、小学校の教室は6床の病室とちょうど似たような広さです。私たちは小学校を設計する際、将来少子化で生徒数が減ったとき、部分的に高齢者施設として転用できる可能性なども考えながら設計したりしています。
私たちが設計を手がけた博多小学校では、「教師コーナー」制といって、職員室の機能を分散させ、フロアごとに教師の集まれる場所を作りました。病院でいえばこれはナースステーションの考え方で、必ず子供のそばに先生がいるという安全管理体制です。いまやこれが学校安全のトレンドのようになっていますが、むしろなんでいままで学校にもそういう仕組みがなかったのか不思議なくらいです。
学校も病院も、一日の大半をすごす生活空間で、日常生活に必要な機能が全部コンパクトに入った施設ですよね。病院は入院すれば寝泊まりまでしますから。そこで病院にはもっと、病室以外にも家のリビングのようにくつろげる空間があっていいとも思います。学校の建築では、わざと狭いくぼみを作ったりして、子供たちが遊べるような空間を仕掛けるのですが、このように、ひとの行動をデザインするという次元では、現在の病院はいまひとつくつろげる空間が作れていないと思いますね。
■東洋大学工学部教授・建築家
工藤和美氏
1991年東京大学大学院博士課程修了。現在は、シーラカンスK&H株式会社代表取締役、東洋大学工学部教授、文部科学省学校施設のバリアフリー化等に関する調査研究協力者会議委員などを務める。著書に『学校をつくろう!―子どもの心がはずむ空間』(TOTO出版)などがある。
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