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日本ホテル協会会員 株式会社ホテルオークラ
■ホテルオークラ神戸全景
交通機関やオフィスビルにおけるエレベーター・エスカレーターは、「移動手段」としての機能性・効率性を重視される。一方、時間と空間そのものを楽しむホテルのような場所では、求められるものもおのずと違ってくる。今回は、日本ホテル協会会員でホテルの安全性と快適性に取り組むホテルオークラの鈴木氏、荒井氏、佐藤氏にご登場していただき、エレベーター・エスカレーターの安全対策と「快適さ」との両立について探ってみた。
■宿泊部フロントサービス課課長
鈴木 基之氏
■施設部施設課課長
荒井 治氏
エレベーター・エスカレーターにとって、快適な乗り心地と、安全性やセキュリティーとの両立は常に大きな課題である。リラックスした時間と空間の提供をサービスの中心とするホテルでは、これらを両立させながらも、洗練されたスタイルで提供することに格別の努力が払われている。
今回お話を伺ったホテルオークラは、開業以来世界のセレブリティーをもてなしてきた、文字通り日本を代表する高級ホテルの一つである。
まずホテルにおけるエレベーターの位置づけについて、宿泊部フロントサービス課課長の鈴木基之氏にお話を伺った。
「ホテルにとってのエレベーターは、基本としてお客さまの移動がスムーズに行えること、それから何より安全であることが大命題としてありますが、それに加えて快適性を非常に大切にしています。単に人やモノが移動できればいいわけではありません。エレベーターが”ただの機械の箱“にならないよう、人の息吹をかけることが大切だと考えています。これは私どもの創業以来のコンセプトです」
■スタートアテンダントによるホテル利用客のナビゲーション
ロビー階のエレベーターホールには、朝7時から夜の7時まで「スタートアテンダント」が立ち、お客さまに代わって行き先階ボタンを押す。お子さまやお年寄りの場合は、アテンダントがそのまま目的の場所までご案内することもあるという。もちろん、ドアの開閉の際に必ず手を添える、お客さまより後に降りるといったエレベーター操作のマナーは、従業員すべてが心得ているという。
「宴会時など大人数が移動するような場合は、宴会の終わる時間に合わせてオペレーターと誘導員を各所に配置し、速やかな誘導を行っています」(施設部施設課課長 荒井治氏)。
■施設部施設課係長
佐藤 元彦氏
技術面での安全対策に関してはどうだろうか。まずはエレベーターの地震管制。ある程度の規模の災害が起きた場合には、付近の階で停止するようになっている。
「軽微な場合は停止後、また復旧するようになっています。かなり大きな災害の場合、制御によってはエレベーター会社の保安員が来るまで最寄り階で停止したままの状態になります。昇降機にとって閉じ込め事故は、お客さまに与えるストレスが最も深く、最悪な事故とされますから、そのあたりはエレベーター会社の方でも万全を期しておられると思います」(施設部施設課係長 佐藤元彦氏)。
■エスカレーター
通常運行においても、ホテルという場の特性に合わせた調整を行っているという。
「エレベーターは、運行スピードよりも、音の静かさやドアの閉まり方を重視した制御プログラムを組んでいます。挟まってけがをしないように、といった安全面にももちろん最大限の注意を払っています。エスカレーターも、お子さまからお年寄りまで、誰もが乗りやすいようにやや遅めのスピードで動かしています」(佐藤氏)。
万一の犯罪に備えた独自のセキュリティー体制もホテルオークラが一流とされるゆえんだ。特に公賓クラスの宿泊客が訪れる際には、エレベーター会社とも協力し、特別態勢をとるという。
「公賓のお客さまがお泊まりになる場合、チェックインの日時をお聞きし、いつごろ何回くらいエレベーターを利用されるのか、おおよそのスケジュールを把握します。その間、何かあった場合に備えて、エレベーター会社の方には数分で来られるような場所に待機してもらいます。さらに国賓クラスのお客さまの場合には、エレベーター会社の方にホテル館内に泊まって待機していただくという万全策をとっています。幸いにもこれまでトラブルはなく、一度も出動してもらったことはないのですが」(荒井氏)。
最近はセキュリティーに関して特にシビアで、自国の人間以外はエレベーターに同乗させない国もあるそうだ。
「その場合はホテル従業員だけでなく、SP(要人警備をする警察官)も同乗できません。このため、SP用のエレベーターを隣に1台確保するのですが、国賓のお客さまよりも遅れることのないよう、お客さま用のエレベーターとSP用のエレベーターが同時に目的階に到着するように調整するのが難しいところです」(荒井氏)。
夜間には稼働するエレベーター数を減らすことで、セキュリティーを高める対策も行われているという。
一方、セキュリティーを強調しすぎても、くつろぎの空間を損なってしまう。難しい選択だが、例えばお客さま用のエレベーター内には監視カメラがついていない。
「エレベーター内にカメラを取り付けることはある意味では無粋なことですから、ホテルマンとしてはお客さまのプライバシーを優先させるかたちをとっています。ただし、もちろん玄関回りからエレベーターホールまでには漏れのない監視態勢を敷いておりますし、各階のエレベーターホールにも監視カメラは設置されています。これまでのところ、エレベーター内でのトラブルは発生していません」(荒井氏)。
また、365日、24時間無休のホテルでは、メンテナンス日時の調整にも気を遣う。ホテルオークラでは、建物のどこかで、各種の催しや宴会が随時行われている。こうした利用者が集中するイベントの時間帯を避けて、メンテナンスのローテーションを組まなければならない。
「翌月の宴会場の使用時間と人数のスケジュールをすべてチェックして管理会社に送り、日程を調節します。エレベーターは複数台ありますので、1台ずつメンテナンスをするようにしています。ホテルの営業を滞らせないよう、停止時間もなるべく短くなるように考慮してます」(佐藤氏)。
まさに表立って目に触れない努力の結晶がある。そして、その努力の根底には、やはりきめ細かいもてなしの心がある。
「ハードを活かすには、ソフトウェアが大事です。ホテルとしての施設を充実させるのは当たり前のことで、それに付加価値をつけるのはすべてソフトウェア、つまりは従業員の”人の手“であると思います。これからのエレベーターに期待したいのは、バリアフリーへの配慮や閉塞感の軽減など、人の気持ちを大切にした開発ですね」(鈴木氏)。
舞台女優という仕事柄、全国を飛び回ることも多い赤間麻里子さん。 ディープなホテルユーザーの赤間さんにとって、エレベーターはすでに客室の一部という。そこでは速度よりも快適性、これ見よがしの安全性よりも癒しの空間としてのこだわりが求められている
ホテルの部屋に入る前に、まず最初にほっとできるプライベートな空間がエレベーターだと思います。だから、エレベーターも一つの癒しの空間としてとらえ、演出して欲しいですね。エレベーターやバスルームなど、個室の空間というのは女性にとってすごく重要なんです。
地方公演など、仕事の関係でホテルをよく利用しますが、そのこだわり方はさまざまです。例えばエレベーターを降りた時の景色。これから部屋に向かうという時に、ちょっと花が飾ってあったりすると嬉しいですね。それから、アロマオイルの香りが漂うエレベーターにはホテル側の心配りを感じます。逆に、機械音があまり大きく聞こえるようなものだと、疲れもどっと増してしまいます。スピードよりも、静かで快適な乗り心地で迎えてくれるほうが「ああ、帰ってきたな」と一息つくことができます。
以前ニューヨークで泊まったホテルでは、エレベーターの中に腰掛けのためのバーを設置しているところがありました。旅行中に疲れて帰ってきて、何十階かの部屋に着くまでに、そういうスペースがあるというのは気が利いているなと感じました。
子ども連れでホテルを利用する時もあります。子どもは何をするか本当にわかりませんから、安全面での配慮はこれでもかというくらいやって欲しいですね。ベビーカーでエレベーターに乗る時も、係の人が同乗してくれると安心できます。
ただ、そうした安全対策はなるべく目につかないところでやって欲しいですね。ホテルのエレベーターは、監視カメラをこれ見よがしに強調するようなものよりも、むしろ宿泊する部屋へと続く癒しの空間として機能して欲しいです。安全性はもちろんのこと、そういう快適性にまで配慮したこだわりを持つことが大切と思います(談)。
■女優・声優 赤間 麻里子 さん
1970年生まれ。1989年に無名塾に入塾、1998年に退団。現在はフリーの女優として活躍。主な主演作品は、舞台「リチャード III」(1993年 無名塾公演)、「DORA〜百万回生きたねこ〜」(1995年 ホリプロミュージカル)、TVはNHK「アリーmyラブ2〜5」のネル・ポーター役の吹き替えなどのほか、女優としてのキャリアを生かし、司会業にも活動の場を広げている。
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