・
FUTURE DESIGNのトップへ
・
ELEVATOR NAVIのトップへ
・
東芝エレベータのトップ
独立行政法人 防災科学技術研究所
天災が頻発した2004年、日本国内で最も悲惨な災害となった新潟県中越地震。
阪神淡路大震災に匹敵する内陸直下型地震が、地震対策の立ち遅れた山間部を直撃し、被害が拡大した。
そこで今回は、地震を含めたわが国の防災対策について、独立行政法人 防災科学技術研究所でリスクコミュニケーションを研究されている長坂俊成氏にお話をお伺いした。
■ 総合防災研究部門
主任研究員
長坂 俊成氏
●「eコミュニティしまだ」のホームページ
2004年10月23日に発生した新潟県中越地震は、1995年の阪神淡路大震災以来の震度7を記録する大地震となった。震源が深さ5〜20キロと浅く、本震と余震の区別がつかないような激しい揺れが長期にわたって多発した。さらに、山間部の多い土地柄のために災害状況把握が遅れたこと、地震の2日前には台風23号が上陸し、地すべりが起こりやすくなっていたことなど、さまざまな要因が重なり、被害が拡大した。
困難な復興活動の中で浮き彫りになってきたのは、地域のリスクを共有・発見し、対策を講じていくという意識の立ち遅れだった。
自然災害の中でも予測が難しいとされる地震は、むしろ予知ができないことを前提に、災害が起こってしまった後の「減災」に努めるほかない。そして緊急時に情報共有をして、協働していくための基盤となるのは、非常時に限らない平時からの地域コミュニティの結びつきだ。防災科学技術研究所の長坂俊成氏はそう主張する。
「『災害文化』という言葉もあるように、従来ならば地域のコミュニティが過去の自然災害から得た教訓を伝承し、防災力の基盤となっていました。都市化や少子・高齢化でこれらのコミュニティが減退してしまったいま、こうしたコミュニティ機能を再活性化し、新たなコミュニティ形成を支援するために、インターネットは有効なツールの1つです」
例えば、防災科学技術研究所も共同研究に参加する静岡県島田市の「eコミュニティしまだ」は具体的な取り組みの1つだ。これは電子掲示板やWEB-GIS(投稿者が情報を自由に書き込める電子地図)を組み合わせた地域ポータルサイトで、地域をめぐる関心系がいくつか並ぶ中に、水害リスクの話題も扱われている。一般の住民が普段の生活の中で災害リスクを想定していける土壌作りのためには、「防災問題」に特化したシステムを作るのではなく、このように地域への関心によって緩やかに結びつくコミュニケーションの一環として防災の視点を取り入れたシステム作りが重要なのだ。
阪神淡路大震災から約10年。今回の新潟県中越地震で活かされた教訓の1つは、一般ボランティアの即応性の高まりだったと長坂氏は指摘する。地域ごとの社会福祉協議会と災害NPOが基盤となって一般ボランティアを受け入れるという仕組みが安定してきて、援助や物資が一カ所に偏らないような横の情報交換もなされるようになったという。
情報通信手段も進歩を見せた。阪神淡路大震災でパソコン通信の果たした役割に注目が集まったように、今回は携帯電話のメール機能なども含めたインターネットがますます重要な情報通信手段として活躍した。一方、コミュニティFM局に対して「臨時災害放送局」の免許が下り、すぐに出力を増強して災害情報を放送できたことも前進である。
長坂氏はさらに、今後の改善目標を指摘する。
「一番影響力を持つマスメディアは、どうしても取材対象に偏りができます。そこで例えばWEB‐GISを活用して、交通規制情報や被害の状況を客観的かつリアルタイムに知ることができる地図ができれば、地域外からの援助もスムーズにできるでしょう。そうしたシステムを構築するためには、複数の自治体やNPOなどが、ある程度広域的に相互運用できることが必要になります」
今後の防災意識や、リスクコミュニケーションの成熟のためには何が必要か。長坂氏は、「防災は公の仕事」という思い込みをまず取り払うことが必要だと指摘する。
「防災は技術論ではなく、政治や経済を含めた地域マネジメントの問題そのものです。そこで、ボランティアやNPO、行政、企業といったそれぞれの主体が積極的に参加しながら、さまざまな社会的な利害の中でリスク対策のコストを見極め、どこまでを行政が受け持つか、企業やボランティアが分担できる活動はないかを検討できるオープンな合意形成のプラットフォームづくりが重要になってくるのです」
長坂氏はまた、「いかに市場の力を活用するか」が今後の鍵だとも示唆してくれた。
「例えば救助活動にしても、地方自治体の限られた民生委員がやってくるのを待たねばならないのであれば、1日3回お年寄りを訪問しているような民間ホームヘルパーのネットワークと民生委員が連携できないか。民間の有償サービスと公のサービスをうまく組み合わせることが重要です。また防災の現実的な推進力として、企業の株価の格付けに社会貢献やリスクマネジメントの成熟度という指標を盛り込むことで、防災の取り組みを株価に反映し、企業にインセンティブを与えるという手法も有効でしょう」
ボランティアによる
ハード/ソフト面の支援
10月末の地震発生から約2カ月が経過し、ボランティア活動の中心も仮設住宅への引っ越しのお手伝いや雪対策などに移行してきています。地震の場合は、人海戦術でとにかく短期に泥を撤去すればいい水害の場合とは違い、被災者に対するソフト面の活動が重要です。今回は特に高齢化率の高い山間部での地震だったこともあり、お年寄りやお子さんへのメンタルケアが心配されました。大量の人手よりも、地元密着で中長期の信頼関係を結べる人材が求められています。ボランティアの受け入れは12月9日現在で延べ約6万8000名、その後も長岡・小千谷・川口などで継続的に募集しています。今後はボランティアのとりまとめを通して、「がんばろう! 新潟」といった地元の方々による復興運動の芽生えを支援していかなければならないと考えています。
(2004年12月現在‥談)
■社会福祉法人 新潟県社会福祉協議会
ボランティア・センター所長
内田 達男 氏
<< 東芝エレベータのトップへ