 |
|
| |
 |
| 東日本旅客鉄道株式会社 |
| |
| 昇降機の安全への取り組みにはどのようなものがあり、また何が必要か。今回は「駅」という交通機関におけるエレベーター・エスカレーターの現状について、JR東日本旅客鉄道にお話を伺ってきた。昼夜人の流れが絶えず、通勤ラッシュ時ともなれば多量の利用客が殺到する駅では、実際に、非常に熱心かつ先進的な安全対策を実施していた。 |
 |
 |
■鉄道事業本部 設備部 課長
機械グループリーダー
長沼政利 氏 |
■鉄道事業本部 設備部
機械グループ
山田敏雄 氏 |
|
 |
 |
| ●JR東日本の「乗車人員ベスト100」によると、新宿駅は1日平均で74万6293人でナンバーワン。その多くの人たちがエレベーターやエスカレーターを利用する。 |
一般のデパートやショッピングモールなどに比べて、駅という場所のエレベーター・エスカレーターの利用状況は非常に厳しい。朝の4時から夜中の1時まで、20時間以上に及ぶ稼働時間。しかも朝夕の通勤時間帯には人混みでごった返し、列車の出発時刻ともなれば駆け足で上り下りされる場合もしばしばだ。
こうした過酷な環境の中、現在JR東日本で稼働中の昇降機は、エレベーター約500基、エスカレーター約1300基、合計約1800基もの数に上る。
長沼 政利氏(鉄道事業本部設備部課長・機械グループリーダー)によれば、JR東日本では昇降機を「輸送系の一部」ととらえ、特に安全を重視しているという。例えば昇降機の各部品に生じた故障を「マトリックス表」にまとめ、弱み箇所は改良を行い、再発防止を図っている。これにより、昨年(2003年)には26件あったエレベーターの閉じ込め事故が、今年は大幅に抑えられたという。
また、設置されたすべての昇降機の情報はデータベース化され、メーカーや機種、安全装置の対策状況を検索できるようになっている。「昇降機の台数が多いので、何かあった時に当社の対策状況を調べることや、事故発生後にメーカーさんと早急に連絡を取るためにもデータベースは不可欠です」(山田敏雄氏 鉄道事業本部設備部・機械グループ)。
JR東日本では支社が12あるため、「エレベーター・エスカレーター整備計画マニュアル」を策定して仕様の統一を図っており、また、省令改正に合わせてメンテナンスを行っているのも特徴だ。 |
 |
 |
| ▲JR新宿駅のエスカレーター |
平成12(2000)年11月施行の「交通バリアフリー法(高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律)」によって、駅へのエレベーター・エスカレーターの設置が促進されるとともに、その設置工事は難しくなっている。
JR東日本の研究開発センターや機械技術センター・工事事務所では、メーカーと共同開発を積極的に行っている。ホームでお客さまの安全な通路を確保するための幅狭タイプのエレベーターやエスカレーターなどは、こうした共同開発から生まれたものだ。
また、駅という特殊な使用環境では、昇降機の安全装置が作動する機会も通常の数10倍以上に達するのだという。そこでJR東日本では、エスカレーターとしては初めてモニタリングシステムを導入した。安全装置が作動した場合や、ブレーキ力の摩耗率などについてのデータを、ネットワークで結ばれたメンテナンス会社にリアルタイムで送信し、動作状況の分析とメンテナンスに役立てるというものだ。
 |
| ▲JR新宿駅のエレベーター |
「データの分析結果から、例えば大宮駅に設置したエスカレーターでは、利用者の駆け上がりなどにより安全装置の不要な動作が非常に多く発生していることがわかりました。機械技術センターが東芝エレベーターさんと共同で、危険な場合は異常を検知し、不要な動作は抑えるようなスイッチのしきい値を研究して改善したところ、不要な動作が激減しました。現在は大宮駅のエスカレーターをはじめ、この改善した値を採用しています」(山田氏)。
いずれにせよ、安全のためにはすべてをメーカーまかせにするのではなく、開発を含めて自分たちが積極的に関わり、努力を惜しまないというのが、“輸送機のプロ”たるJR東日本の基本姿勢である。 |
 |
 |
| ▲エレベーターやエスカレーターに貼られている安全ステッカー |
昇降機の安全で正しい乗り方を利用者に理解してもらうため、JR東日本では前述の「整備計画マニュアル」に従って、注意を訴えるステッカーを貼ったり、交通バリアフリー法で義務づけられた音声案内装置を設置する努力をしている。とはいえ開発・運営面での安全対策にはやはり限界がある。
「例えば荷物用エレベーターの故障です。物を運ぶ際に使用する台車がドアに当たってドアのガイドシューが曲げられてしまい、エレベーターが停止して閉じ込め事故が発生したケースもあります。しかし、エレベーターを使用するすべての方々にドアへ台車を当てないよう指導を行き届かせるのは難しいのが現状です」(山田氏)。
「やはり利用者の方々と、保守を管理する機械技術センター、そしてメンテナンス会社さんの三者が一体となった対策が大切だと思います」(長沼氏)。
利用者を含めたリスクコミュニケーションは今後も引き続き課題となるだろう。 |
 |
|
 |