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プロフィール
 
 
 
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───吉村さんは今日のわが国における正統派の歴史小説家だと言われています。史実に対するこだわり、膨大な文献・事実を積み重ねて小説に仕上げていく手法に特色があると思われます。なぜ、そのような手法を取るようになられたのでしょう。

「もともと、僕はフィクションを書いていたんですけど、ある雑誌で戦艦武蔵の建造日記を辿って紹介するという仕事の依頼がありましてね。そこで長崎を訪ねて、建造に携わった人々の聞き書きをしているうちに、フィクションではないものに興味がわいてきた。それが『戦艦武蔵』という長編の戦史小説を書くきっかけであり、新しい作家としての出発点でしたね。戦史小説というのは一分一秒の正確さが求められる。その後、歴史小説を書き始めたときも、その当時生きていた人物が、いつ、どこで、何をしていたか…事実というものが気になって仕方がない」

───歴史小説とは何でしょう?

「ただ歴史を書くのではなく、歴史を作っている人間を描くのが歴史小説です。そこには嘘や虚構、脚色があってはならないと考えています。いろんな作家がいて、それぞれの考えで書いていいのです。だけど、フォン・シーボルトの娘おいねと大村益次郎が恋仲だった、なんて話をこしらえてはいけない。益次郎を執筆するために宇和島に取材に訪れた或る作家が“何か華がほしいな”と言ったそうです。それで郷土史家が“おいねが益次郎のもとにオランダ語を習いに通っていた”と教えた。すると出来上がった本では二人はできていた、なんてことになっていたんです(笑)。話としては面白いが、歴史小説はその時代に生きていた人間の、事実が重要なんです」

───“長い歴史小説を書いていると、時間軸が狂ってくる”ともおっしゃっていますね。

「まるでその時代にいるような気になりましてね、時間だって完璧に違ってくる。午後2時になって、“おっ、もう八ツだな”とか(笑)」

───小説を書いているときは主人公になりきるのですか。

「そりゃそうですよ。高野長英などの小説を書いているときは、目明かし(※)に追っかけられる夢を見て、うなされたりする。女房が“あなた、また目明かしですか”って(笑)」

※目明かし:江戸時代、与力・同心が私的に雇った、犯人逮捕等に協力する町人身分の者。岡っ引き

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離れの書斎にて。ワープロは一切用いず原稿は頑なに万年筆で書き上げる
©T.Sakai

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