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文/写真
淵上 正幸
直島コンテンポラリーアートミュージアムの2階テラスより見晴らす。瀬戸内海の美景を巧みに取り込んだデザイン・コンセプトに乾杯!
いつになく日本経済は長く低迷している。だれもがこの苦境から早く脱出したいと願っている。そんな状況の中から、明るい話題もちらほらと聞こえてくるのは、それも地方からというのは嬉しい限りだ。都市の構成エレメントである建築が主役を演じて、都市開発を牽引していく例は多数あるが、ここに紹介する3つの例は実にユニークだ。地方の大都市開発をはじめ、風光明媚な島々の開発、そしてアートをからめた農村開発など、地方から発信される力強い足音に元気付けられること請け合いだ。
設計:安藤忠雄建築研究所
アプローチ・スロープからエントランスを見る。竣工当時、左側の壁面は自然石積みのそれであったが、現在は緑に覆われて雰囲気が素晴らしい
瀬戸内海の小島、直島の最南端に位置する半島の上に、安藤忠雄設計の「直島コンテンポラリーアートミュージアム」が完成してから早11年が経った。
建物の半分以上を地下に埋設した安藤の意図は、景勝の周辺環境を壊さないという配慮からだったが、現在は地上部分もかなり緑に覆われて、特に道路側からはほとんど見えない状態だ。
自然石積みの長い壁沿いにアプローチを上がって行くと、木陰から景色が開け青い海の上にキス・チョコに似た大槌島が浮かんでいる。感動的なアプローチの演出だ。
スケッチ/淵上正幸
2階ルーフテラスから見た、正面左側のホテル棟と右手の円筒形ギャラリーの外観。三角形の突起はトップライト
建物は美術館にホテルが併設されたもので、ミュージアム・ホテルともいうべき美の回廊だ。驚くのはこの人里離れた場所にもかかわらず、ミュージアム棟10室、アネックス棟6室のホテルがいっぱいなのだ。バスを降りた時にはふたり連れの外国人に出会った。聞けばはるばるオーストラリアから泊まりに来たという。夕方には20名ほどの年配女性の一団が到着した。これはどういうことなのか。
アネックス棟の中庭。楕円形プランの屋上から繁茂したシダが垂れてきて、別世界のようなムードを助長している
吹き抜けた円筒形ギャラリー内部
南側(左)と西側(右)に開けたギャラリーは外部空間と融合する
その答えは、自然と一体となって美しい景色を取り込み、また現代世界アートにフィットする空間づくりをした安藤建築の魅力だ。加えて展示されているアート作品のものスゴさ。アンディ・ウォーホールをはじめ、ジャクソン・ポロック、ロバート・ラウシェンバーグ、ウォルター・デ・マリア、リチャード・ロング、ブルース・ナウマン、大竹伸朗等々、巨匠の作品がズラッと並んでいる。
直島のアートは、このミュージアムに展示されている作品だけではない。本村地区に展開されている「直島・家プロジェクト」も来島者を魅了する。安藤が担当した「南寺」を含む、伝統的な家屋や島の人々にとって重要な祈りの場所を使ったプロジェクトは、アーティストによる直島の文化遺伝子の発掘作業に他ならない。
第1期計画のミュージアム棟とシーサイド・ギャラリーから始まって、第2期のアネックス棟を終え、現在第3期の「地中美術館」が、ふたつ西側の半島の上に工事中だ。2004年完成の暁には、安藤の建築群はさらなる魅力をもって来島者を迎え入れることになろう。
「直島・家プロジェクト」は4つの建物の設計・改修作品だ。杉本博司の「護王神社」(下左)、内藤礼の「きんざ」(下中)、宮島達男の「角屋」(下右)、そして安藤忠雄+ジェームズ・タレルの「南寺」(右)となっている。いずれも静かな村に放たれた建築とアートの融合因子。村落開発の起爆剤だ
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